2005年2月
2005年2月2日 ROUGE
BEAUJOLAIS-VILLAGES NOUVEAU 2004 / BOUCHARD AINE & FILS
ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー / ブシャール・エイネ・エ・フィス
BOURGOGNE地方、BEAUJOLAIS地区、AC:BEAUJOLAIS-VILLAGES
一太郎がなくなると、本当に困るんです。
松下電器産業が、自社の特許権を侵害しているとして、ワープロソフト「一太郎」とグラフィックソフト「花子」
を開発したジャストシステムを訴えていた裁判で、東京地裁は、両ソフトの製造、販売の禁止と、製品の廃棄を命じる判決を下した。
技術的な詳細にはここでは触れないが、今回、裁判所が松下の主張を全面的に認めたことになる。
特許権侵害を理由に製品の製造・販売禁止を命じた判決が下されたのは、極めて異例なことだという。
ジャストシステムは控訴する意向であり、判決の効力が直ちに及ぶことはない。しかし、
今回のことが同社に与えるダメージは、計り知れないものがあるだろう。
知的財産権は擁護されなければならないし、不当な侵害は、無論、許されることではない。
知的財産権訴訟については、わが国ではまだ黎明期とも言える状況であり、裁判所の判断もまだ手探りといった感が拭えない
(以前に当日記にも書いた青色LED訴訟なども一例)。
今回の訴訟に関して言えば、ソフトの存立の根幹をなすような部分の技術ではなく、単に表示方法に関することで、
ユーザーの立場からすると、なぜそんなことで発売禁止にまでなるのか?と思わざるを得ない。
私は、もう10年以上「一太郎」ユーザーで、言っちゃ悪いが「MS Word」みたいなお粗末なワープロソフトを使う気がしない。
人とファイルをやり取りする時には、仕方なくWordを使っているが、それでも下原稿は「一太郎」で打ち、
その後Wordで保存し直したりしている。ATOKの優位性は言うまでもないが、罫線や表作成は圧倒的に一太郎がいい。
書類を作ることを仕事としている私のような人間は、ワープロソフトの良し悪しが、そのまま仕事の効率に影響する。
だから、なんとしても一太郎は存続してもらわないと困るのだ。
昨年「一太郎2004」を購入したばかりで、もうすぐ発売される「一太郎2005」はどうしようかと思っていたのだが、
今回のことで、ぜひバージョンアップしようと決めた。ジャストシステムを応援する証として。
PANASONICユーザーでもある私は、松下の権利が侵害されていい、などと思っているわけではもちろんない。
ジャストシステムが松下の権利を侵害しない形で一太郎を存続させてくれることを、切に願う。
さて、本日のワインは、あの祭りからもう2ヶ月半が経ってしまったヌーヴォーである。
投げ売りをしていたので買ってみた。
色は青みが強く、ヌーヴォーらしい。俗に言う蒸しバナナの香りがあり、こちらもヌーヴォーらしい。
甘味がかなりあって、味わいは充実。酸もキュートで、バランスがよい。ただ、ヴィラージュにしては、
ちょっと軽いかな。
昨年の発売直後に、同じ作り手のヴィラージュでないヌーヴォーを開けているが、
それとの違いがよくわからない。
今回の入手価格は\1,050(本体価格1,000円+消費税50円)。阪神百貨店にて。
発売当時は2,000円台の後半だったはずだから、それを前提に「ヌーヴォー基準(飛行機代が乗るから高くて当たり前というのを前提)」で評価すれば、
下記評定のとおり「C−」となる。今回の入手価格を前提に、ヌーヴォー基準ではなく普通の1,000円ワインと思って評価すれば、
ちょうど「C」くらいかな。
<評定:C−>
2005年2月4日 ROUGE
CHATEAU MALESCASSE 1997(CRU BOURGEOIS SUPERIEUR)/ HAUT-MEDOC
シャトー・マレスカス(クリュ・ブルジョワ・スペリュール)/ オー・メドック
BORDEAUX地方、HAUT-MEDOC地区、AC:HAUT-MEDOC
(政治家の)みなさまのNHK。
NHKの橋本新会長が、定例会見で、政治家に特定の番組について事前説明を行うことに関し、「一般論として好ましくない」と述べた。
この発言の真意は、容易に想像できる。
NHKに対する批判の声が強くなり、受信料支払拒否が増えている現状で、なんとか信頼を回復したい。
最悪のタイミングで貧乏くじを引いてしまった自分としては、とにかく批判の声を鎮めることしか、保身の方法はない。
それにしても、「一般論として」だなんて、政治家の答弁みたいだ。はっきりさせて欲しいのは、
問題となっている番組で、実際に「事前」説明があったのか。あったとすれば、そのとき政治家が圧力をかけてきたか否か。
まさに、その個別具体の説明をして欲しい。
国家予算をもらっているから、国民の代表である国会議員に対して説明責任があるのだと、
NHK関係者や国会議員以外のいわゆる"識者"連中もそう言うが、この言説の中にこそ、まやかしがある。
国民の代表であるはずの国会議員は、今も昔も、一般国民と同じ目線の人々であったためしがない。
彼らの特権階級意識は、どんどん強くなっているような気がする。だいたい、何の技能もないくせにセンセイなどと呼ばれて
ふんぞり返っている輩にろくなタマはいない(もちろん立派な政治家も一部には居るだろうが)。
NHKが最も気にしなくてはいけないのは、センセイ方ではもちろんなくて、受信料を払ってくれる視聴者ではないのか
(もちろん国会議員にも受信料を支払う一般国民としての立場はある)。たとえば民間企業が、財務諸表を開示するだけでなく、
投資家に対して経営方針や事業計画を説明するように、NHKは電波を使って視聴者に経営状態や番組制作に関する説明を
すべきではないのか。
「公正中立であるべき公共放送」という言葉も何度か聞いたが、だれが「公正中立」を決めるのか。少なくとも政治家じゃない。
視聴者であるべきだ。
私がメディアに求めるのは、たとえば国の戦争責任を徹底的に追及する意見と、国や天皇に責任はなかったとする意見と、
双方を同じ電波や紙面の上で併存させる姿勢である。
「公正中立」というのは特定のコンディションのことではなく、どんな意見も排斥しない姿勢のことである。
そこをはき違えている政治家、評論家、そして世論が少なくない状況は、たいへんに危険である。
本日も、最近多く取り上げているハーフボトル。メドックのブルジョワ級だ。
液色は黒っぽく、光にかざすとエッジにややオレンジが入っているのがわかる。
香りにコショウのようなスパイシーさ、皮革のニュアンス、ハッカみたいにスッとした感じもあって、
一瞬、これどこのワインですか?と聞きたくなる。チリの偉大なワインに、こんな感じのものがありそう。
つまり、メドックにしては、少し陽気な感じかな。
既にタンニン分が丸くなっていて、甘味が前面に出てくる。でも決してくどい味わいではない。
適度に果実味を保ちながら、何かが突出しているわけではない。
そのへんの緊張感が、ボルドーらしさを醸し出している。
ひっかかりがなく、すいすい入っていく。ドンピシャの飲み頃か。しかしどうしようもないスケール感の欠如は、
そのままこのワインの器を表しているようだ。
ハーフボトルで入手価格は\1,144(本体価格1090円+消費税54円)。フルボトル換算で約2,300円。成城石井阪急三番街店にて。
ところでエチケットにはCRU BOURGEOISとしか書かれていないが、それは蔵出し当時のことで、
その後CRU BOURGEOIS SUPERIEURに格付されているから、ここではそのように表記した。
<評定:C+>
2005年2月5日 BLANC
III B & AUROMON CHARDONNAY 2002 / JEAN CLAUDE MAS / LIMOUX
トロワベー・エ・オロモン(トワベー・エ・オウモン) シャルドネ / ジャン・クロード・マス / リムー
LANGUEDOC地方、LIMOUX地区、AC:LIMOUX
会長さんもつらいね。
NHKの橋本会長が、自民党総務会に出席し、先日の定例会見で番組の事前説明に関して「一般論として好ましくない」と発言したことについての
釈明を行った。
「説明自体は悪いことではない。ただ、お伺いを立てるようなやり方はどうかと述べた」と説明したらしい。
まあ、会長さんとしてのつらい立場はわかる。予算を承認してくれる議員たちに反旗を翻すわけにはいかないからね。
でも、視聴者向けには「政治家と距離を置いているぞ」とアピールし、政治家には「あなた方を無視しているわけではない」とおべんちゃらを使う。
そういうのを、一般社会では、二枚舌っていうんですけどね。
今日のワインは、近所の酒屋さんで手頃なものはないかと探して買ったもの。
まあ有名なんで、色んな所で売っているようではあるけれど。
色はかなり濃い黄色。香りは、思いがけずしっかりした樽香(バニラやバターなど)があって、深い。
白い花のような可憐さもある。
口の中ではトロピカルフルーツみたいな甘さと、オレンジ的な酸が広がる。とてもこのクラスのシャルドネとは思えない
たっぷり感。しかも南の地方にありがちな間延びした味ではなく、ちょうどいい頃合いのテンションがある。
入手価格は\1,575(本体価格1,500円+消費税75円)。
まったく期待していなかっただけに、かなりの衝撃を受けた。とても1,000円台の南仏ものだなんて、信じられない。
この仕上がりなのに、この値段というのは、まさに造り手の良心を感じる。安ワイン者必飲の好作品と言えるだろう。
ところでこのワイン名、最初に「III」と書いたのは、ローマ数字の3の大文字(V)のつもり。機種依存文字を使うと文字化けするかな?
と思ったので、Iを3つ続けて雰囲気を出してみた。
IIIはこの造り手独自のグレードで、最高のキュヴェを表すらしい。BはBariqueのことらしい。
それと、輸入者が日本語読みとして「トワベー・エ・オウモン」と書いているからか、
販売店でもほとんどそのように表記されているみたいだ。確かにRの発音は日本語にはない子音なので、聞こえないものとして
省略すれば、そんな感じにはなる。だが、一般的なカタカナ表記法則に従えば、日本語のラ行に近いものとして扱うのが、
見た目にも自然であるから、私は「トロワベー・エ・オロモン」とし、併記することとした。
<評定:AA>
2005年2月9日 BLANC
SAINT-AUBIN "LA PUCELLE" 1999 / ROUX PERE & FILS
サン・トーバン "ラ・ピュセル" / ルー・ペール・エ・フィス
BOURGOGNE地方、COTE DE BEAUNE地区、AC:ST-AUBIN
スポーツは単にスポーツです。
今日、世間ではサッカーの話題で持ちきりのようだが、私はサッカーフリークではないし、
ましてやナショナリストでもないので、北朝鮮に勝ったといって溜飲を下げる(しかし、何の溜飲を下げるのか?)
ような悪趣味はない。
こういうことを言うと、お前は平気で拉致をするようなテロ国家の肩を持つのか?などと反応する単細胞のお方も少なくないようだが、
そうやって善意ぶって、他人の不幸に乗じて、実は自己の不満を解消するだけのようなケチくさい輩が私は大嫌いである。
スポーツの国際試合はナショナリズムの適度なガス抜きになるから効果的だという意見がある。そうだろうか。
それは問題の解決になっていない。
魔女捜しをしなければバランスを保てないような心の病を知らず知らず多くの人が抱えている事実を、
隠蔽することにしかならないのだ。
さて、今日の本題。
淡いレモン色。グラスに鼻を近づけた瞬間、ん?と思う。
日本酒の吟醸香みたいな感じがあり、よく嗅ぐと、湿った芝生の蒸れた匂いがする。
やっぱりやられている。
口中にその生臭さと、黒糖の甘さが。飲むに堪えないというほどではないが、
決しておいしくはない。
残念だけれど、これは健全ではない。
入手価格\2,389(本体価格2,276円+消費税113円)。成城石井阪急三番街店にて。
この程度の劣化はよくあることなので、軽い事故と思って、次に期待しよう。
<評定差し控え>
2005年2月13日 ROUGE
CHATEAU FONREAUD 1997(CRU BOURGEOIS SUPERIEUR)/ LISTRAC-MEDOC
シャトー・フォンレオー(クリュ・ブルジョワ・スペリュール)/ リストラック・メドック
BORDEAUX地方、LISTRAC-MEDOC地区、AC:LISTRAC-MEDOC
今日も時間がないため、前置き文章はなし。すんなり終わることをご勘弁頂きたい。
やや赤系の強い色で、ふちはまだピンク。この色からは、若そうな印象がある。
だが、香りは結構熟成している感じがある。黒っぽい果実、墨汁のほか、少し動物っぽい感じも。
酸は丸く、タンニンもこなれていて、スムーズな飲み口。すいすいと入っていくが、
決して最初からスカスカだった感じではなく、いい感じでまろやかになっている。そんな飲み頃感を感じる。
ハーフボトルで入手価格は\1,089(本体価格1,038円+消費税51円)。成城石井阪急三番街店にて。
何度も書いているが、最近、こんな感じのハーフボトルが多いが、とっても手頃で、ありがたい。
しかも、このワインみたいに、内容が値段なみかそれ以上だと、なおうれしい。
<評定:C+>
2005年2月14日[1] ROUGE
CHATEAU LILIAN LADOUYS 1997(CRU BOURGEOIS SUPERIEUR)/ SAINT-ESTEPHE
シャトー・リリアン・ラドゥイ(クリュ・ブルジョワ・スペリュール)/ サン・テステフ
BORDEAUX地方、ST-ESTEPHE地区、AC:ST-ESTEPHE
今日は2本。まず1本目。
典型的なボルドーカラー(深いガーネット)。
皮革や土など、落ち着き系の香り満載。どっしりと構えていて、開ききっていない印象。
タンニン分がやや荒い。甘味は弱く、黒っぽい果実味+アニマリィな味わい。
このクラスで97ヴィンテージということで、もうとっくに良い頃合いかと思って臨んだが、
意外にも硬い。ということは、まだ成長の余地があるということか。
ハーフボトルで入手価格は\1,189(本体価格1,133円+消費税56円)。成城石井阪急三番街店にて。
十分良いんじゃない?この値段なら。晩御飯のビーフシチューに合わせ、おいしくいただきました。
<評定:B>
2005年2月14日[2] BLANC DOUX
CHATEAU DOISY-VEDRINES 1997(GRAND CRU CLASSE)/ SAUTERNES
シャトー・ドワジ・ヴェドリヌ(グラン・クリュ・クラッセ / 第2級)/ ソーテルヌ
BORDEAUX地方、SAUTERNES地区、AC:SAUTERNES
そして、今日2本目。
しっかりめの黄金色。アプリコット、梅酒、あるいはレンゲの蜜のような少し青臭い印象も伴う香り。生臭いと言ってもいいか。
口に含むと、たっぷりとした蜜の甘味、強めの酸、カスタードクリームのミルキーさが、やや分裂気味に共存。
かなり大柄だが、まだぜんぜん成熟しておらず、あどけない印象。
口中で転がしていると、まるで歯ごたえがあるかのようなねっとり感と、奥行きのある甘味が広がる。
ソーテルヌ特級格付と認識して飲めば、やや物足りない感じもするが、値段からすれば致し方ないところか。
ハーフボトルで入手価格は\2,689(本体価格2,561円+消費税128円)。成城石井阪急三番街店にて。
フルボトル換算で5,000円以上といえば決して安くはないが、ソーテルヌの格付ものであることを考えると、
なんだか得なのか損なのか、微妙な存在。いえ、決して不満があるわけじゃあござんせん。
今日から大量のチョコレートを消費しないといけないので(ウソ。一度そんなことを言ってみたい)、
それならソーテルヌだな!と思い抜栓。
GODIVAのキャラメルチョコには、ぴったり合いましたよ。
DEMELのチョコマロン(チョコレートコートしたマロングラッセ)のほうが合うかと思ったが、今ひとつだった。
この甘酸っぱさだと、明治ストロベリーチョコとか、不二家ルックチョコのほうが合うかもね。
<評定:C>
2005年2月15日 BLANC
ISLA DE MAIPO VIOGNIER 2000 / SANTA INES
イスラ・デ・マイポ ヴィオニエ / サンタ・イネス
チリ、DO:COLCHAGUA VALLEY
子供が悪いんですか? 戦後教育が悪いんですか?
そういう善人ぶった物言いは、やめなさい。
大阪の小学校に卒業生の少年が侵入し、教職員を殺傷した事件をめぐって、
またもやマスコミが大騒ぎをしている。
このような事件が起こるたびに、TVなどでは、「なぜ少年の凶悪犯罪が増えているのか。
その本当の原因は何なのか。食い止めるために大人はどうしたらいいのか・・」などの議論が展開される。
いいかげんうるさいよ、と私は思う。
この手の喧伝には、少なからぬウソが含まれている。
まず、近年青少年による凶悪犯罪が目立って増加しているという統計的事実はない。むしろ未成年者の犯罪数は減っているという。
この事実は、多くの人に指摘されているのにもかかわらず、青少年犯罪の凶悪化というステレオタイプな報道を、
マスコミはあえて好んで行っている。
今回のような事件が起こると、犯罪処罰の厳罰化や、警備の強化を叫ぶだけでなく、端的に「疑わしきは罰せよ」式の
主張が市民権を得る。だが、「どうすれば青少年犯罪を減らせるか」的な議論を大人がしたり顔でしている事実こそが、
最も問題なのだということに、マスコミや識者連中は、気づいていない。問題は、我々大人自身の中にある。
政治家に多いが、「戦後教育の中で、勧善懲悪の思想が欠落している」などという発言をする大人が、実は一番の問題児なのである。
「勧善懲悪」を叫ぶ人々というのは、暗黙の前提として、自分は「善人の側」だと無邪気にも信じている。
その上で、いかにすれば青少年の非行を防げるかなどということを、真顔で語っている。まるで、犯罪を犯す人間は特殊なのであって、
それを生み出す社会が悪いなどと言わんばかりだ。
そういう人々は、自分もまた犯罪を犯す可能性があるという事実に気づいていないか、無意識のうちに黙殺している。
基本的に人はみな同じ程度に愚かである。あなたも私も犯罪者予備軍であるということを認めない限り、社会は変わってゆかない。
自分だけは犯罪をしないなどと、本気で信じているとしたら、なんとお気楽なことか。
凶悪化が進んでいる、と言いたくて仕方がないマスコミや識者は、まず、自分の中にある偽善を、さらけ出すべきなのである。
この事件をめぐる報道の中で、私が唯一感心したのは、報道ステーションでの古舘伊知郎氏の次のような主旨の発言である。
「最近社会では、『ごく少数の強者と大多数の弱者』という区分けが進行しており、その中で弱者を自認する
人たちの中の一部が、さらに弱い者をみつけて攻撃を加えるという現象が起こっているような気がします」。
競争社会、弱肉強食を当然の流れとして無邪気に肯定しているバカ政治家連中に、煎じて飲ませたい言葉だと思った。
もう一度言う。変わるべきは、我々大人自身なのである。その十字架を背負っている自覚を、あなたも私も持たなくてはならない。
本日のワインは、私にとって初体験のチリのヴィオニエ。
まず液色は濃いめのイエローで、期待感は上々。
香りは意外にもカッチリと硬く、炒ったアーモンドみたいな若干のフリンティさも。
その香りと、樽由来かと思われるクリーミーさが相まって、温泉玉子みたいな様相を呈する。
もちろんこの品種らしい花束のような華やかさや、グァヴァみたいなトロピカルな香りも強い。
口に含めば、黄色い花のフレーバーとともに、結構強い酸が生き生きと広がる。そして、後味は驚くほどシャープで、変な甘味は残らない。
私が考えるヴィオニエの醍醐味は、ふくよかすぎるくらいに妖艶な香りと、口いっぱいに広がるトロピカルな甘味と、
それでいてシャープで手仕舞いの良い後味という一連の流れにあるのだが、
このワインは、ほぼその醍醐味を味わわせてくれる。
通常、安ヴィオニエに感動することというのは、ほとんどない。そのくらいに難しい品種なのだが、
このクラスでこんなにテンションの高さを実現している事実は、賞賛に値する。
入手価格は\1,389(本体価格1,323円+消費税66円)。成城石井阪急三番街店にて。
正直言って、3,000円以上でもいいと思う。久々、ぶったまげた安ワイン。
<評定:AA>
2005年2月18日 BLANC
CLOS FLORIDENE 1998 / GRAVE
クロ・フロリデーヌ / グラーヴ
BORDEAUX地方、GRAVE地区、AC:GRAVE
ちょっと急ぎすぎかな。
最近、形勢不利なのは、ホリエモンである。少し性急過ぎるかな、と思う。
いうまでもなく、ライブドアによるニッポン放送株買収問題だが、
そのニッポン放送の株価が下がり、ライブドアも下がり、企図したフジサンケイグループ支配がうまく行かないと、
大損する可能性も出てきた。
法律の網をかいくぐったようなやり方にも、批判を浴びせられている。
「カネがすべてと思ったら大まちがい」なんて声も聞こえてくる。
でも、その批判の仕方って、どこかで聞いたことがあると思ったら、
ナベツネ氏だった。「カネさえあればいいってもんじゃないんだ」という例のセリフ。
プロ野球騒動の時は、世論の多くがホリエモンの味方をしたが、
今回は、旧勢力が息を吹き返したようにも見える。
堀江vs日枝(フジテレビ会長)対決を見ていて、日枝さんの言い分に、なるほどと思ったことがある。
放送には長い歴史があって、それと同じノウハウをライブドアが持っているとは思えない、という主旨の発言だ。
私は、基本的に、札ビラで人の頬を叩くようなやり方を忌み嫌う人間なので、
金を出して株を買い占めたら、どんな会社でも支配できるという考えは好きになれない。
ただ、その一方で、「買われたくなければ上場しなければいいでしょ」というホリエモンの主張も、そのとおりだと思う。
株式上場して資本調達するということは、そのような市場原理の中に身を置くということなので、
いきなり見ず知らずの、しかも何のノウハウもない他人に会社を支配されても致し方ないということを、
あらかじめ了承した行動だとも言える。
上場というのが大きな社会的信用を得る手段だというのは認めるが、
サントリーみたいな企業(あそこまで大きくなっても上場しない)だってあるのだ。
こういう、金で命を削るような攻防を見ていると、ご苦労さんと思ってしまう。「稼ぐが勝ち」(堀江氏の著書)などと言われてしまうと、
ああそうですか、それはがんばって、と言うしかない。私にはそういう価値観はないから。
もちろんホリエモンだって、カネさえあれば何でもできるなどとは言っていない。そう、世の中にはカネで買えないものはたくさんある。
ただ、多くの問題はカネで解決するしか方法がないというのも事実だ。それを、積極的に肯定するか、
仕方ないと思うか。少なくとも私は、後者だ。
さて、今日のwineは、最初に言っておけば、劣化品である。
液色は琥珀色に近くなっており、グラスに注いだ瞬間、もしかして・・と思う。
香りを嗅ぎ、その疑念は本物になる。梅酒のような黒糖のような匂い+湿った雑巾みたい。
最初、口に入れたときは、まあそれでも結構飲めるかな?と感じた。
だが、徐々に空気に触れるに従って、臭みは増してゆく。やはり、どうにもおいしくない。
ソーヴィニヨンで、このヴィンテージで、しかもハーフボトルということは、
確かに短命を覚悟しなくてはならない。だが、これは明らかに早く向こうに行き過ぎてる。
昨夏の猛暑の影響だろうか。昨年から、やられている白wineが多いような気がする。
ハーフボトルで、入手価格は\1,249(本体価格1,190円+消費税59円)。成城石井阪急三番街店にて。
あらためて、白のハーフは注意しようと思った1本。
<評定不能>
2005年2月19日 BLANC
MACON-PRISSE 2001 / DOMAINE DELAYE
マコン・プリセ / ドゥレイ
BOURGOGNE地方、MACONNAIS地区、AC:MACON-PRISSE
昨日長かったので、今日は前置きなしで、本題へ。
淡いイエローグリーン。石油あるいはアクリルのような科学物質的香り。
酸が鋭く、甘味はほどほど。マコンのわりには、かなり細身。
質のあまり高くないシャブリみたいだ。
入手価格\1,575(本体価格1,500円+消費税75円)。阪神百貨店にて。
最近、マコネー地区では、私があまり聞いたことのないAOCが少なくない。
これも今回初体験だ。
まあ、中身が値段相応なので、よかった。
<評定:C>
2005年2月20日 ROUGE
CHATEAU HAUT FERRAND 1997 / POMEROL
シャトー・オー・フェラン / ポムロール
BORDEAUX地方、POMEROL地区、AC:POMEROL
ブロードバンドがなんぼのもんじゃい。
周囲から「PCに詳しい人」みたいに言われてきた私は、
以前から当然のように、ブロードバンドを使っているものと思われていた。
で、「べつに、無闇にネットサーフィン(古い言葉だ・・)するわけじゃなし、
POPメールの送受信と、WEB更新のためにFTPでファイルをアップするのと、
たまにネットで調べ物をするくらいなので、ダイヤルアップで不便を感じないし、
電話代もかからない」などと素直に言うと、
「え"?ホント?」てな顔をされ、哀れみの目を向けられることもあった。
だいたい私は、「新しいものは無条件に良い」などという単細胞が大っ嫌いであるから、
「今どきブロードバンドは常識」なんて考えには大いに反発する。誰が常識なんて決めたんだ。
「ウチはさあー。常時接続でしょー。だからネットに接続してるって意識することなんか、ないんだよねー。」
なんて言う人間がいると(私のまわりの関西人は、決してこんな言い方はしないが、
人を小馬鹿にする表現の場合、圧倒的に東京弁がイイ)、
そいつの背後に回って、後から首を絞めてやりたくなる。
常時接続なんて、言ってみれば、家のカギをかけずに、1日中外出してるようなもの。
そんなこと、自慢するなと言いたい。
こんな私だが、2年ほど前から、仕事関係で大きなファイルを人とやり取りすることが多くなり、
「あ、あなたのトコには、重いからファイルを分割して送ってあげるからね」などと言われるに至っては、
ナローバンドは人に迷惑をかけることにもなるのかなあ、とも思い始めた。
それで1年半ほど前、我がマンションに某社のファイバーが来ると聞き、
すかさず申し込んだのに、何ヶ月経ってもなしのつぶて。確認すると、希望者少数につき、引けないとのことらしい。
もうこのマンションにいる限り、光は無理だなと思いつつ、
ちまちまADSLなんかに入るつもりもない私は、そのまま電話回線を使っていた。
ところが先月、突然、NTTの光が来るというから申し込んだら、なんと今度はOKとなった。
で、先日開通のはこびとなり、FTTHの仲間入り。
下り85メガくらい出てますよ。確かに驚くほど速いが、それが何?って感じもする。
無論、常時接続なんかしません。その都度切ります。
もう少し便利にするため、自宅PC4台を無線LANにして、ついでにレーザープリンタもスキャナつき複合機も無線化する予定。
どうせやるなら、とことんしたいのが、私の性分。
それにしても、Bフレッツマンションタイプって、FTTH(=Fiber To The Home)というより、
正確にはFTTB(=Fiber To The Building)なんだよね。
さて、今日のワイン。
色はややオレンジっぽくなってはいるが、比較的透過性が高い。
土っぽく、トリュフみたいな香りが出ている。スモーキーでもある。
酸が結構シャープに生きており、鉄の味わいもある。このAOCから期待されるまろやかさとか、
深みはあまり感じられない。パワーが足りないまま枯れかかっているような印象が否めない。
ハーフボトルで入手価格は\1,489(本体価格1,419円+消費税70円)。成城石井阪急三番街店にて。
特に悪いところはないんだけれどねえ。フルボトル換算で3,000円と思うと、少しばかりもの足りない。
<評定:C−>
2005年2月21日 ROUGE
PERNAND-VERGELESSES PREMIER CRU "LES VERGELESSES" 1996 / DOMAINE LALEURE-PIOT
ペルナン・ヴェルジュレス・プルミエ・クリュ "レ・ヴェルジュレス" / ラルール・ピオ
BOURGOGNE地方、COTE DE BEAUNE地区、PERNAND-VERGELESSES村、AC:PERNAND-VERGELESSE
そこまでホリエモンが目の敵にされる理由が、わからない。
色んな所でホリエモン包囲網がどんどん張られているようで、かわいそうだ。
私は、18日に書いたが、「カネがすべて」みたいな考えは大嫌いなのだが、それ以上に嫌いなのは、
さしたる合理的根拠もなく、仁義を欠くからとか、秩序を乱すからなんて理由で人を排除しようとする人々だ。
カネですべてが買えるわけではないけれど、たかが会社の支配権くらい、カネで買わせてやれよ。
「会社」とか「金儲け」に興味のない私は、単純にそう思う。
本日のwineは、少しご無沙汰の感じもあるブルゴーニュ。しかも、安く手に入れた1級ものだ。
ルビー色が褐色に傾きかけて、いわばざくろ色。果実香とケモノっぽさのバランスがよい。
ユーカリのようなスーッとした感じもある。
口の中ではまだ初々しさも残る果実味が。タンニンは少し引っかかるが概ね丸くなっており、刺激は少ない。
とってもバランスが良く、スムーズに飲める。
入手価格\2,089(本体価格1,990円+消費税99円)。成城石井阪急三番街店にて。
素直にお買い得品といえる。ただ、特価なので、本来の値段はもう少し高いだろう。3,000円くらいか。
それを前提に評価。
<評定:B>
2005年2月26日 BLANC
GRAND ARDECHE CHARDONNAY 2001 VIN DE PAYS DES COTEAUX DE L'ARDECHE / LOUIS LATOUR
グラン・アルデシュ シャルドネ ヴァン・ド・ペイ・デ・コトー・ド・ラルデシュ / ルイ・ラトゥール
V.D.P.
教育に熱心な人の教育論には、不遜な匂いがする。
最近、復古趣味の連中の声がでかくて(年配に限らない。若者も含めて)私は腹を立てることが多い。
例えば、絵本作家デビューなんかしちゃった森喜朗前首相は、教育問題に熱心なようだが、だいぶズレていると思う。
ああいう人たちが口を揃えて言う、「親や目上の人を敬う心」とか、「道徳心」なんてものは、
教えられて育つものではない。学校や親から言葉で教えられて、立派な人間が出来上がるなんて思っているとしたら、
相当にお気楽だ。
「人を敬え」なんてことを子供に教えようとする人たちは、きっと自分が心から他人を尊敬したことがないんだろうと思う。
人を尊敬するのは、その人を尊敬せずにはいられないから、沸き上がるその気持ちを抑えられないから尊敬するのであって、
学校や親からそうせよと教わったからではない。子供に尊敬されたかったら、我々大人自身が尊敬に値する人間になれるように、
日々努力をする以外にない。
ニートが増えているのは教育の失敗だとか、そもそもわがままばかり言って働く意思のない若者の面倒を見る必要などないとかいう声も聞くが、
そういういい大人が率先して弱者を踏み台にして、弱者のチャンスを奪っているその傍若無人さに対する自覚がないのは、困ったものだ。
そんな大人が尊敬されるわけがない。
私も子を持つ親だが、「親を敬え」とか、「年長者を大切に」なんて教育は絶対にしない。
そんなことを言われて育った子供は、権力におもねり、権力に頼り、権力を欲しがる人間にしかならないと思うから。
「家族の絆を大切に」なんてことも、私は絶対に言わない。お互いに尊敬しあえない家族になってしまったとすれば、
それはすべて親自身の問題である。
私は子供に対して、「自分のことはすべて自分で決めなさい」「自分の思っていることは全部素直に言いなさい」
「人の言うことは全部素直に聞きなさい」「我慢なんかしなくていい」と伝えている。
そうでなければ、相互理解なんてあり得ないし、寛容な気持ちなど持ち得ないと思っているから。
もし私が息子に尊敬されない親父であるとすれば、それは私自身の生き方がまずいからである。
教育とは、大人が我が身を振り返ることにほかならない。
教え導こうなんて考えること自体、不遜で独善的で他者をバカにしているだけだと思う。
今日のワインは、私が以前から好きなV.d.P。
色は淡い黄色。ツンとしてセルロイドっぽい香り+パイナップル的甘さ。
ヨーグルトを思わせる乳酸の風味もあるが、意外とスリム。
酸はきっちり。アフターには苦味も。
入手価格\1,890(本体価格1,800円+消費税90円)。阪神百貨店にて。
私の記憶にあるこのワインは、もっと体格のがっしりしたものだったが、これは結構繊細だった。
ヴィンテージによるのだろうか。
まあ、この値段に対して不足はないし、すいすいと飲めてしまうのだけれど、
少し肩すかしを食った感じ。
<評定:C+>
2005年2月28日 ROUGE
CHATEAU PICHON LONGUEVILLE COMTESSE DE LALANDE 1997 (GRAND CRU CLASSE) / PAUILLAC
シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド(グラン・クリュ・クラッセ/第2級)/ ポイヤック
BORDEAUX地方、HAUT-MEDOC地区、PAUILLAC村、AC:PAUILLAC
今日はプチ祝い。
べつに誰かの誕生日とか、結婚記念日とかそういうんじゃないけれど、今日はプチ祝い。
1つ大きな仕事が終わって、自分の労をねぎらうために。
私の仕事は、たとえて言えば、漫画家か小説家みたいなものだから、
4コマ漫画とか簡単なコラムがあったり、連載ものがあったり、気合の要る単行本があったりする。
常に締め切りとの戦いだから、大きな単行本を何ヶ月もかかってやっと仕上げると、ホッとすると同時に、言いしれぬ達成感がある。
最近は連日徹夜に近い状態だったから、今日くらい大好きなワインをゆっくり飲もう。
とはいえ、大きな仕事が終わっても、次の仕事が待ってる。まだぜんぜん安らげないのも事実。
アシスタントに任せれば量産できるのかもしれないが、自分のやる仕事には、細部にまで自分の息がかかっていないと気が済まないタチだから、
それができない。
人からもよく指摘されるけれど、とっても効率が悪い。でも、その効率の悪いことをしたくて、あえてそうしているのだから、
誰にも非難されるいわれはない。頑固な寿司職人みたいなもんだ。
こういう類のワインを、買ってきたその日に飲むというのはあまりないことだけど、
今日は、今日の自分のために買ってきたのだ。
色を見ると、エッジはまだピンクっぽくて、若そう。透明感があって、きらきら光を反射して、美しい。
香りは最初、とっても硬くて、閉じている。でも、口の中で結構やわらかく、黒い果実や皮革のほか、土っぽい感じも若干。
ポイヤックらしい焦げ臭は強くない。
グラスを回したり、飲み進めるうちに、丸みがどんどん出てきて、妖艶さを増す。
こんなに短時間に変わるということは、それほど底力はないということか。やはりこのヴィンテージだからか。
しかし、一見スマートそうに見えながら、こんなにしっかりと複雑な味わいがあって、なめらかなのは、さすがというほかない。
ハーフボトルで入手価格\4,989(本体価格4,752円+237円)。成城石井阪急三番街店にて。
フルボトル換算で1万円だけど、まったく不満はない。というか、金額とかそういう次元を超えて、
たかが液体からこんなに幸せをもらえるなんて、自分はなんて果報者かと。
こういうサイトをやっていると、よく、「一番好きなワインは何ですか?」と聞かれることがある。
そんなとき私は、「ワインに序列はつけられません。どんなワインにも魅力があります」などと答える。
それはまったく本心なんだけれども、どうしても1本選べと言われたら、このピション・ラランドを選ぶかもしれない。
私にとってこのワインは、そのくらい思い入れがある。そんなに何度も飲んだことがあるわけじゃないけど(なんと当日記では、初登場だった)、
やっぱり素直においしいし、それでいて決して手の届かないところにいるわけじゃない。
"永遠の二番手"みたいな立ち位置にも、惹かれるものがある。
初めてムートンやラトゥールを飲んだときにはもちろん感激したけれども、そうそう飲めるもんじゃない。
そこまで近寄りがたいわけではないところが、またいい。
グレートヴィンテージのほうがもちろんいいんだろうけれども(82とか飲んでみたいよね)、
若いうちに手軽に飲めて結構おいしいオフヴィンテージのほうが、
庶民には向いてる。もっとも、こんなワインを開けているなんて庶民じゃない、と言われてしまうかもしれない。
でも、こういうささやかな幸せを感じたくて、私は人生を送っているのだ。というのは、おおげさか。
<評定:C>