利酒日記〜安葡萄酒に彩られた日常〜

2001年5月


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2001年5月1日  BLANC
ALBANA DI ROMAGNA (D.O.C.G.) 1999 / FATTORIA PARADISO
アルバーナ・ディ・ロマーニャ / ファットリア・パラディーソ
イタリア、EMILIA-ROMAGNA州

  色は極めて薄く、日本酒のよう。香りも、そのままではほとんど立ち昇らない。 セロファンかアクリルのような化学物質的あるいは鉱物的香りが強いが、それとともに、 新緑のような爽やかで青っぽい香りもある。酸のアタックが鋭く切れ込み、甘味は全くなく、 奥行きも感じられない。余韻もない。すっきりスパッとした味わいが特徴。 まるでイノシシのように真っ直ぐ突進してくる。
  記述すべき「味わい」というものはないが、これぞイタリアの白といった感じ。 ヒラメのムニエルと合わせたが、相性は抜群。トマトサラダとも関係は良好。淡白な食事に合うというよりは、 むしろ何の邪魔もしないワインだ。さすが魚介を食す国の酒という感じ。その意味では、広く日本人に歓迎されるタイプだろう。 白で初めてDOCGに昇格したものとのこと。
  なお、本日、「イタリアワインの等級、ぶどう品種、生産地域」に関する説明文(PDF形式/全3ページ)をアップしたので、参照いただきたい。
<評定:C>

2001年5月3日  ROUGE
MONTES MERLOT SPECIAL CUVEE 1998 / MONTES S.A.
モンテス メルロー スペシャル・キュヴェ
チリ、CURICO VALLEY

  色はかなり濃く、褐色がかっている。エッジはややオレンジ色。アルコール感豊かで、黒っぽいいかにもメルローらしい香り。温泉のような硫黄臭も若干。 土ぼこりのような枯れた印象と、焼きたてのヤキイモから立ち昇るような、ほっこりした甘さと、少々表現は悪いが液漏れした電池のような 炭素と鉄分の混ざった匂いもある。 口当たりは極めて丸く、優しいが、酸もそこそこあり、バランスは良好。後に甘味がふんわり広がる点も実にメルローらしい。 タンニンはきめ細かく、土と鉄っぽさの共存した余韻が程よく続く。
  MONTESをどうしても高く評価してしまうのは、やっぱり私の好みだからだろうか。否、当日記では私の個人的嗜好は極力排除して、 常に客観的な評価を旨としているので、おいしいとかおいしくないといった観点でワインを見ないようにしている。 ワインの持つ複雑さや、その産地らしさといった点から可能な限り冷静に判定している。そのような基本姿勢のもとで、 やはりこのMONTESは客観的に優秀だと言わざるを得ない。もちろんこの値段にしては、ということであるが。
<評定:A+>

2001年5月5日  ROUGE
VILLA DANTE VOCATO 1997 / TOSCANA (I.G.T.)
ヴィラ・ダンテ ヴォカート / トスカーナ
イタリア、TOSCANA州

  色は深いガーネットで、縁には少しオレンジが入っている。深いアルコール感。薬草のような香りとバニラ香が調和。 なめし皮の香りもあり、時間が経つとより動物臭が強くなる。口当たりは甘味がたっぷりとし、バニラ香が口中に豊かに広がる。 酸もかなり立つ。タンニンが力強く、唇の裏に少々へばりつく感じ。後味が若干粉っぽい。力強く野性的な、実にイタリアらしく飲み応えのあるワイン。
  \3,000のワインが\1,000!と安売りしていたものだが、\3,000は大げさとしても、\1,800くらいの価値は十分ある。
<評定:B>

2001年5月6日  BLANC
MONTES CHARDONNAY 2000 BARREL FERMENTED / MONTES S.A.
モンテス シャルドネ バレル・ファーメンテッド
チリ、CURICO VALLEY

  しっかりした黄金色。香りは、まずバターにくるみ的ナッツの香りと、黄桃やパッションフルーツあるいはマンゴーのような甘美な香りが共存。 口当たりは、とにかく甘味がたっぷりとし、苦味も伴う。酸は穏やかで丸い。樽香が強く、オイリーで、ねっとりしている。 余韻がかなり長く、トロピカルな甘味が続く。とても充実感のある陽気なシャルドネ。 すべての要素が強いので、好みは分かれよう。
  実はこのワインが当日記に登場するのは、2回目である。今回はなんと2000年ヴィンテージ。前回の感想を見ずにこれを書いたが、比べてみると若干のニュアンスの違いがある。 すっかりMONTESびいきの私ではあるが、前回と比べて、今回得た印象は、より陽気で甘美で力強い。チリは基本的にヴィンテージごとの違いは少ないのだが、 今回のは熟成期間が短い分だけ落ち着きや上品さが感じられないということだろうか。それにしてもこのクラスでこの充実度は、いつもながら、さすがの一言である。
<評定:A+>

2001年5月8日  ROUGE
BOURGOGNE ROUGE 1998 PINOT NOIR / LEON JANVIER
ブルゴーニュ・ルージュ ピノ・ノワール / レオン・ジャンヴィエ
BOURGOGNE地方、AC:BOURGOGNE

  美しいルビー色で、縁にはやや褐色が入っている。足は長く、アルコール度数の高さを伺わせる(12.5%)。 香りは、甘い印象すらある赤いベリー系で、わずかにゴムっぽい香りも。 やや単調な印象。口当たりは意外と尖ってはなく、おとなしい。 クランベリーのような、みずみずしい甘酸っぱさ。タンニンはやや粗暴で、ひっかかりがある。 余韻の長さは、そこそこ。時間が経つと、香りにゴムっぽさが際立ってくる。味わいからは、アルコール度数の高さをそれほど感じない。
  久々基本に返ったようなACブルゴーニュ。 とりたてて批判すべきところもないが、感動もなく、無難な1本。ネゴシアンものだが大きくハズしてはいない。とりあえず及第点。 私の中では、カジュアル・ベーシックという感じだ。
<評定:C+>

2001年5月11日  ROUGE
CHATEAU DE TERREFORT-QUANCARD 1997 / BORDEAUX SUPERIEUR
シャトー・ド・テルフォール・カンカール / ボルドー・スペリュール
BORDEAUX地方、AC:BORDEAUX SUPERIEUR

  色はやや青みがかったガーネット。足がかなり長い。いかにもボルドーらしい落ち着いたアルコール感豊かな香り。 黒っぽく、カシス的。口当たりは極めて優しく、丸みがあってふくらみがある。薬草的甘苦さがじんわりと広がってゆく。 香りはカベルネ的であり、味わいも全体としてはカベルネが優勢ではあるものの、かなりメルロー的優しさが感じられる。 後味がかすかに青臭くもあり、そこにカベルネフランの特質が伺える。タンニンは実にきめ細やか。酸も丸く穏やか。
  何かに合わせる以前に、ただ飲んで美味しいワイン。飲みやすいだけでなく、風格も感じられる。 日常酒にするには、少し贅沢な感じもする。
<評定:A>

2001年5月12日  BLANC
MANDRA ROSSA CHARDONNAY (I.G.T.) 2000 SICILIA / CANTINE SETTESOLI
マンドラ・ロッサ シャルドネ シチリア / カンティーネ・セッテソリ
イタリア、SICILIA州

  緑がかってはいるが、かなりしっかりした色。香りは柑橘系のフレッシュさと共に、オイリーな印象もあるが、 セルロイドっぽい化学薬品的香りと緑の葉の香りが共存。シャルドネというより、ロワールのソービニヨンに近い印象。 口当たりは酸の切り込みがもちろん鋭いが、オイリーでなめらかなところもあり、 その点がわずかにシャルドネっぽさを主張する。甘味はほどほどで、深みや広がりはあまりない。良く言えばフレッシュですっきり系。 悪く言えば味わいがなく、薄っぺら。このようなあっさりすっきりタイプが、やはりイタリア人の嗜好なのだろうか。 イタリアにしては確かに奥行きはあるほうだが、温暖な気候でまっすぐ伸びやかに育ちましたという風貌の単調なワイン。 もう少しデリカシーが欲しい、というのは望みすぎか。
<評定:C>

2001年5月14日  ROUGE
MONTES CABERNET SAUVIGNON 1998 OAK AGED / MONTES S.A
モンテス カベルネ・ソーヴィニヨン オーク・エイジド
チリ、CURICO VALLEY

  色は極めて濃いガーネット。だが、エッジまで均一に濃い色であり、まだ若いことを物語る。足が長く、アルコール度数の高さを伺わせる。 香りは、最初に清々しいミントのような雰囲気があり、次になめし皮と樽由来のバニラ香がある。カラメルのようなニュアンスもあり、濃厚な甘さを感じさせる。 アタックは柔らかく、口中いっぱいに甘いバニラ香が広がる。酸は弱い。タンニンは力強く、やや粗暴。飲み込んだ後、鼻から吐く息に土っぽさもあり、 全体としてはワイルドであるものの品格を感じさせる。大柄なところは実にチリらしいが、決して押しが強いだけではない。
  今月3本目のMONTES。メルローシャルドネに続き、このカベルネもコストパフォーマンスはとても高い。 導入部が非常に上品であるものの樽香も、甘味も、タンニンもドーンとくる力強さなので、重いワインが苦手の人には少々つらいかもしれない。 しかし、端正かつパワフルな味わいがこのワインの真骨頂であり、これほど色々な要素を兼ね備えたチリカベを探すのは、なかなか大変だと思う。 そういう意味でやはり高く評価したい。
  実は昨年9月に、このモンテス・カベルネ96年ヴィンテージが当日記に登場しており、その時の感想では、もっと酸が強く、 甘味が弱く、バランスが優れていたようで、今回の方が少し単調な味わいだったのかもしれない。
<評定:A+>

2001年5月17日  ROUGE
MONTES PINOT NOIR 1999 OAK AGED / MONTES S.A
モンテス ピノ・ノワール オーク・エイジド
チリ、CASABLANCA VALLEY

Montes Pinot Noir   色は美しいルビーレッドで、いかにもピノらしい。赤いベリー系の香りの中に少し控えめな樽のバニラ香が調和。 その他、セルロイドあるいはビニールと、色鉛筆の缶を開けたときのような香りがある。グラスを回すと血の香りが出てくる。 口当たりは最初ふわっと甘味が小さく広がるもののすぐに酸がそれを制する。ピチピチした酸と強めのタンニンが全体を引き締める。 後味に甘味はあまりなく、チリ・ピノにしては非常にシャープな部類と言える(じんわりほの甘い程度)。余韻も適度。
  なんと今月4本目のMONTES。すべてクオリティが高いので、その中ではこれは他に1歩譲る感じではあるが、 チリワインにおける一般論としては、これほど引き締まったピノは少ないと思う。確かに本家ブルゴーニュとは全く別物で、 どちらかというとカリフォルニアのピノに近いが、カリフォルニアにしてもチリにしても、もっと甘ったるい印象のものばかりであることを考えると、 なかなか貴重な存在である。
  なお、裏ラベルに興味深いことが書いてある。
  This MONTES PINOT NOIR 1999 is the first in a new series called MONTES SPECIAL SELECTION, special wines produced in very small quantities, and is also our first Pinot Noir to be bottled.
  This is our first wine from the CASABLANCA VALLEY, hailed as one of the best for white and light red wines.
  つまり、これはスペシャル・セレクションという少量生産による新シリーズ最初の作品であり、なおかつ同社初めてのピノであるということ。 また初めてカサブランカ・ヴァレーで生産されたものであるということ。なんだか嬉しくなるではないか。しかし、上記文章中にSPECIAL SELECTIONとあるのに、 表側には"LIMITED SELECTION"の文字がある。  
<評定:A−>

2001年5月20日  BLANC
OPPENHEIMER KROTENBRUNNEN SPATLESE (Q.m.P.) 1998 REINHESSEN / JOSEF FRIEDERICH
オッペンハイマー・クレーテンブルンネン シュペートレーゼ ラインヘッセン / ヨゼフ・フリードリッヒ
ドイツ、REINHESSEN地方、OPPENHEIM村

  淡い麦わら色。マスカット的な甘酸っぱい香りと、プラスティックのような、薬っぽいような香りもある。 味わいは、まず甘味がたっぷりとし、酸もかなりあるものの追随が弱く、甘味の冗長さばかりが前に出てくる。 鼻から吐く息に杉の葉のような深い緑の香りがある。後味も甘く、余韻もすっきりしない。 もう少し酸が主張してくれるとバランスが取れるのだが、だらっとした甘さばかりが目立っている。
  この種の甘さは、基本的に食事には合わせづらいのだが、唯一、カボチャの煮物にはぴったり合った。
  なお、本日、「ドイツワインの等級、ぶどう品種、生産地域」に関する説明文をアップしたので、参照いただきたい。
<評定:C−>

2001年5月22日  ROUGE
DEI SASSI CAVI FRIULI GRAVE (D.O.C.) 1998 CABERNET / EUGENIO COLLAVINI
デイ・サッシ・カヴィ フリウリ・グラーヴェ カベルネ / エウジェニオ・コッラヴィーニ
イタリア、FRIULI-VENEZIA-GIULIA州、GRAVE

  淡く、ピノのようなルビー色。赤いベリー系の香りと紫の花の香りが共存。薬品っぽくもある。アルコール感豊か。 足はそこそこ長い。口に含んだ最初のアタックは実に柔らかく、甘味が全体に広がる。しかしながら酸も豊かで、拮抗している。 タンニンはシルクのようになめらか。わずかにピーマンのような緑っぽいニュアンスも感じられる。 余韻は短いが、とても軽やかでさわやかなワイン。
  ラベルのどこを見ても「カベルネ」としか書いていないので、 てっきりカベルネ・ソーヴィニヨンだと思っていたが、この味わいは、カベルネ・フランではないだろうか。 そういえば、ボトルもなで肩だ。 口の中に少し長く含んでいると、タンニンがひっかかるような感じが出てきて、鉄っぽさも少々出てくる。 それでも軽やかさはなお失われていない。決して薄っぺらいのではないが、ごくごくと飲めるタイプだ。
<評定:C+>

2001年5月26日  BLANC
MACON-CHARDONNAY 1999 / CAVE DE LUGNY
マコン・シャルドネ / カーヴ・ド・リュニィ
BOURGOGNE地方、MACONNAIS地区、AC:MACON-CHARDONNAY

  やや緑がかった淡い麦わら色。グレープフルーツのような苦味のある柑橘系の香りと、まるで草原の風のようなさわやかな緑系の香り。 石油的ニュアンスも若干。味わいは、酸のアタックが強く、甘味は陰に隠れ、ふくらみも感じられない。キレはとても良い。 余韻は短い。若干の苦味を伴う鋭いレモン的酸が、最後に残る。色、香り、味わいと、確かにシャルドネらしいが、 シャルドネの醍醐味とまでは行かない。1,000円クラスでこれならば、まあ損をした感じではない。実に値段相応の実力。
<評定:C>

2001年5月31日  ROUGE
CHATEAU GRIMONT 1997 / PREMIERES COTES DE BORDEAUX
シャトー・グリモン / プルミエール・コート・ド・ボルドー
BORDEAUX地方、ENTRE-DEUX-MERS(PREMIERES COTES DE BORDEAUX)地区、AC:PREMIERES COTES DE BORDEAUX

  色はやや薄めでザクロあるいは鮮血のような色。エッジにはほのかにオレンジ色が入っている。 香りの第一印象からは、かなりしっかりとした酸を彷彿とさせ、なおかつ重みも予感させる。豊かなアルコール感があって、 黒っぽい、メルロー的。 口当たりは、香りの印象と比較して若干拍子抜けするほど軽やか。酸味が中心で、甘味は全くなく、きりっとしている。 深みも感じない。シャープで、あっさり。悪く言えば空洞のような印象。 カベルネとメルローのバランスが良いというか、ただ両方とも主張が弱いというか、端正で押しが弱く、 飲みやすいが余韻も残らない。
<評定:C>

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