時事ネタコラムのページ [利酒日記別室]

2008年9月


2008年9月11日
 茶番に騙されるな


 首相が二人続いて仕事を放棄して辞めてしまったという とんでもない事態。その騒然とした状況を逆手にとり、 総裁選を一種のショーのように盛り上げ、国民の関心を惹こうなんて、 したたかと言うより、まったく人をバカにした話である。 まあ、首相が勝手に辞めてしまったというより、党の延命のため、 党の総意で、この時期に決行したと考えるのが自然だ。

 そんな茶番に騙されるほど国民は愚かではない、と良識あるあなたは 思うかもしれない。だが、つい3年ほど前、郵政を民営化すれば未来はバラ色になるかのような 中身のないアジテーションに騙され、熱狂してしまったのは、多くの国民である。 郵政事業が民営化されて、我々の生活にとって何か一つでも良かったことがあるのか。考えてみて欲しい (
※注)。

 街頭で、新総裁には誰が相応しいと思いますか?などというインタビューが行われているようだが、 自民党員ではない我々には選挙権がないので、そんなことを聞かれたってまったく無意味である。 自民党内部の話を国民的関心事であるかのように扱うマスコミにも責任がある。

 もちろん次期総裁が(選挙までの短期間かもしれないが)首相に就くわけだから、 実際のところ国民に関係のある話ではある。 本来は、その先にある政権への審判も含めて、今後の政治のあるべき姿について 皆で議論すべきなのである。

 選挙後に大きな政界再編(シャッフル)があるという識者は多いが、それもまったくおかしな話である。 我々国民は、この人なら、この政党ならと信頼して一票を投ずるのに、 選挙が終わってみたら、自分の投票した議員が他党に移ってしまったなんて事態になるなら、 いったい何を信じて投票していいのか分からない。 そう考えると、選挙後に宗旨替えしそうな人には投票してはいけない。

 自民党の中にも、民主党の中にも、政治思想的に相当異なる人たちが同居しているから、 いっそのこと近い人同士が組んだ方がいい、という意見があるが、 私はそうは思わない。一つの政党の中に多様な意見があるからこそ、 極端な暴走を防げるのだ(昔の自民党が安定していたのは、まさにそのためだったといえる)。

 単一の政治思想の下に結集するのが政党なのだ、という正論は承知している。 だがそれは、民主主義がちゃんと成熟した国において意味のある話であって、 最も声の大きな人の扇動に多くの国民が簡単に騙されてしまうようなこの国では、 思想の近い人間が集まって大きな団体を作るのは危険だと、私は思う。 党内で誰かが暴走しようとしたら割れてまとまらない、というくらいのほうが、 健全なのではないか。

 いずれにせよ、年内には大きな変化が訪れるだろう。 いつ選挙になってもいいように、議員たちの言動をつぶさに観察しておきたい。


※注: 郵便貯金という、いわば別枠に置かれていた膨大な資金を 民間市場に開放することの意義は大きい。ゆうちょ民営化のメリットはまさにそこにあるわけだが、 米国が強硬に郵政民営化を迫っていたという事実をみれば、 誰が一番得するのかは容易にわかる。
 国民レベルの目線でみると、他に金融機関のないような地方で、 民営化されたゆうちょ銀行が支店を廃止するなどすれば、 その地域の人たちは大変困る。 郵便事業についても、もし営業区域の縮小、合理化等が起こると地方は真っ先に割を食うことになる。
 このように、民間企業ならば不採算地域となるエリアの営業については、 やはり国民全員が税金という形で支えるべきではないか(今言っても遅いが)。 何でもかんでも民営化すればうまくいくなどというウソに騙されてはいけないのである。
 民営化に際して、全国の郵便局ネットワークは維持すると説明されていたが、 果たして我々利用者の利便が著しく低下するような事態は本当に訪れないのか。 少なくとも今のところ、サービスが向上した、便利になったと感じることは一つもない。 これからも厳しく見守ってゆきたい。

 今さらながら郵政民営化の話をここで取り上げたのは、あの時と同じような茶番を、 今また自民党が繰り広げようとしているからである。 何かを騒ぎ立てている時には、騒がれたくない別の何かが隠されているから、 注意した方がよい。

2008年9月19日
 辞めたら済むらしいよ、偉いセンセイは。


 太田農水大臣辞任。

 やはりというか、絶妙なタイミング。辞めなければ世論の自民党への風当たりは どんどん強くなる。だから、辞めざるを得ない。 しかし、どうせもうすぐ終わるのだから、一足お先に失礼しました、って感じですね。

 この国の偉い人たちの常識では、 辞めれば責任を取ったことになるらしいが、まったくお気楽なものだ。

 たとえば私が仕事で大きなミスをして、 クライアントから責任追及されたとする。 で、「ごめんなさい。もうこの仕事辞めるから、許して」 なんてことができるのなら、そんなに楽な話はない。

 偉そうな言い方を許していただけるなら、 私はすべての責任を一人で背負って仕事をしているから、 どこまで行ったって、その責任から逃れることはできない。 「ごめんなさい、責任者交代するから許してネ」なんてマネはできないのだ。
 政治家さんは、ずいぶんお気楽な商売だな、と感じる。 民間であれば、辞めればそれで収まるなんて、 そんな甘い世界はない。

 と、ここまで考えて気づいたのだが、民間でも、 大手企業になれば、責任をとって社長辞任というシーンを何度も見たことがある。 つまり、この国では、大きな権力を手にした人間にのみ、 辞職すれば無罪放免という切り札が与えられているのだ。 ああ、嘆かわしい。

2008年9月26日
 中山発言要旨


 麻生内閣で国土交通大臣に任命された中山成彬氏の一連の発言が波紋を呼んでいる。 政権への影響という観点から問題視する向きが多いが、 政治家として、いや社会人として基本的な認識や倫理観を欠いた、 重大な差別発言のオンパレードであり、見過ごすことはできないと私は思う。

 思想信条の自由は保障されなければならないから、個人としてどのような考えを持とうが、 それは尊重されなければならない。ただ、国会議員は我々国民の投票という意思によって はじめて職を得ている人たちである。

 今後の参考とするために、一連の発言の要旨を掲載し、 中山氏がどのような思想的バックグラウンドを持つのかを明らかにしておきたい。

<成田空港について>

(2本目以降の滑走路がなかなかできないことに関して)
 1車線がずうっと続いて日本とは情けないなあと。 「ごね得」というか、戦後教育が悪かったと思うが、 公のためにはある程度自分を犠牲にしてでもというのがなくて、 自分さえよければという風潮の中で、なかなか空港拡張もできなかったのは大変残念だった。
<海外からの観光客の誘致を巡って>
 外国人を好まないというか、望まないというか、日本はずいぶん内向きな、 「単一民族」といいますか、世界とのあれがないものだから内向きになりがち。 まず国を開くというか、日本人が心を開かなければならない。  
<大分県教委の問題に関して>
 ついでに言えば、大分県の教育委員会のていたらくなんて日教組ですよ。 日教組の子どもなんて成績が悪くても先生になる。だから大分県の学力は低いんだよ。 私は(文科相時代に)なぜ全国学力テストを提唱したかと言えば、 日教組の強いところは学力が低いのではないかと思ったから。現にそうだよ。 調べてごらん。だから学力テストを実施する役目は終わったと思っている。

 空港問題に関しては堂本千葉県知事、小泉成田市長らが、 単一民族発言に対してはアイヌ民族団体・北海道ウタリ協会の加藤理事長が 抗議に訪れ、大臣はこれに応対し、発言撤回の上、謝罪をしたという。
 一方、日本教職員組合の高橋中央執行副委員長らの抗議に対しては、 応対をしなかったという。

 そもそも差別発言を投げかけられたほうが時間と費用を使って抗議に行かなくてはならない ということ自体、非常に嘆かわしい。

 大臣は、「言葉足らずだった」 「私人としての発言と公人としての発言は区別すべきだとあらためて認識させていただいた」 と述べ、一連の発言は「誤解を招くと思い撤回した」という。

 誤解を招く・・というが、誤解など招いていない。 中山氏の本音がどこにあるのかというのが、よくわかった。

 自分の発言が正しいと思うのなら、撤回などしなくてよい。 我々有権者は、それを前提に投票行動を決めるだけだし、 内閣への支持不支持も、こういうことを材料に判断するまでだ。


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