利酒日記 kikizakenikki

2004年2月


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2004年2月1日  BLANC 
POUILLY-FUISSE 2002 / DOMAINE PAQUET
プイィ・フュイッセ / パケ
BOURGOGNE地方、MACONNAIS地区、AC:POUILLY-FUISSE

Paquet Pouilly-Fuisse 02  議員としての資質を疑う。

 金曜日、自衛隊のイラク派遣承認案を、与党が単独で強行採決した。
 現象としてみれば、強行採決というのは、これまでもあったことなのだが、今回のことが歴史の大きな転換点になることは 間違いないだろう。
 TVを見ていて、インタビューを受けた首相の言葉が忘れられない。
 「全員が賛成することが本来望ましいけれど、どうせ話し合いをしたって、最初から反対なんでしょ。野党は。」
 だから強行採決に踏み切らざるを得なかったと言いたいんだろうけど、はっきりいってこの発言には愕然とした。
 首相は、民主主義の何たるかを、まったくご存じないようだ。
 話し合っても賛同の得られない相手の意見は聞かなくてよいだなんて、 あんたは独裁者か。全員が賛成することが望ましいだって? それは何が何でも承認したい与党だけが思ってることだろう。 異なる意見を出し合って、調整を図りつつ、最後は多数決というのが、民主主義の基本ではないのか。全会一致がいいという発想自体、 まったくおかしい。
 こんな人が首相をやっている、というより、議員でいることが信じられない。すぐに辞めて頂きたい、と思う。 多くの国民は、何とも思わないんだろうか。 私には不思議でならない。これを異常と思わないような土壌が、既に醸成されてしまっているということなんだろうか。 こんなふうにして、国は、誤った道に進んでいくんですよ。
 そんな中、加藤紘一氏と古賀誠氏が退席、亀井静香氏は欠席。 古賀氏いわく、「こういう国会議員もいるということを、示す必要がある」。
 私は、この3人のことを特別に支持したり、どうこういう立場ではないが、いくら党の意向でも従えないものは従えない、 という姿勢を貫いたことには素直に敬意を表する。まだまだ捨てたもんじゃないと思った。
 党として意見統一を図るのが政党政治だという正論があるが、自由な主張が許されないというなら、 政党政治は必然的に全体主義を誘発することになるから、私は賛成できない。
 これをきっかけに、ぜひリベラルな議論が展開されることを熱望する。特定の価値観だけが支配する社会にならないために。

 さて、そんな重苦しい中で開ける今日のワインは、単品入手もの。

 色はしっかりめの黄色。はちみつと、オレンジと、ハーブのグリーンな感じが混じり合った香り。
 味わいはふくよかで、角が丸い。酸も決して弱くはないが、それ以上に甘みが強く、はちみつの味がする。でも、甘口というわけじゃない。 しっかり酸が効いている。
 香りの印象だけじゃなくて、本当にはちみつの味のするワインというのは初めてかもしれない。 後味に若干の苦みもあって、うまく締めてくれている。
 入手価格\1,980。高級って感じじゃないけど、優しく妖艶な魅力あふれる白。2002年ヴィンテージというのにも驚く。
 キュートでとても若々しいんだけど、上目づかいが妙に色っぽい上戸彩みたいなワインです。
<評定:B>

2004年2月2日  ROUGE 
BEAUJOLAIS 2002 / CLAUDE BERGER
ボージョレ / クロード・ベルジェ
BOURGOGNE地方、BEAUJOLAIS地区、AC:BEAUJOLAIS

Berger Beaujolais 02  鳥インフルエンザ、ついに人から人へ感染か。

 真偽のほどは、今のところ確認されていないし、これが人の間で猛威をふるうウイルスに変異する可能性があるかどうかもわからない。
 鳥インフルエンザのまま人から人に感染した例は、実はこれまでも確認されているらしいのだが、その後、人の間で爆発的に感染が広がった例はない。
 まずは調査結果を待とう。やみくもに恐れることは慎みたい。
 しかし外食産業では、牛もダメ、鶏もダメ、という踏んだり蹴ったり状態。お気の毒と言うほかない。
 これでもし、豚も、なんてことになったら、八方塞がりだが、こんな状況でありながら、私の食生活はまったく変わっていない。 あいかわらず牛ステーキは頻繁に食べているし、今日は鶏の唐揚げを食べた。可能性(確率)の観点から言えば、 私がこれらの食物が原因で1年以内に死ぬ確率は、同じく1年以内に交通事故で死ぬ確率より著しく低いだろう。 だから、心配などしてもほとんど意味がない。
 科学的根拠によらない先入観や感情的な恐れは、百害あって一利なしなのだ。

 今日のワインは、15,000円セットの6種目。
 ぶどうジュースのような、青紫色。香りはふんわり甘いが、強くはなく、奥ゆかしい。販売者のコメントではイチゴドロップの香りとのことだが、 同じイチゴドロップでも赤色のどぎついものではなく、ピンク色の感じ。
 味わいもイチゴっぽく、やさしい。が、タンニンは結構しっかりある。
 単体での通常価格は\1,500。値段と品質がドンピシャって感じだね。
<評定:C>

2004年2月5日  ROUGE 
CUVEE SELECTIONNEE CABERNET SAUVIGNON 1999 / VIN DE PAYS D'OC / BARON PHILIPPE DE ROTHSCHILD
キュヴェ・セレクショネ カベルネ・ソーヴィニヨン / ヴァン・ド・ペイ・ドック / バロン・フィリップ・ド・ロートシルト
V.d.P

Rothschild Cuvee Selectionne Cabernet 99  近鉄バッファローズ、球団名売却構想を白紙撤回。

 球団名を売るという話を最初に聞いた時、そうか、そんなやり方もあるか、と思った。 球団も営利企業である以上、収益を上げる方法は色々あっていい。そういった意見も多数あった。
 しかし、「球団名を売らなければならないほど経営のひっ迫した会社に、球団を持つ資格はない」といった意見を耳にした時、 それもその通りだなあ、と思った。
 売却を肯定する意見の中には、「日本は単なる名前にこだわりすぎる。大切なのは実体、中身なのであるから、 アメリカのように命名権ビジネスを推進すればいい」といったものもあるが、それはどうだろう。一番大切なのは、 応援するファンの心情ではないか。
 日本の文化がどうだとか、そんな理屈はどうでもいいが、名前が変わることによってファンが悲しむのであれば、 そんな商売はすべきでない。くだらない例で恐縮だが、例えばシャトー・ラフィットという名前を何億ドルかでMicrosoftが買収して、 シャトー・ウインドウズなんて名前になったら、ワインの威光がくすむのではないだろうか。
 どんな国のどんな商品であれ、それが品質(中身)において評価されているからこそ、その名前に重要な意味が付与されるのだ。
 球団名売却について、同じ在阪球団の阪神タイガースは、「うちは絶対に阪神という名前を手放すことはない」とコメントしていたが、 まさに自分たちの価値を知った賢明な発言である。阪神という名は、ファンにとっての命にも等しいからだ。
 ただ、今回のことに関し、他球団のオーナーなどから非難が相次いだという点はいただけない。他球団にとやかく言われる筋合いなどない。 球団は、あくまでもファンの方だけを見て、意思決定して頂きたいと思う。

 本日のワインは、15,000円セットの7種目。先般のシャルドネに続き、今度はカベルネ。
 色は深く、ややよどみの感じられる赤黒。土や枯れ草の雰囲気の中に、煮豆のようなふっくらした匂いもある。
 タンニンがはっきりしているが、酸はやや弱く、かすかに甘みが広がる。しかし、それがだらーんと広がるのではなく、 あくまでも緊張感は保っている。そこに気品のようなものを感じる。
 ブラインドなら、私はおそらくACボルドーと言ってしまうだろう。とてもオックとは思えない。
 単体での通常価格\1,900。底力があるというのとは違うけど、とにかくこんなきれいなまとめ方をされてしまうと、 「いいんじゃない?」って言いたくなる。
<評定:C+>

2004年2月8日  BLANC 
CHABLIS 2000 / OLIVIER LEFLAIVE
シャブリ / オリヴィエ・ルフレーヴ
BOURGOGNE地方、CHABLIS地区、AC:CHABLIS

Olivier Leflaive Chablis 00  CMの話。

 最近始まったセブン・イレブンのCMがなかなか良い。
 いくつかパターンがあるようなのだが、目に止まったのは次の2つ(うろ覚えなので、細部は間違っているかもしれない)。
 老人の客が店頭で、「肉まん」と注文する。女性店員が「おいくつですかぁ〜」と明るく尋ねる。 客は、「いくつに見えますか?」と返す。2人はしばし笑いあう。
 これ、実にほのぼのしててイイ。くだらない、と言ってしまえばそれまでだが、こんなお茶目な老人はカワイイ。 店員の応対の様子もなかなかうまく描けている。
 もう一つ。
 夜、店に訪れた若い男性客が、若い女性店員に向かって、「月がきれいだったので、つい来ちゃいました」。 対して女性店員は、「明日も月がきれいですよ」と返す。
 何かが生まれそうなムードが漂っている、などと文章で表現してしまうと、陳腐な感じがする。 すごく画の作り方がうまいので、ぜひTVで見て欲しい。いや、この程度の接客は、マニュアルの内だ、という冷めた解説もできるが、 ここはあえて、画の裏に暗示されている物語を想像したい。
 この2つめのCMを見て、昔どこかで読んだ、翻訳家の話を思い出した。ある翻訳家が、外国のロマンティックな小説を和訳した時の話。
 物語はこんな場面だ。夜、月明かりの下を、恋人未満の男女が並んで歩いている。その時、男性が立ち止まり、ふいに"I love you"と告白する。
 このシーンを、翻訳家は何と訳したか。"I love you"というセリフを、「月がきれいだね」と訳したというのである。
 言葉の裏にこそ"ことば"が隠れている日本語の妙味、あるいは切なさを、この翻訳家は見事に表現している。
 欧米の文学者は、よく日本人がうらやましいと言うらしい。こんなに含蓄のある言語を持っていて、というのだ。英語では、YesはYes、 NoはNoでしかない。日本語の「はい」には、言い方によってYesを意味する場合と、Noを意味する場合がある。
 仏語も似たような所があって、 Ouiという言葉は文字通りYesを意味するだけではなく、言い方によっては気が乗らないニュアンスを表すことがあるという。
 仏語と日本語の作る言語空間には、ある意味共通したものがあるのだ。ワインに魅せられる日本人が多いのも、こんなところに原因があるのかもしれない。

 今日のワインは、ネットでe-shopping wineから購入したもの。 先月末頃、オリヴィエ・ルフレーヴの2000年ヴィンテージが、50〜55%オフというメールを受け取り、あわてて申し込んだ。
 色はホントに淡ーい麦わら。ACシャブリらしいビニールチューブみたいな匂いと、いかにもミネラル分が豊富そうな塩気を想起させる香り。
 口に含んだ最初のアタックはやわらかく、予想以上にふくよか。レモングラスのような爽やかなハーブ・フレーバー。 ほんのり密のようなニュアンス+可憐な白い花のような感じも。
 凛としてエレガント。しばらく口に含んでいると、ミネラルの奥に、桃のような妖艶さもかいま見える。ACシャブリでここまでふくらみがあるのは、さすが。
 入手価格\1,480だが、通常価格は\3,000らしい。入手価格を前提にすれば、大絶賛。通常価格を前提にしても、十分納得。とっても良い買い物をした。 もちろん通常販売価格を前提に、C+評定とした。
 あと、メルキュレとモンタニィを入手しているので、後日登場するよ。
<評定:C+>

2004年2月9日  ROUGE 
LOTENGO MALBEC 2002
ロテンゴ マルベック
アルゼンチン、MENDOZA

Lotengo Malbec 02 Lotengo Malbec 02 Lotengo Malbec 02  貧乏暇なし。

 「いつもお忙しそうですねぇ。」「いやあ、貧乏暇なしでして。はっはっはっ。」
 アホか、と思う。
 貧乏だけど時間があるか、時間はないけど金があるか、どっちかにしろ。貧乏でなおかつ暇もないなんて、最低じゃないか。
 私は、裕福ではないが、基本的に暇はある。自分の時間がたくさんあるのだ。それでも、時々殺人的に忙しくなることもあるが、 そんな時は、言っちゃ悪いが、そこそこ金がある。宵越しの金は持たねえ江戸っ子的生き方。
 自分にむち打って、金も自由に使わず、ひたすら将来のために、なんてストイックな生き方をしたって、 幸せはいつまでもやって来ない。だから、飲もう、歌おう。

 今日は、情熱のアルゼンチン・タンゴをそのまま表現したようなワイン。エチケット(ラベル)に細工が施してあり、 見る角度によって、踊っているように絵が動く。
 15,000円セットの8種目。メンドサ地区のマルベック。
 色は青みがかっていて、なおかつ濃いが、透明度が高く、光を美しく反射する。香りはチョコレートあるいはカフェオレ (それらが混ざったモカジャバと言ってもいいか)、チェリー、土、薬草など。色で表現すれば褐色から赤黒。
 味わいは甘み優勢。タンニンがワイルドで、ひっかかる。粉っぽい後味。酸も結構生きている。
 これぞマルベックです、という感じのワイン。誰がなんと言おうと、アルゼンチンなんだなあ。
 単体での通常価格は\2,300。ストレートな造りで非常に好感が持てるのだが、値段を考えると、もう少しまとまりが欲しい気がする。 いや、個性という意味では十分だから、これがもし1,500円くらいなら、何も文句は言わない。
<評定:D>

2004年2月13日  BLANC 
MONTES ALPHA CHARDONNAY 2002 / MONTES
モンテス・アルファ シャルドネ / モンテス
チリ、DO:CASABLANCA VALLEY

Montes Alpha Chardonnay 02  牛丼の灯、消えゆく。

 なか卯、吉野家など牛丼チェーン大手が、相次いで牛丼の販売を休止した。
 ニュースを見ていたら、客の多くは「残念です」「再開を待っています」などと言い、 中年男性の中には、遠い目をしながら「牛丼は私の青春そのものでした」なんてセリフを吐く人までいた。
 ここまで多くの人に愛されている牛丼というメニューは、偉大だと思う。
 以前にも書いたが、私自身は牛丼を食べないので、なくなったところで一向に困らない。 たかが丼じゃないか、とも思う。景気が悪いから、単に安い食べ物がなくなると困るってことじゃないのか、とも思う。
 しかし、である。たかが丼に、これだけ惚れ込んでいる人がいるということは、素晴らしいことだ。 値段など関係ない。「これがなくなると困る」というほど大好きな食べ物を持っている人は、幸せだ。
 この純粋な気持ちこそ、食に対する感謝の念の根元である。
 ワインもそう。それがいくらのものであれ、おいしいという感動を大切にして、生産者に対する感謝の念を忘れずにいたいと思う。

 本日のワインは、15,000円セットの9種目。チリのシャルドネ。
 色は黄色みが強い。最初に香ばしいナッツの香りが飛び込んできて、トロピカルフルーツやカスタードクリームの重厚さが下支え。 アルコール度数が高い(14.5%)ので、グラスを回すと、もわっとアルコールの感じも漂い、鼻を刺激する。
 口当たりも濃厚かつ甘美。酸も決して弱くはないのだが、甘みの充実感が勝る。 後味に若干の苦味。
 以前から好きな造り手だが、残念ながら、近年質の低下が著しい。畑を変えていることが原因ではないかと思うが、 このシャルドネも、以前はDOがCURICO VALLEYだったのに、CASABLANCA VALLEYに変わっている。 優秀な白が多く産出されることで有名な地区ではあるけれど、このワインは、やや締まりがない印象。
 単体での通常価格は\1,900。奔放なところはチリらしいが、このクラスには、もう少し品格のようなものが欲しい。
<評定:C−>

2004年2月15日  ROUGE
CHATEAU MARJOSSE (PIERRE LURTON) 2002 / BORDEAUX
シャトー・マルジョーズ (ピエール・リュルトン)/ ボルドー
BORDEAUX地方、AC:BORDEAUX

Ch.Marjosse 02  国の前途って・・・。

 自民党の「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」が、歴史教科書から「強制連行」の記述の削除を求める運動に 取り組むという。
 大学入試センター試験の世界史の問題に「強制連行」という表現が使われたことに対して批判が相次いだのを受けてのことらしい。 その「批判」の主たるものとして、新しい歴史教科書をつくる会が、「強制連行は戦後、日本を糾弾するための 政治的な意味合いを持った造語だ」と、大学入試センターに対して責任者の処分などを求めた一件がある。
 思想的に鼻息の荒い連中って、どうしてこうも「糾弾」って言葉が好きなんだろうね。糾弾だろうが、球団だろうが、どうでもいいが、 もし強制連行が嘘だというのなら、いったいあれは何だったというのか。 まさか、彼らが自発的にどうしても日本に来たいと希望したのだとでも言うのだろうか。
 つくる会のお年寄り連中だけならともかく、若手議員の中にも、過去の罪を正当化することによって空虚な誇りを保とうという 独善的な人間が多いことには呆れる。そんなに自分たちがすべて正しいと言いたいのか。それが国の前途を考えてのことだというのなら、 あまりにも独りよがりである。
 過ちは誰にでもある。が、その過ちを認めることができないのはサイテーだ。
 自民党総裁はよく、「一国平和主義はいけない」とのたまうけれども、自己の所業をなんでも正当化しようとする排他的な思想は、 一国平和主義と同じ、いや、よりいっそう罪深いのではありませんか。

 さて、今日のワインは、15,000円セットの10種目。ACボルドーの赤。
 色は深い青紫といった感じで、若々しい。足は長く、密度が濃そう。 ピーマンのような青みの中に、土ぼこりのような感じと、弱いバニラ香がある。
 口当たりにもグリーンな苦味がある。樽の雰囲気は弱く、酸はまだ尖っている。タンニンもひっかかる。 非常に荒削りだが、VTの若さを考えれば仕方ないかな。
 単体での通常価格は、\1,900。ちょっと物足りない。端正なところは、ボルドーらしいんだけれども。
<評定:D>

2004年2月17日  SPARKLING 
BOTTEGA IL VINO DEI POETI PROSECCO BRUT
ボッテガ イル・ヴィーノ・デイ・ポエティ プロセッコ・ブリュット
イタリア

Bottega Prosecco Brut  トカゲのしっぽ切りか。

 学歴詐称問題で揺れた元民主党の古賀潤一郎議員に、今度は、政治資金規正法違反疑惑が浮上した。
 なんでも、在日韓国人から献金を受けたとかで、外国人から寄付を受けることを禁止している同法に違反するらしい。
 まず、法律そのものの是非はともかく、日本国籍のない者から献金を受けたことが法に抵触する以上、 規定に従って処罰されることは避けられないだろう。
 だが、私の個人的感覚では、なぜこの件がそんなに問題視されるのか、腑に落ちない。
 もう一度言っておくが、法律を破ってもいい、なんてことでは決してない。
 古賀議員自身のコメントだが、 「寄付して頂いた方は日本国内で生まれ、日本人として活動してこられた方で、まさか日本国籍ではないなんて思わなかったので、 ありがたくお受けした。すぐ、全額お返ししたい」という。
 実に良識ある対応ではないか。在日韓国人の方を、外国人という括りの中に入れてしまうことには、 私の個人的感覚では、とても違和感がある。どこかで線引きをしなればならないのが法律の条文であるとしても、 その解釈には、人間としての普通の感覚を取り入れて欲しい。
 だいたい献金を受ける時に、「日本国籍以外の方から戴くことは法律違反となっています。 あなたの戸籍謄本を見せてください」なんて政治家がいたら、私はそんな政治家を支持したくない。 そんなことを実践している政治家なんて、おそらくいないだろう。ということは、 今回の古賀議員と同様のことは、そこかしこで起こっているはず。
 寄付した方も、「違法という認識はまったくなかった。あれば献金するはずがない」と言っている。 無論、法律の無知をもって免責されることはないが、それだけに何ともやりきれない感じが残る。
 今回のことが、トカゲのしっぽ切りとしか思えないのは、私だけであろうか。

 さて、今日のワインは、2度目の登場。
 15,000円セット11種中のハーフ2本組の2本目。ハーフはボトル差が著しいことがあるので、 同じものだがいちおう掲載する。
 泡は細かく、しかも長く持続する。かすかにハーブ香があって、おとなしい印象。 酸がきりっとして、甘みは弱く、実にシャープ。りんごのような後味がある。
 前回の感想とほとんど同じなので、ボトル差はなかったと言えよう。
 通常価格2本で\1,760。つまり1本あたり\880。損も得もなし。
<評定:C>

2004年2月19日  ROUGE 
MONTES ALPHA MERLOT 2000 / MONTES
モンテス・アルファ メルロー / モンテス
チリ、DO:SANTA CRUZ

Montes Alpha Merlot 00  自由競争に任せれば、すべてがうまく行くのか。

 道路関係4公団の民営化に向けた会計基準作成補助業務を、監査法人がたった26,000円で落札した問題で、 日本公認会計士協会会長は、実態を調査して問題があれば厳しく対処すると述べた。
 公共事業などでの入札は、行政と特定の業者との癒着を排し、契約金額を適正化するのに役立つが、 一方で、このような過当競争も招いている。
 落札金額が安すぎれば、業務の質の低下を招くから、終局的には適正な契約金額に落ち着くはずだという、 純粋経済学的な解釈に私も異論はないが、それはあくまでも、すべての事象が経済学的に理想な状態で進行すれば、 という条件付の話であって、特定の思惑によって採算性が無視されたり、背後に政治的な力が加わったりすると、 経済学で言うところの社会的厚生の最大化が図れない場合が多々ある。
 安い落札金額にチャチャを入れると言う行為は、ともすると非難の対象となるかもしれない。 だが私は、今回の会計士協会会長のコメントに賛同する。会計のプロとして、こんな安い金額で、まともな仕事ができるわけがない。 落札した監査法人(大手かつ名門ではあるが)の売名行為だとしたら、質の高いサービスを提供すべきプロにあるまじき行為と言われても仕方ない。
 入札で1円落札する業者があれば、やらせればいいんだ、それが自由競争社会だ、などという意見は、 経済の本質を見誤った愚かな発言である。
 安ければ質なんかどうでもいい、といった風潮には、私は以前から絶対反対の立場だが、特に専門技術を売る職種ならば、 価格競争には与しないというプライドを持って欲しい。私も本業は同様の専門職なので、今回のことは他人事とは思えないのだ。

 さて、今日開けるのは、セットものではなく単品入手のチリ。当日記ではおなじみMONTES ALPHA。 意外なことに、メルローは初登場だ。入手価格\1,980。
 美しく、深い、これぞガーネット色という感じ。甘苦系のスパイスの香りが表面にちりばめられながら、重厚なバニラ香がどっしり支える。 乾いた土のような枯れた感じもある。ニスを塗った新品のタンスか食器棚みたいな匂いもする。
 味わいも重厚。甘みが強いが、酸もなかなか生きていて、冗長ではない。アルコール度数がなんと14%。重さの理由はそこにもあるだろう。
 渋〜いといったらマイナスに聞こえるが、タンニンの強いのなんの。 タンニンと言っても、柿渋とか、緑茶のタンニンとか、紅茶のタンニンとか、クラスのタンニンとか(そりゃ担任!)色々あるが、 これは口の中をざらざらにさせ、喉からも水分を奪うほどパワフル。薬草風の後味がずーっと残って、とっても充実感がある。
 ここまで個性がはっきりしてると、好き嫌いは分かれるだろう。顔立ちは端正だけど、ダイナマイトバディ、みたいな。 女優で言ったら松下由樹? 私は嫌いじゃないけどね。
<評定:B>

2004年2月22日  BLANC 
MERCUREY 2000 / OLIVIER LEFLAIVE
メルキュレ / オリヴィエ・ルフレーヴ
BOURGOGNE地方、COTE CHALONNAISE地区、AC:MERCUREY

Leflaive Mercurey 00  家庭円満の理由。

 自分からこんなことを言うのもナンだが、知人の間では、我が家はとても仲がいいと評判だ。 ラブラブな夫婦だよねえとも言われる。
 いつも家族3人で行動している。土日は、外でランチを食べたり、お茶を飲んだり、近所に夕食の買物に行くのも一緒だ。 それが珍しいのかもしれないが、私にとっては普通である。
 同じ屋根の下に暮らしているのに、別々の行動をするのは寂しい。単純にそんな気持ちだ。 外で遊ぶのが男の甲斐性みたいな言い方をする人も多いが、それなら何のために家庭を築いたのか?と問いたい。 私はギャンブルもしないし、ゴルフもしないし、仕事及び仕事関係の飲み会以外に出かけることはほとんどない。 つまらない男と言われるかもしれないが、それがどうかしましたか?って感じ。
 つまらないかどうかは、本人が決めることだからね。

 今日のワインは、ネットで購入したオリヴィエ・ルフレーヴ。8日に登場したシャブリに次いで2本目。
 色は淡いレモンイエロー。梨+グレープフルーツ的柑橘香+ナッツの香ばしさ。ふくらみを感じる。よく熟れた果実のイメージ。
 酸のアタックはあまり強くなく、甘みがふんわりと広がる。しかし、決して甘ったるいわけではなく、あくまでもシャープ。 適度な苦味も心地よい。
 入手価格\1,380。通常価格は\3,000とのこと。通常価格を前提にすると、若干高い感じも否めないが、 入手価格を基準にすれば、たいへんにお買い得。
<評定:C−>

2004年2月25日  ROUGE 
MONTES CABERNET SAUVIGNON 2002 / MONTES
モンテス カベルネ・ソーヴィニヨン / モンテス
チリ、DO:CENTRAL VALLEY

Montes Cabernet Sauvignon 02  顧客情報流出問題

 YAHOO! BBから約470万人分の顧客情報が流出した問題で、同社から現金を脅し取ろうとした4人が捕まった。
 CDとDVDに入れられていたとのことで、どうも内部関係者からの流出ではないか、と見られている。
 470万人分って、紙ならば膨大な量と重さになるだろうけれど、電子データだと簡単に持ち出せる。 まさに時代を反映した犯罪。
 私が使っているようなノートパソコンだって、今やCDなど簡単に焼ける時代 (CDを「焼く」って、なかなか趣のある表現なんだけど、アメリカでも同じくburn CDって言うらしいね)。
 IT化の進展が、人間の心を蝕んでいる、なんて論調もあるようだけど、新しい道具が社会に浸透する時代には、 いつもそんなことが言われるものだ。いつの時代も、悪いのは機械ではなく、人間なのにね。
 それにしても、YAHOO使ってなくてよかった・・。

 本日のワインは、先月20日にも登場した15,000円セット中のハーフボトル。ボトル差があるかもしれないので、 同じものだが再度。
 色は深く、やや透明感があって美しい。ああチリだなあという、インクのような鉛筆のような匂い。 甘さも想起させる。
 実際にふんわりと甘みがあるが、タンニンがしっかりしているので、力強い。 よく言えば陽気、悪く言えばがさつ。
 通常価格は2本で\1,500。まあこんなものでしょう。結果、ボトル差はなかった。
<評定:C>

2004年2月27日  ROUGE 
CHATEAU DE SALES 2000 / POMEROL
シャトー・ド・サル / ポムロール
BORDEAUX地方、POMEROL地区、AC:POMEROL

Ch.de Sales 00  今日この話題は、あまりにもありきたりだけれど。

 教祖に地裁で極刑判決が下った。事の善悪など、改めて言うことでもないので言わない。被害者の感情に触れることも、部外者としては 不謹慎なので言わない。犯罪は犯罪であり、許されないことは言うまでもない。
 だが、事件に関する一連の報道の中で、気になることがある。
 元信者の転入届不受理問題などに関連し、このようなカルト的集団は、社会から排除すべきだといった意見が多い。 自宅の近くに危険な集団が来ることを望む人はいない。そこに異論はない。だが、排除すれば問題が解決するわけではない。
 カルトを排除すれば、平穏が訪れると思うのは間違いである。むしろ、カルトを忌避する風潮が広まることが危険なのである。
 自分と意見の合わない存在を頭ごなしに否定する。そんな思想は「彼ら」の中にあると同時に、 彼らを排除しようとする「我々」の中にも同様に存在する。いや、自分のほうが正しいと思っている分だけ、我々のほうが より薄汚い。自分こそ正しいと思うことほど、危険なことはないのだ。
 自分だけは正しく、公明正大な人間だと思ったら、要注意である。違う意見に耳を傾け、不可解なものを排除せず、 同意はできなくても、理解すらできなくても、存在を許容し合うこと。そこにしか、問題解決の糸口はない。
 誰もが、自分の正しいと思うことをやっている。そこに伴う使命感とか、倫理観とか、順法精神とかの強弱や方向性によって、 結果として人助けになったり、犯罪になったりする。その違いは紙一重である。いや、ほとんどボーダレスである。
 私は、日々法を犯さないで生活している。それは、私が生まれつき正しい人間なのでは決してなく、 法の規定に私の倫理観を合わせることに成功しているのに過ぎないのだ。
「わたしは彼らとは違う」のではなく、「わたしも彼らと同じである」と気づくこと。
 カルト集団の排除に少しでも反するような意見には、すぐ「危険思想」だというレッテルを貼る人がいる。 その考えこそが最も危険であることを、理解すべきである。わかるかなぁ。

 さて、今日登場するのは、15,000円セット11種の最後にして、目玉。色々なWine Shopのサイトで、 メールニュースで、この言葉を目にした。「申(さる)年の今年に、ぴったりです」。そんな、シャトー・ド・サル。
 色は深く、やや青みがある。豊かなヴァニラ香に、ピーマンのような青臭さが少しある。グラスを回すと、火薬のような感じが出てくる。 まだ香りが十分に開いていない感じで、時間をおけばもっと変わってくるだろう。
 酸が少し尖っているが、タンニンは柔らか。明るすぎず、重すぎず、中性的な味わい。 口の中で風味が広がらないのは、まだ若いからだろう。
 1日たてば、少しは変わるかもしれない。明日、残りをじっくり味わってみよう。
 通常価格は\3,200。現段階では実力を図りかねるけど、おそらく将来性があるであろうことを考えて評価した。
<評定:C>

[2日後の追記]
 残りを翌日に味わうつもりが、2日経ってしまった。
 なんと香りがまったく変わっていない。もちろんヴァキュヴァンで空気を抜き、 冷蔵庫で保存していたとはいうものの、これはめずらしい。いかにスロー・スターターであるかがわかる。
 もちろんちゃんと味わうために、室温に30分ほどなじませてから口にした。
 酸が丸くなめらかになり、少し女性的な味わいに傾いた。なめし革の感じも出てきた。 全体に、開けたときより良くなっている。
 でも、予想の範囲内なので、評価を上げるまでには至らない。

2004年2月28日  BLANC 
MONTAGNY 1er CRU LE VIEUX CHATEAUX 2000 / OLIVIER LEFLAIVE
モンタニィ・プルミエ・クリュ ル・ヴュー・シャトー / オリヴィエ・ルフレーヴ
BOURGOGNE地方、COTE CHALONNAISE地区、AC:MONTAGNY

Leflaive Montagny 00  思考停止状態を避けるために。

 今日、新聞を読んでいたら、昨日私がここに書いたこととまったく同様の意見をみつけた。
 私は、自分と同じ意見の人間が正しいなどと言うつもりもないし、それ以外の見解を否定するつもりはもちろんなく、 むしろ自分と同意見に出会った時こそ、より一層警戒しなくてはならないと思っている。だからあえて書く。
 映像作家の森達也氏が、次のように言う。
「主語が「私」という単数から「我々」という複数に変わるとき、善意や正義は憎悪や攻撃性に容易に転換する。 オウムもアルカイダも米国も、すべて構造は同様だ。ところが米国を批判できても、日本社会は自分たちもその構造に捕らわれているという自覚がない。」
「共同体への帰属意識が強い日本人は、異物排斥の感情が生来的に強いのかもしれない。オウムによって変わったのではなく、むき出しになった。僕はそう思っている。」
「過剰な免疫システムは自己を破壊する。僕らのこの無自覚な思考停止が、何よりも危険なのだ。」


 皆が、「そうだそうだ、そのとおりだ」と言い出したら、私は、本心でなくとも、それをあえて否定する側に回る。 全会一致ムードというのが、この上なく気持ち悪い。だからいつも人に反対をし、さらに反論を待っているのだ。

 ネットで購入したオリヴィエ・ルフレーヴ3本セットの3本目。 これまで、シャブリメルキュレと登場し、いずれも高コストパフォーマンスだった。
 色は麦わらと、とても淡い山吹との中間といった感じ。少し湿った芝生と、ナッツの脂っこさが混じり合ったような香り。 少しやばいかな。
 グラスを回すと、さらに強いジメジメ感。やっぱりやばいかな。レモン的酸がきりっとして、それなりに飲めるが、どうしても日陰の感じが気になる。 悪く言えば、ぞうきんのような匂いというか・・。
 他の2本と同様に、受け取ってすぐ冷蔵庫で保管していたので、こちらの問題ではないと思う。
 おそらくこの程度では劣化とは認められないかもしれない。これを交換してくれたり、返品に応じてくれる店は少ないだろう。 でも私は、気づいてしまうのだ。どうしようもない。販売店を責める気持ちは全くない。こんなことは日常茶飯事だからね。
 経験上、こういう状態のワインは、時間が経つともっとエグくなる。だからなるべく早く飲んでしまおう。飲めないほどではないのだから。
 通常価格\3,500。入手価格\1,580。なんと55%オフ。本来なら、とてもお得だったという感想を書けるはずだったろう。今回は、評価を差し控えたい。
 なんか、味覚に敏感なのって、不幸なのかもしれないと思う、今日この頃。
<評定差し控え>


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