利酒日記 kikizakenikki

2003年9月


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2003年9月1日  BLANC 
CHATEAU LEZONGARS 2001 / BORDEAUX
シャトー・レゾンガール / ボルドー
BORDEAUX地方、AC:BORDEAUX

Ch. Lezongars Blanc 01  新学期を迎え、ウチの子も今日から元気に登校した。というのに、父親の私は、今日は事務所に出勤もしないで、 一日中自宅のリビングでPCに向かい、ウンウンと唸っていた。もちろん、遊びではなく仕事なのだが、 なんだかこの夏の急激な温度変化による疲れが出たみたいで、体がだるく、しかも昼に食べた脂っこいソーセージで お腹をこわし、気力も萎え、TVを見てはボーっとする時間が長かった。 というわけで、体も気持ちも夏休みのまま、周りの世界に取り残されている私である (まったくこの曜日感覚のなさ、季節感のなさが、自由業の特権だね)。
 本日登場は、11本19,000円セットの3本目。
 かなり黄色みの強い色。桃やパッションフルーツのような甘い果実香に針葉樹的な深い緑の香りが加わって、 キンモクセイのような可憐さ+妖艶さ。
 酸よりも甘味が優勢で、ねっとり感すらある。後味にはヴァニラあるいはカスタードのようなミルキーさ。 グラマラスでオイリーな余韻が適度に続く。
 ブラインドテイスティングしたなら、私は、カリフォルニアなどの温かい地域のシャルドネと言うだろう。 ソーヴィニヨンだなんて、夢にも思わない。セミヨンの甘さだとも、とても思えない。 何が一体どうなっているのか、とても不思議なACボルドー。
 通常の単体価格\1,900に対して、不足はない。むしろ、型破りなスタイルには脱帽。
**********
 ここまで書いて、裏ラベルの説明書きを見たら、味わいについて次のように書かれていた。
 The floral nose of the beginning masks white peach and citrus fruits with a buttery finish touched with vanilla. The deep flavours of mandarin turn buttery and finish with a mix of tropical fruits giving the wine balance and complexity.
 作り手が意図するほど、私は柑橘を感じなかったが、確かに複雑さはある。こういうスタイルもあるんだなあ、と新鮮な感じ。
<評定:C+>


2003年9月4日  ROUGE 
CARNEROS PINOT NOIR 2001 / HANGTIME
カーネロス ピノ・ノワール / ハングタイム
アメリカ、CALIFORNIA州

Hangtime Carneros Pinot Noir 01  最近、規制緩和をめぐって、色々と騒がしい。
 酒販店の出店規制を撤廃するはずが、「逆特区」を設けて、既存小売店を保護した話。
 夜間に薬を売るために、薬剤師がTV電話を介して顧客に接する形態をとったディスカウンターに対して、 厚労省が薬事法違反だといい、それならばタダで配れば販売にはならないからいいだろう、と対抗した話。
 まず私が言っておきたいのは、近年、ただ規制緩和、規制緩和と叫べばいいと思ってる思考停止低脳種族が多すぎるということ。 何でも自由にすれば、物事はうまく収束するなどと考えている連中は、もう少しこの国の現状を勉強して欲しい。
 自由競争によって社会的厚生の最大化が保証されるようなシステムに、この国はぜんぜんなっていないではないか。 実力を評価しあうどころか、近年、足を引っ張りあうだけのどぎつい嫉妬心蔓延社会に成り下がっているではないか。
 規制を撤廃することが、それぞれどんな意味を持つのかという本質を考えるべきだ。
 酒も薬もコンビニで買えるのは、消費者にとって便利である。だが、酒は20歳以上であれば、誰が何を買おうと自由だが、 薬は、効能や副作用などについてよくわからない一般人が好き勝手に買えるのが本当にいいことなのか。 そもそも消費者のメリットを最優先して考えることが、常に正しいことなのか。冷静に考えてみる必要がある。 我々国民自身が、という話ですぞ。

 閑話休題。
 11本19,000円セットの4本目。カリフォルニアのピノ。
 色は透明感のある美しいルビー。やわらかめのゴム臭と、甘酸っぱい果実香。 口に含むと、香りのとおりの甘酸っぱさが広がるが、思っていたほど甘味が鼻につかない。 ブルゴーニュの北の方とは決して言わないけど、マコン・ルージュくらいの感じはある。 カリフォルニアばなれしているのは確か。
 タンニンはまろやかで、ひっかかりがなく、後味もさらっと。
 とりたててすごさを感じないけれど、きれいにまとまっている点は評価できる。 何より、おいしくすいすい飲めるのだから、それでいいではないか。
 単体での通常価格は、\2,200。まあこんなもんですかね。気持ち的には「C−」なんだけど、 これがカリフォルニアだという点を考慮して、ジャストC評価。
<評定:C>


2003年9月8日  BLANC
BOURGOGNE HAUTES COTES DE NUITS 2000 / MICHEL GROS
ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ / ミッシェル・グロ
BOURGOGNE地方、AC:BOURGOGNE HAUTES COTES DE NUITS

Michel Gros Bourgogne Hautes Cotes de Nuits 00  経済評論家・森永卓郎氏がいつも言っていること。今の多くの国民は究極のMだと。 小泉構造改革で貧乏人ほど痛めつけられているのに、虐められれば虐められるほど、ひいひい言いながら、もっともっとと要求する。
 まったく、その通りだなあ、と思う。
 政治音痴、経済音痴もここまでくれば、しあわせなんだろうね。首を切られた人、会社が倒産した人たちにインタビューしてみたい。 今の政策を支持しますか?と。「痛みに耐えて頑張るしかないんですよ」なんて返事がもし返ってくるとしたら、 もうどうしようもなく、おめでたいとしか言いようがないね。なんだかこのバカさ加減が、この国の強さのような気もしてくるから不思議だ。
 何らの政治的思想を持たない私は、ただ面白く事態を眺めている。どんな事態になろうが、 自分だけ飢え死にしないような手だてを講じておけばいいんだから。そう、今の状況って、人間をどんどん利己主義に向かわせる。 これこそがアメリカン・スタンダードなんだけど。株価が上昇した、景気指標が上向いた、なんて、浮ついてる場合なのかねえ。 私が最近浮ついている唯一の理由は、もちろんタイガースなんだけども。

 閑話休題。
 セットものをしばし離れ、単品購入ものを。
 たまには良さげなブルゴーニュを、と思ってネットで購入した1本。入手価格\1,980。
 色は濃いめの日本酒程度。香りは、最初に鼻を近づけた瞬間から、いやあフリンティだなあ、と思うほど、 香ばしさが炸裂。火打ち石というか、花火というか、炒りたてのピーナッツというか。 その奥に、レモン的酸が潜む。
 ふくよかな香りから一変、口に含むと鋭い酸が押し寄せる。だが、なめらかなオイリーさもあって、 決して薄っぺらいわけではない。
 このクラスで大げさなことを言ってはいけないが、さすがに底力を感じる。良い買い物をした。
<評定:B>


2003年9月9日  ROUGE 
L'ENCLOS DU CHATEAU LEZONGARS 2000 / PREMIERES COTES DE BORDEAUX
ランクロ・デュ・シャトー・レゾンガール / プルミエール・コート・ド・ボルドー
BORDEAUX地方、AC:PRMIERES COTES DE BORDEAUX

L'Enclos du Ch. Lezongars 00  パソコンスクールが流行ってるみたいだ。なぜ、パソコンなんか習うの?
 今どきパソコンくらい使えないと恥ずかしいからか。皆がやっているからか。
 日々の生活の中で、パソコンがないと生きてゆけない人って、一体どれだけいるのだろうか。 必要がなければ、一生使わなくたっていい。死にはしないんだから。 反対に、どうしても必要ならば、人になんか習わずに、自分で使って慣れればいい。
 一人で何でもできるほど要領のいい人ばかりじゃないんだ!って反論があるかもしれない。 だが、そもそも一人でできないような人は、パソコンなんか使っちゃいけないと思う。
(この発言は、そうとう反感買いそうだな。それを分かってて、あえて書くんだが)
 英会話もそうだよねえ。人に習おうって発想の香具師は、その時点で逝ってよしだろう。 だいたいリアル厨房くらいのボキャブラがあれば、会話はできるはず。
(2ちゃんねらー以外には、意味不明な文章)

 さて、お遊びはこのくらいにして、本題に。
 11本19,000円セットの5本目は、ボルドーの赤。ボルドーはボルドーでも、プルミエール・コートだが。
 色はかなり濃いが、やや青みが強い。黒コショウのようなはじける感じに、土ぼこりや墨汁の匂いが加わる。
 味わいは、酸のぴちぴち感が先行するもじんわりした甘味が下支え。タンニンはそこそこで、引っかかりをあまり感じない。 軽やかにぐいぐい飲み進める。
 単体での通常価格は\2,200。まあこんなもんとは思うが、少しインパクト不足。 が異端だっただけに、凡庸に見える。
<評定:C−>


2003年9月13日  ROUGE 
NEBBIOLO D'ALBA (D.O.C.) 2000 TAVOLETO / TENUTA CARRETTA
ネッビオーロ・ダルバ タヴォレート / テヌータ・カレッタ
イタリア、PIEMONTE州

Tenuta Carretta Nebbiolo d'Alba 00  小1の息子が一人でテレビをずいぶん真剣に見てると思ったら、トリビアだった、と妻が笑っていた。 どうしてそんなとこまで似るのかねえ、と言われてもねえ。 私が、見れない日はビデオに撮ってまで夜中に見てるってことを、息子は知らないはずなんだが。
 テレビ雑誌の読者投稿欄に、トリビアで、他の出演者が大受けしているのに、タモリだけシラッとしてることがよくあって、 盛り下がる。自分の博識ぶりをひけらかしてるみたいで印象が悪い。番組構成上、再考願いたい、なんて投稿があった。
 場が違うが、ひとこと言っておきたい。あれはタモリが素直に、知っていることは知っている、知らないことは知らない、 という態度でやっているからいいのだ。そもそもあの番組は、タモリ以外では成立しない。 例えば、明石家さんまがやることを想像してみよ。すべての話題に大受けしてしまって、大騒ぎのトークショーになってしまうだろう。 例えば、古館がやることを想像してみよ。自分が知っていたことも知らなかったことも、すべて台本通りあるいはそれ以上に、 流暢に解説し始めて、肩の凝る蘊蓄番組になるだろう。例えば、みのもんたが・・・もうやめよう、気持ち悪い。
 タモリが一番自然体でやっているタモリ倶楽部(テレ朝系・深夜)のあのまったり感、脱力感を理解できるだろうか。あの個性と、フジ(CX)の得意とする、 "注意深くイヤミ領域にわざと足を突っ込んでいるスノッブ感"とのコラボによって、あの企画は成立している。 言うまでもなく、ボキャブラ天国からの流れだ。
 旧くは、カルトQとか、カノッサの屈辱、ちょっと毛色は違うがウゴウゴルーガなどにも みられた、分かる人にだけ分かればいい、みたいなフジの独善性が私は大好きだ (子供番組で近年秀逸なのは、何と言ってもNHKのピタゴラスイッチに尽きるが)。

 さて、TVの話題はこれくらいにして、本題へ。
 11本19,000円セットの6本目は、イタリアの赤。ボルドーファンにも人気が高いという販売者のコメントつきで、どんなだろうと期待がかかる。
 色は青よりやや赤が勝っているかなあという程度の紫で、光にかざすと、少しだけレンガっぽい感じもある。 香りはブランデーのようにアルコール感が強く、最初のうち甘酸っぱい感じなのだが、やがてなめし革や土の匂いも出てくる。
 酸のアタックがとても強く、そのあとふんわり甘さも広がり、タンニンがひっかかる。なのに不思議と重みはない。 悪く言うと、刺激が強いのに飲み応えがない。
 ボルドーファンうんぬん、とあったから、もっと重みがあるのかな、カベルネみたいなのかな、と思っていたが、 全然甘酸っぱいんで、期待はずれ。そうだよね。ネッビオーロだもんね。
 単体での通常価格\2,500。どうせならもっと型破りなほうがよかった。
<評定:D>


2003年9月14日  BLANC 
COLLIO (D.O.C.) PINOT GRIGIO 2002 / ATTEMS (FRESCOBALDI)
コッリオ ピノ・グリージョ / アテムス(フレスコバルディ)
イタリア、FRIULI-VENEZIA-GIULIA州

Attems Collio Pinot Grigio 02  最近、前置きの方が長いので、今日はシンプルにテイスティング・コメントのみ。
 11本19,000円セットの7本目は、昨日に引き続きイタリア。但し、白。
 色は少しくすんだ感じの麦わら色。接着剤と湿った芝生を混ぜたような、この品種に特有の青々とした香り。 だが、その奥に白い花のようなニュアンスと、フルーティな甘さがある。
 味わいも丸みがあり、白桃のような甘さがオレンジ的な酸に勝る。まるで焼酎のような甘みとも言える。 アルコール感豊かな余韻も長く続く。
 個人的に、このピノ・グリージョ(仏ではピノ・グリ)という品種は、あまり好きな部類ではない。 だから普段は積極的に飲もうとは思わない。というか、避けているところがある。
 しかし、当日記のポリシーは常に客観的評価を心がけることであるから、このワインについても客観的に評すれば、 味わいの複雑さはなかなかのものだと思う。単体での通常価格\1,800。 はっきり言って水っぽいものが多いイタリア白の中では、なかなか素晴らしい部類だと思う。
<評定:C>


2003年9月16日  BLANC 
MUSCADET SEVRE ET MAINE SUR LIE 2001 / DOMAINE DE LA LOUVETRIE
ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ・シュール・リー / ドメーヌ・ド・ラ・ルーヴェトリー
VAL DE LOIRE地方、PAYS NANTAIS地区、AC:MUSCADET SEVRE ET MAINE SUR LIE

Louvetrie Muscadet Sur lie  2003年9月15日。わが阪神タイガースが、18年ぶりのリーグ優勝を収めた。
 一般的なファンの人口比率を見ても、当サイトを通じて私にメールをくださるのが地元関西よりも 関東方面の方が多いという事実を見ても、この話題は、あまり皆さんの興味を引かないかもしれない。
 だが、ここは私のサイトである。不愉快に思う人は、読まなければいいだけだ。 頼んでアクセスしてもらった記憶はない(と、いちおう私流に毒づいておく)。
 2003年9月15日。対広島戦。9回裏、その時点でマジック1とするサヨナラ勝ちを演じた主役は、赤星選手(53番)。 そのヒーローを迎えた星野監督は、彼を熱く抱きしめた。頭を撫でられ、監督の腕の中で、顔をしわくちゃにした赤星選手は、 まるで、父親にほめられ、喜ぶ幼い息子のようだった。そのシーンを見たとき、私は、思わず目頭が熱くなった。
 こんな感動をくれた最高のチームに、選手たちに、心から感謝したい。

 さて、11本19,000円セットの8本目。
 色は当然、薄い。薄いという表現は、普通好ましくない表現なのだが、薄いのだから仕方ない。 見た目には、細かな発泡がある。
 レモンのような鋭い柑橘香は、いかにもミュスカデ。セルロイドのような香りも強い。 味わいもシャープだが、じんわりと密かな甘みを感じる。かすかにピリピリとした感じもある。
 まるでお手本のようなミュスカデ・シュール・リー。暑い季節にもくいくい飲めて、 それでいて味わいもある。
 単体での通常価格は、\1,800。お見事である。

 昨日は、新しいボトルを開けることもなく、既に開いた飲み残しのワインを飲み干し、 ビールを飲み、ただただ酔っていた。とても冷静なテイスティングができるような状況でもなかったしね。
<評定:B>


2003年9月20日  BLANC 
CARNEROS CHARDONNAY 2002 / HANGTIME
カーネロス シャルドネ / ハングタイム
アメリカ、CALIFORNIA州

Hangtime Carneros Chardonnay 02  他にいい人がいないから、というのが、自民党総裁選をめぐっての大方の反応だろう。 そのくらい、国を託すべき政治家が不在だということ。でも、まあいいか程度で政治家が選ばれる社会というのは、 それだけ安定しているということだ。
 それにしても、暴言都知事への国政復帰待望論がいまだに根強いのは、どういうことか。 私にはまったく不思議でならない。不気味でならない。これは私の個人的指向だが、国益とか、国の誇りとか、 愛すべき祖国とか、普通の国になろうとか、自立した国家を目指そうとか、そういった言葉を発する人を、絶対に好きになれない。 個人的感覚なんだから仕方ない。そういう匂いを、再選された総裁にも感じるのでね。
 政治家だけでなく、同じような思想を持つ一般市民に対しても思うのだが、 国という単なる"概念"に、自分達のアイデンティティを重ねなければ、自負心を保てないなんて、 あほちゃうか、と。

 さて、堅い話は私に似合わないので、本題へ。
 11本19,000円セットの9本目。大味でも致し方ないと思ってしまいがちなカリフォルニアのシャルドネだが、 モンダビさんの関わるエステートだから、期待はある。
 色は濃いめのイエロー。オレンジ的柑橘香に、桃の甘さとナッツの香ばしさ。
 甘み豊かな味わいは、いかにもカリフォルニアだが、適度な酸と苦味が引き締める。 余韻も長く、素性の良さを伺わせる。
 単体での通常価格は\2,200。もしこれが1,500円程度ならば、高く評価するのだが、 2,000円超としては、もうひと味欲しい。
<評定:C−>


2003年9月21日  ROUGE 
BOURGOGNE 2001 / DOMAINE MAGNIEN MICHEL ET FILS
ブルゴーニュ / ドメーヌ・マニャン・ミッシェル・エ・フィス(ミッシェル・マニャン)
BOURGOGNE地方、AC:BOURGOGNE

Michel Magnien Bourgogne 01  今日から急に涼しくなった。もう9月も終わりに近づいているのだから不思議はないが、 この暑い関西でも、ついに冷房を入れなくても過ごせるようになった。
 振り返ってみれば、今年の夏の暑さは、やっぱりマイルドだった。だいたい37度の声を聞かなかったしね。 大阪は、毎年当たり前のように、体温を超える気温になるものだが、今年は確か、36度が最高だったのではないか。 この調子で、順調に秋を迎えて欲しい、と暑がりの私は願う。
 でも、この冷夏で、埼玉県熊谷の人々は淋しい思いをしている!?というエピソードを、 お盆休みの帰省時に、関東ローカルのニュース番組で見た。最高気温といえば熊谷、というのが全国的に有名だからだ。 それが今年は、めっきり涼しくて、ニュースにならないというのだ。なるほど、熊谷の人たちは暑いというのをやっぱり誇りにしてたんだ。

 さて、今日のワインは、セットものを離れ、ネットで単品入手したもの。 ブルゴーニュのシンデレラワインになるか?と、最近花まる急上昇中のミッシェル・マニャン。 入手価格は、\2,280。
 色は、結構濃い。やや青い感じはあるが。
 香りは、何と言っても火薬のようなインパクトが強く、その後になめし革。カシスのような落ち着いたベリー香。 グラスを回すと、イオウのような香りが立つ。
 口に含むと、まず、ぴちぴちした酸がとてもチャーミング。タンニンがやや強く、ひっかかりがあるが、 バランスを損なうほどではない。 甘みはみじんも感じない。ソムリエさんがよく使う、"フィネス"ってのは、この感じなんだろうなという、 繊細で、丁寧で、巧妙な飲み口。
 01年ヴィンテージと若いので、ACブルゴーニュといえども、これなら良い感じで熟成するんだろうな、と思う。 そんな可能性を感じさせる。
 やっぱり、いい。大手ネゴシアンものの村名クラスなんかより、ずっといい。 それにこの程度の値段ならば、手が出しやすいという点も、すごくいい。
 ビッグネームになって、値段が高騰しないことを願う。
<評定:A>


2003年9月23日  BLANC 
CHATEAU DU PIN FRANC 2000 / BORDEAUX
シャトー・デュ・パン・フラン / ボルドー
BORDEAUX地方、AC:BORDEAUX

Ch.du Pin Franc 00  新内閣が発足して、「さすが人事の天才」などと言われている。政治力学を熟知した評論家がそのように言うのはわかるが、 例によってそんな言葉だけが一人歩きするのは困ったもんだ、と思っていた。
 ところが、街頭インタビューなどで、政治のことなどまったく知りもしないおばちゃんが、「安倍さんステキ」なんて 言ってるのを見ると、やっぱり総裁は天才(いちおう韻を踏んでます)なのかなと思ってしまう。 いや、正確に言うと、本質を見抜けないマジョリティを目くらましすることに関しては、抜群のセンスを持ってるよね、 あの人は。
 まあ、とにもかくにも、改革とやらがどんな成果を上げるのか、見届けようじゃないか。 ただ、我々がはっきり自覚しておかなければいけないのは、あの人たちが目指しているのは、アメリカン・スタンダードであり、 弱者を切り捨て、伸びるとこだけを伸ばして、平均値を上げる社会なのだ。
 街頭インタビューを見ていて、腹立たしいのは、「何かやってくれそうだし、腹黒くなさそうだし、わかりやすいから」 といってバカの一つ覚えみたいな反応しかしない人が多いことである。なんでこうなのかねえ。
(なお、念のため言っておくが、私は支持政党を持たないし、首相を嫌いなわけでもない。 誰の発言であろうが、好きなことは好き、嫌いなことは嫌いと思うだけである)。
 閑話休題。
 今日のワインは、安ワイン者の直感ってやつで、店頭で見つけた瞬間、これはイケそうだと手に取ったもの。 入手価格は\1,200。
 色はほとんどない。香りは、絶対に他と間違えようのないほど、これぞソーヴィニヨンという グリーンな感じ。若葉のようでもあり、ライム、いや、すだちのようでもある。
 口に含むと、酸のアタックは柔らかいが、緑の葉のようなフレーバーが広がる。 軽やかながら、余韻は長い。
 おそらくソーヴィニヨン好きにはたまらない味わいだと思う。 高級感はないが、これほどストレートに品種の特徴を出してくれているワインは貴重だ。
 何と言っても、エチケット(ラベル)の美しさが目を引く。 文字もイラストも、すべて緑を基調としており、ボトルの色と完璧に合っている。 とてもセンスがいい。
<評定:B>


2003年9月28日  BLANC 
CHATEAU DOISY-DAENE (SEC) 2000 / BORDEAUX
シャトー・ドワジィ・ダエヌ セック / ボルドー
BORDEAUX地方、AC:BORDEAUX

Ch.Doisy-Daene Sec 00  最近目に止まった広告に、こんなのがあった。
 駅の伝言板に「のぞみへ。先に行ってるね」の文字。日付は10月1日(水)。
 JAL(日本航空システム)の広告である。
 上手いね。10月1日というのが、気が利いていて、いい。ご存知ない方に、野暮だが一応説明しておくと、 10月1日は、東海道新幹線の品川駅開業に合わせ、ダイヤが大改正される日。これまでの「ひかり」主体から、 「のぞみ」主体に変わるのだ。
 そのJR東海のテレビCMの方も、結構気が利いている。TOKIO(ジャニーズ事務所)のメンバーが、 新幹線をバックに走っているのだ。TOKIOを選んだところに、センスの良さが光ってる。
 CMでは、のぞみ号の車体に"AMBITIOUS JAPAN!"というコピーが書かれているのだが、 まさか本当に実車にも書かれているとは、駅で見るまで思いもよらなかった。 (それにしても、そのTOKIOのCM曲が、東京駅の改札近くでエンドレスで流されているのには、少々閉口するぞ)
 関西では、南海電鉄の特急「ラピート」の広告に「関空へは、ラピートがはるかにお得」というのが以前からある。 これは、関西の人しか分からないかもしれないが、 大阪都心と関西空港を結ぶ列車として、南海の「ラピート」と、JRの「はるか」がしのぎを削っているためだ。 同じライバルを引き合いに出す広告でも、アメリカのように直接的なものより、こんなウイットに富んだもののほうが、 見ていても面白い。

 さて、ここからは、今日の本題に移ろう。
 DOISY-DAENEといえば、ボルドーはBARSACのシャトーで、SAUTERNES地区第2級に格付けされている貴腐(極甘口)が有名である。 これは、その有名シャトーが作る辛口白。
 色はイエローグリーンで、やや濃いめだが、緑の色調の方が若干強い。 マスカットのような甘い果実香。いや、マスカットの語源であるムスク(麝香)の妖艶さが際立つ。 その奥に、カスタードのようなクリーミーさ。
 口に含むと、そのクリーミーな感じが広がるとともに、豊かな酸が彩りを添える。両者のバランスが、すごくいい。 じんわりとした後味で、グリーンな余韻も長い。
 入手価格は\2,200。これ、いいです。3,000円以上でも、全然OK。
 杉並区あたりの(関西で言うと、豊中市あたりの)上流の下くらいの家庭で、わりと自由に育ったカワイイ娘(18)が、 大学に入って結構艶っぽくなったよ、みたいなワイン。
<評定:B>


2003年9月29日  ROUGE 
CHATEAU GRAND-PUY-LACOSTE (GRAND CRU CLASSE) 1999 / PAUILLAC
シャトー・グラン・ピュイ・ラコスト (グラン・クリュ・クラッセ / 第5級) / ポイヤック
BORDEAUX地方、HAUT-MEDOC地区、PAUILLAC村、AC:PAUILLAC

Ch.Grand-Puy-Lacoste 99  ポリフェノールがアルツハイマー予防に効果があることが、金沢大学の神経内科教授らの実験によって確認されたと報道された。
 新聞によると、アルツハイマー病患者の脳には、ベータ・アミノロイドというタンパク質が繊維状に沈着し、 これが発病や病状進行に影響すると考えられているが、赤ワインに含まれるミセレチンなどのポリフェノールが、 このタンパク質の繊維化を抑え、分解する作用があることがわかったとのこと。
 ただ、実験で効果が確認されたポリフェノールの量は、赤ワインに換算すると500mlだという。
 効果を持続するためには、500mlを毎日飲む必要があるのか、それとも1週間に1度とかでいいのか、わからないが、 仮に毎日ということだと、アルツハイマーは防げても、代わりに心臓病か、肝臓ガンになりそうだ。
 この話に限らず、いわゆる健康法というものに熱心な人が多いが、私はまったく興味がない。 自分の健康に関心がないということではない。"健康のためなら死んでもいい"みたいな姿勢は、 滑稽でしかないと思う。というか、バランスを欠いている。
 みのもんたが紹介した健康法はすべて実践する!みたいな中年女性が多いみたいだけど、趣味としてならともかく、 物事の一面しか見ず、その一面に固執する頭の不健全さに対する自覚がないのは困ったものだ。
 ポリフェノールが体に良かろうが悪かろうが、そんなことはどうでもいい。 ワインはおいしいし、楽しいし、人生が豊かになるから私は飲む。 それで仮に寿命が縮まったとしても、仕方ないではないか。もっとも、現在健康だからこんな考え方ができるわけで、 健康でなくなったらそもそも酒がおいしくないだろうから、そうなったら飲まなければいい。シンプルに生きたいと思う。

 さて、その赤ワインである。
 11本19,000円セットの10本目。11本セットと言っているが、本来このenotecaさんのセットは12本なのだが、 単価の高いワインは2本分計算となる。それが、今日のワイン。通常の単体価格は\4,600。
 色は青黒く、とても濃い。グラスの底がまるで見えない。香りはスパイシーで、アルコール感豊か。 墨汁のような感じがある。
 味わいはまだ酸が中心で、タンニンもこなれておらず、かなり若い印象。ほんのり甘みがあるが、 酸とのバランスは今ひとつ。余韻も短めで、さらっとしている。渋味だけがひっかかる。
 やっぱり開けるのが早かったのかな。それとも元々そんなに力のあるワインじゃないのかな。 まあベストの状態ではなかったと思うので、即断は避けたいが、5,000円近いものとしては、 もう少し凝縮感が欲しい気がする。
 もちろん、当日記に普段登場する価格帯のワインよりも数段上だが、コストパフォーマンスを考えると、 ちょっと期待はずれ。
<評定:C−>



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