2003年8月
2003年8月2日 BLANC
BOURGOGNE "TERROIR DE COTE D'OR" 2000 / VERGET
ブルゴーニュ "テロワール・ド・コート・ドール" / ヴェルジェ
BOURGOGNE地方、AC:BOURGOGNE
7月30日の当日記で、輸入牛肉の関税率引き上げのニュースを取り上げた。消費者にツケが回ると書いたが、
実はその時点で、大手スーパー各社が販売価格には転嫁しないという姿勢を示していたことも私は知っていた。
つまり、販売店が自らの企業努力で吸収するということだが、それで我々消費者が喜んでいい話ではない。
ここ数年、消費者がいい気になりすぎている。少しでも価格が高かったり、サービスが悪かったりする企業はけしからん。
財布を開く消費者こそ偉いのだ、という思い上がりが過ぎるように思う。企業は生き残らないといけないので、
そんな理不尽な消費者の横暴に必死に応えようとする。この構図は、異常である。
本来、需要者も供給者も対等なはずだ。増税分を企業が吸収して万々歳などという消費者は、己の傲慢さに気づくべきなのだ。
まあ心配しなくとも、最後は消費者にも絶対ツケは回ってくるだろう。もっとも、企業努力で吸収しますという姿勢をあっさり打ち出せたということは、
元々利ざやに余裕があったということなんだろうけどね。
閑話休題。
今回、ブルゴーニュをまとめて6本買った。と言っても、すべて安ワインであるが。
素直な嗜好を言えば、私はブルゴーニュが好きであるから、その世界にのめり込んでしまうと、
いくらお金があっても足りないことになる。できる限り少ない出費で大きな満足を、がスローガンであるから
(いつそんなスローガンを打ち立てたのか?)、どうしてもブルゴーニュには手を出しにくい。
ヴェルジェの白ワイン3本セットを、
いつもお世話になっているe-Shopping Wineで買った。
ACブルゴーニュ、シャブリ、マコンの3本で、通常価格7,200円のところ、38%OFFの4,480円。
1本あたり約1,500円である。
その1本目のACブルゴーニュ。
色は、ゴールドと言ってもよいほどきれいなイエローグリーン。
香りは、まず火薬のようなインパクトが強い。いわゆるフリンティな香りだ。
それとともにとてもミルキーで、それこそ不二家ミルキーか、千歳飴、あるいは明治ヨーグルトキャラメルのような甘さがある。
口に含むと、それらの要素が、パアーッと広がり、なおかつ酸も鋭い。
とてもきれいな味わいだが、飾った美しさではなく、素肌美人という印象。
甘味の伸びもすばらしく、それでいてスーッと消えてゆくクリアな後口。どんどんグラスが進む。
サイトの説明によると、ピュリニーとムルソー村から取れたぶどうで
作られているとのこと。
通常価格は1本あたり2,400円だが、それを前提にしても、非常に上出来。
前回から2本続けてブルゴーニュ・シャルドネだが、価格以上のクオリティが続いてうれしい。
<評定:A−>
2003年8月7日 ROUGE
BOURGOGNE GRAND ORDINAIRE 2001 / LEROY
ブルゴーニュ・グラン・オルディネール / ルロワ
BOURGOGNE地方、AC:BOURGOGNE GRAND ORDINAIRE
マクドナルドの迷走ぶりが報じられて久しいが、最近とみに姑息な商売に走っているような気がする。
ハンバーガー大好き人間の私としては、週に1回程度は食べているが、バリューセットの値段をこっそり変えてみたり、
スマートセービングをレジカウンターのメニューに載せてなかったり、ケチ臭いやり方には呆れる。
低価格競争の行き着く末は破滅しかないと、私は何年も前から主張してきたが、いよいよその最終段階に入ったようだ。
見かけの値段を安くして客を引き寄せ、でも本音では客単価を上げたい。そういう卑怯な商売は絶対に破綻する。
残念だが、もう手の施しようがない状況だと思う。
(当サイトでは、以前からこの問題について書いてきた。
マクドナルドのゆくえ〜王者凋落の予兆〜(2002,8,9)、
安ければいいのか(2001,2,10)などを参照)
閑話休題。
いただきもののルロワ2本セットの2本目。前が今ひとつだっただけに、不安を持って臨む。
色はグレナデンシロップのようで、透き通っている。香りは軽く、絵の具みたいな感じと、かすかにピノを思わせるゴム臭。
口当たりは柔らかく、ほんのり甘味もあって、刺激が少ない。悪く言うと水で薄めたような感じで、
飲み応えがない。
このAOCは、ピノ100%だと思うのだが(※)、ガメイが入っているのでは?と思わせる丸さ。
これは、ほとんどほめる所が見つからない駄作。気軽にすいすい飲めて、別に不味いわけでもないけれど、
Leroyの名を冠して、こんなレベルのものを出さない方が良いのではないかと心配になってしまう。
ところで、人からもらったのに、こんなにこき下ろして大丈夫なのか?と思うかもしれないが、
いただいたことへの感謝と、テイスティングとは別次元。それを厳しく峻別するのが、私の良心であり、
誠実さの証なのだ。もらったから悪く言えない、なんて見え透いた態度の方が、よほど失礼だと思う。
<評定:D>
(※)後日記:このAOCのセパージュに関して、安ワイン道場師範から、
ガメイその他の品種も認められているとのご指摘をいただいた。わざわざネット検索いただき、それを証拠づけるサイトのURLもお教えいただいた。
私は、本で読んだ記憶を元に、ピノ単一だと思っていて、実際、手持ちの本を確認してみると、pinot noirとだけ書かれていた。
どうもその本が間違えているらしい。
ご指摘くださった師範、ありがとうございました。
2003年8月9日 BLANC
CHABLIS "TERROIR DE CHABLIS" 2000 / VERGET
シャブリ "テロワール・ド・シャブリ" / ヴェルジェ
BOURGOGNE地方、CHABLIS地区、AC:CHABLIS
ビール大手各社の6月中間決算が発表され、明暗を分けた。
前年同期比で、キリンは増収増益。アサヒは増収減益。サッポロは減収減益。サントリーは減収増益。
キリンは、主にチューハイ氷結の好調によるものらしい。シェアトップのアサヒは、ビール・発泡酒が売上減ながら他部門で増収を果たすも減益。
サッポロは、いいところなし。サントリーは、売上を減らしつつも商売上手といったところか。
一人勝ちとなったキリンは、ビールではなくチューハイに救われたというのが、面白いやら情けないやら。
だいたいチューハイと言いながら、同社は焼酎製造の免許を持たないためにウオッカベースのカクテルである。
確かに、当サイトの「ビール・発泡酒・チューハイの部屋」でも取りあげた
氷結シャルドネスパークリングはよく売れているみたいだ。
コンビニでもよく出ているのが確認されるし、陳列本数も相当増やされている。
ビール屋はビールだけで勝負しろなどと言うつもりはないが、発泡酒の売上競争に向けている力を、
もう少し良いビールの開発に向けて欲しいものだ。
さて、今日のワインは、ヴェルジェ3本セット2本目のシャブリ。
色はかなりしっかりしたイエロー。このAOCにしては、濃い。
ナッツのような香ばしさとともに、石油香も若干。
口当たりはやわらかく、ふくよか。もちろんシャブリらしい鋭さもあるが、グレープフルーツのような酸はやや丸い。
ふくらみがあって、余韻もそこそこ長くて、それでいて嫌みがない。
1本目のACブルゴーニュに続き、素肌美人なワイン。
ただ、こちらのほうがより一層スリムだ。ACブルゴーニュが83-58-85-48kgだとすると、こちらは、
79-56-80-43kgみたいな(細く書きすぎ、とお叱りの向きもあろうが、ブルゴーニュ北部はそもそもやせ形だからね)
。どっちがいいかは好みによる。私は両方好きだが(チリやアルゼンチンの92-63-88-59kgみたいなワインも好きだけどね)。
通常価格の2,000円台を前提に下記評定。
<評定:C>
2003年8月19日 ROUGE
MONTES CABERNET SAUVIGNON 2002 / MONTES S.A.
モンテス カベルネ・ソーヴィニヨン
チリ、DO:CENTRAL VALLEY
外での飲み会が続いたり、夏休みで家を空けていたりして、久々の更新になってしまった。
さて、今回はチリの廉価版カベルネ。なんと2002年ヴィンテージだ。
色は黒といってもいいくらいに、深い。香りは、黒っぽいベリー系主体だが、土の匂いもある。
それとともに緑の草のような感じがあるのは若さゆえか。
味は甘味と酸が共にたっぷりと充実して、チリカベらしい。単調なのは、仕方がない。
タンニンも強く、ひっかかる。
入手価格980円。元々多くを期待できない値段なので、これで十分。日常ワインとして、気軽に飲める。
ただ、以前のこの作り手のこのクラスは、もっと緊張感があって高貴な感じだったと思う。
それを思うと、かなり物足りない感じではある。最近のモンテスは、チリらしさに回帰しているのかもしれないが、
全般的に繊細さを失っているようだ。
<評定:C>
2003年8月21日 BLANC
MONTES CHARDONNAY 2002 BARREL FERMENTED / MONTES S.A.
モンテス シャルドネ バレル・ファーメンテッド
チリ、DO:CURICO VALLEY
続けてモンテスである。
最近、この作り手の味の傾向がガラッと変わったということは再三書いている。
その原因は、言うまでもなく、畑(産地)を変えていることにあるのだと思うが、
なぜ産地を変えたのか、その理由はわからない(注:このシャルドネは以前からCurico Valleyで、変わっていない。
主に赤ワインの話である)。
これは、輸入者でもあるエノテカさんに聞いてみるしかない、と思って、買物に訪れた際に聞いてみた。
一生懸命調べてくれたようだけど、よくわからなかった。ただ、最近また新しいestateを買ったようで、
Colchagua Valleyで赤ワイン用の自社畑を増やしているらしいことはわかった。
(エノテカ大阪店の岡田さん、ご面倒かけてすみません。いつもこんなオッサンの相手をしてくれて、ありがとう)
さて、このワイン、1997年、2000年と経験済みだが、
2002年はどうだろう。
色はそれほど濃くはなく、少しくすんだ麦わらといった感じ。香りはクリーミーでミルキー。
カスタードのような深みとともに、トロピカルフルーツの甘さ。口に含んだ最初の感じも、香りの印象通り、まったりと豊潤。
オレンジのような酸も決して弱くはないが、角がなく、心なしかだらっとした印象。甘味と酸が分裂気味。
やはりシャルドネもテンションが下がっている。こちらは産地が変わっていないのに、である。
決して私が慣れてしまったから、ではないと思う。以前のヴィンテージよりも香りの複雑さが消え、
味わいも単調になっている感じ。
入手価格\1,400。この値段だからこの品質で十分だが、やはりちょっと淋しいかな。
<評定:C+>
2003年8月24日 BLANC
MACON-BUSSIERES "LE CLOS" 2000 / VERGET
マコン・ビュジエール "ル・クロ"
BOURGOGNE地方、MACONNAIS地区、AC:MACON-BUSSIERES
ヴェルジェ3本セットの最後はマコン。
淡い麦わら色。想像していたよりかなり薄い。香りを嗅いで、一瞬、"むむっ"と思う。
ミルキーで豊かだが、少し青臭い印象もある。もしかして、やられかかっているんだろうか?
口に含むと、まろやかな甘さと、かなり鋭い酸が広がるが、同時に、日陰の芝生のような青い感じがわずかに。
変質しているとまでは言えない。が、万全のコンディションとも言えない。
ネットで購入し、クール便で受け取ってから、およそ2週間ほど常温の部屋に置いておいた。ただ、1日のうちのかなりの時間は、
冷房を入れているので、大丈夫だろうと考えていた。しかし・・・。
たったこんなことで、やられてしまうんだろうか。真相はわからない。
飲んで不味いわけではない。いや、結構美味しい。でも実力を十分に発揮しているとも思えないのだ。
やっぱり夏は保管方法には気を付けるべきだろう。セラーのない我が家のような場合、
冷蔵庫で保管する方がよいのだろう。関西の夏はホントに暑いからねえ。今年のような気候であっても。
ところで、このAOCは初体験なのだが、カタカナでなんと表記すべきか迷った。
マコン・ブズィエールと書く人が多いのかもしれないが、私はあえてビュジエールとした。
濁音を丸い柔らかい音で表記・発音するより、鋭い音で表記・発音するほうが、仏語らしいという考えだが、
これは学生時代に教わっていた先生方の発音が、頭の中に残っているからだ。
販売者がHP上に、マコン・ビュシェール レ・クロと書いていた。"ビュシェール"の気持ちはわからなくもない。
Sを弱く発音すれば、そんな感じにはなる。でも、"レ・クロ"はおかしい。シャブリ・グランクリュのLES CLOSと見比べてもらえばわかるが、
"LES"ならば"レ"だが、"LE"は"ル"でしかありえない。伊語ならば、"LE"は"レ"なんだけどね。
<評定差し控え>
2003年8月26日 ROUGE
MAS DES BRESSADES CABERNET-SYRAH 2000 / VIN DE PAYS DU GARD
マ・デ・ブレッサード カベルネ・シラー / ヴァン・ド・ペイ・デュ・ガール
VIN DE PAYS
暑い、暑い、ホントに暑い。
全国の主要都市の中で、年間平均気温が最も高いのは、どこかご存知だろうか?
那覇でも、鹿児島でも、宮崎でも、高知でもなく、大阪なのだ。
大阪の夏の暑さは、日中よりもむしろ夜間に実感する。「ずっと冷房をかけた部屋にいると体をこわす」なんて言うが、
大阪では、「冷房をかけずにいたら、体をこわす」。というわけで、家にいる間中、ずっと冷房を入れっぱなしだ。
もちろん夜も、一晩中である。特に私の住んでいる所は都心から近いので、夜中でも窓を開けると、じとーっとした高湿度の空気でむっとする。
しかも風など皆無だ。
東日本生まれの私が、この西日本で生活する上での唯一の苦難が、この夏の暑さだと言って良い。
さて、そんな暑さが、おそらくまだ1か月ほど続くであろうこの時期に、どんなワインを開ければよいというのか。
今日はあえて、この不快感を増すような、重苦しいヴァン・ド・ペイを選んだ。
色は黒と言っていいほど濃いが、やや青みがかっている。墨のような薬草のようなキノコのような深い香り。
なかなか高級感がある。
味わいは濃厚というよりも強烈。凝縮感がものすごく、どろどろした感じ。タンニンも渋柿のようで、圧倒される。
これなら何を食べながら飲んでも、口の中がワインの風味で占拠されるだろう。そんな感じだ。
これは開けるのが3年くらい早すぎたんではないか、と思える状態。カベルネとシラーという珍しい組み合わせ。
まるでプロレスラーと関取がタッグを組んだみたいだ。
入手価格\1,800。とても大柄で、この力の前にひれ伏すしかない。出来がいいとか悪いとか、美味しいとか不味いとか、
何も発言が許されましぇん。
<評定:B>
2003年8月29日 ROUGE
CAHORS "CEDRE HERITAGE" 2000 / LE CEDRE DIFFUSION
カオール "セードル・エリタージュ" / ル・セードル・ディフュジオン
SUD-OUEST地方、CAHORS地区、AC:CAHORS
ワインショップenotecaで、毎月"choice"という12本よりどりいくら、というセットがある。
今月は、12本で19,000円、6本で10,000円(いずれも送料込み)ということで、迷わず12本購入した。
12種類提示されていて、1本ずつ買ってもいいし、同じワインを12本買ってもいい。私はもちろん、1本ずつ購入。
但し、単価の高いワインだけは、1本で2本分計算なので、11本をgetした。これから随時登場する。
まずその1本目は、この季節にとてもふさわしくないカオール。
俗に黒ワインともいわれるこのAOCにしては、色はそれほど濃くはない。青みが強く、若々しい印象。
香りは、ハッカのようなスカッとした感じの奥に、薬草のような甘苦い匂い。
味わいは、意外にもフレッシュで、軽い。酸が強く、重みはなく、後味もさらっとしている。
飲み応えがないわけではないが、カオールってこんなんだったっけ?と思わず言いたくなるほど淡泊。
単体での通常価格は\1,800。気軽に美味しく飲めるけど、ちょっと期待はずれかなあ。この時期としては、このくらいがいいんだけどね。
<評定:C−>
2003年8月31日 ROUGE
COTES DE PROVENCE 1999 "L'AGE D'OR" / DOMAINES OTT
コート・ド・プロヴァンス "ラージュ・ドール" / オット
PROVENCE地方、AC:COTES DE PROVENCE
11本19,000円セットの2本目。パワフルであることが期待される南仏もの。しかも、この地方では有名な作り手らしい。
まず色はしっかり深く、赤系統と青系統のバランスがよい色。香りに華やかさはなく、しょうゆのような深く落ち着いた感じ。
味わいは適度に重く、甘酸っぱい。タンニンも結構強い。
何を売りにしているのかわからない、垢抜けない味。
面白味に欠けるなあ、と思っていたら、時間と共に変化が。徐々に火薬のような硫黄のような香りが出てきて、
どんどんスパイシーになってゆく。その変化が実にのんびりしている。良く言えば、雄大な感じ。
単体での通常価格は、\2,200。積極的にけなす要素はないが、値段にしてはちょっと、いや、かなり物足りない。
片田舎で黙々と絵を描いていた若者が、都会に出て、ふとしたきっかけから絵が認められて一人前の画家になったような、
元々実力は十分にあったぞ、それがやっと認められたぞ、結構イケてるぞ・・・、でもやっぱり田舎臭いなあ、
って感じかな。
<評定:D>