時事ネタコラムのページ [利酒日記別室]

2007年8月


2007年8月6日
 原爆忌に思う。


 選挙期間中は政治的発言を控えるべく当コラムもご無沙汰だったが、 そのうちになんだか新たに書く気が失せてしまっていた。でも、この私のコラムを密かに期待してくださる 殊勝な方もいて、そんな期待に応えなければ、という妙な使命感もあったりする。ということで、 久々に書く。

 安倍内閣の支持率がついに「危険水域」に達したとの報道にもかかわらず、 当のご本人は続投意欲満々である。

 色んなところで色んな方が既に書いておられるが、「私と小沢さんとどっちが首相にふさわしいか」 と問うたのは、安倍さん自身であり、それに対して国民が 「安倍さんじゃない」との結論を出したのに、この期に及んで「国民の声を真摯に受け止める」などとおっしゃる。
 国民の声を受け止めているのなら、自ずと答えは出ているだろうに。

 広島での平和記念式典で、「平和憲法をあるがままに遵守し、米国の時代遅れで誤った政策には はっきり『ノー』と言うべきです」と広島市長が「平和宣言」で述べたのに対し、 「今後とも、憲法の規定を遵守し、国際平和を誠実に希求し、非核三原則を堅持していく」 と言った首相。言葉だけを捉えれば、近いことを言っているようにも聞こえるが、 首相の言う「憲法の規定」とは、現行憲法9条のことではないだろう。

 長崎出身のシンガーソングライターさだまさし氏が、 久間前防衛大臣のいわゆる「しょうがない発言」に関して、雑誌に次のようなことを書いていた。

 「日本人は、たとえどんな事情があろうとも、仮にジョークであっても、 公の場所では決して核兵器を『容認』してはいけないのだ。(中略)
 こういうことを言うと必ず "日本は現実的にアメリカの核の傘の下に繁栄している" のであるから、もっと現実的に対応するべきで、『核兵器廃絶』などは『平和ボケの理想主義、 平和主義者の甘ちゃん発言』という批判が襲いかかってくるけれども、そういう言葉に一瞬たりとも ひるんではいけない。 核兵器は一度に沢山の人を殺すという目的だけのものなのである」
(テレビステーション2007年16号/ダイヤモンド社、21ページ)

 私はさだ氏の発言を、全面的に支持する。 "甘ちゃん"などと批判する人は、たぶん「オレは現実を冷徹に見ている、国際政治をちゃんと知っている 常識的かつ賢い人間だ」という自覚がおありで、私のような人間がお嫌いなのかもしれないが、 たとえ甘ちゃんと言われようが、物事を知らないと罵られようが、 私は堂々と理想主義者を続けてゆこうと思う。

 しょうがない、という言葉が、どれだけ理想を崩し、誰かを苦況に陥れ、 横暴を容認することにつながっているか。 「現実はこうなんだから、しょうがないじゃないか・・」というところから、 すべての災いは始まる。「世界の現実を見よ」というのが"大人"だというのなら、 私は幼いガキでかまわない。

 そう思えばこそ、 首相の言う「憲法の規定を遵守」というセリフが、ますます空々しく聞こえてしまうのである。


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