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2016年10月



2016年10月22日
 単に不適切発言で片付けられる問題ではない


 米軍のヘリパッド移設工事の現場で、フェンスをつかんで抗議活動をする市民に向かって、機動隊員が 「どこつかんどるんじゃ、ぼけ、土人が」と発言し、問題となった。この隊員は、大阪府警から派遣された20代の男性で、 ネット上の動画サイトにその様子が公開され、発覚することとなった。 また、別の機動隊員が「黙れ、シナ人」と叫んでいる様子も投稿され、これも大阪府警の隊員であるという。

 たいへん許し難い差別発言だが、これに対して大阪府の松井一郎知事は、自身のツイッターで 「ネットでの映像を見ましたが、表現が不適切だとしても、大阪府警の警官が一生懸命命令に従い職務を遂行していたのが わかりました。出張ご苦労様」と書き込んだという。

 松井知事のこの投稿に対し、大阪府庁前では多くの市民が抗議に訪れ、発言の撤回を求めている。 当然のことだろう。

 当の松井知事は報道各社の取材に応じ、「表現は悪かったし、反省すべきだと思う」と述べた上で 「(発言した)彼自身、命令に従って沖縄のために無用な衝突が起こらないように職務を遂行しているわけで、 あまりにも個人を特定されて、大メディアも含めて徹底的にたたく。これやり過ぎでしょう」と述べた。 さらに、「もともと混乱地で、無用な衝突を避けるために、警察官が全国から動員されている。 じゃあ、混乱を引き起こしているのはどちらなんですか」と述べた上で 「反対派の皆さんもね、その反対行動、あまりにも過激なんじゃないか」と発言。

 ここまで書いてきて、私はもう本当に怒りに震える思いなのだが、 この松井氏の発言、態度に、沖縄への根本的な差別意識、権力に抗う者への侮蔑、相手を理解しようともしない傲慢さが すべて表れている。

 「機動隊員の発言はまずかったとしても、職務は遂行している。職務まで否定されるべきではない。 だから、分けて考えるべきだ」とも松井氏は発言しているが、人権を無視したこの機動隊員の行動は、 それ自体が職務を真っ当に遂行しているなどとは言えない。行動すべてが否定されてしかるべき暴挙なのである。

 「市民もむちゃくちゃ言っているのだから、警官だけ責められるのはおかしい」といった発言も松井氏はしているのだが、 そもそも両者は同等な立場ではない。警官は力尽くで市民を排除しても、そればかりか、少々の暴力を働いても、 それが職務だと言えば許される。一方、市民は少しでも手を出そうものなら、公務執行妨害で逮捕されかねない。 だから、強い口調で抗議をするしか手立てがないのだ。

 そもそもこのような混乱を引き起こしている責任は、沖縄の民意を一顧だにしない政府与党の側にある。 大阪維新の会に所属する大阪府知事は、自民党に負けず劣らず、権力を笠に着た、差別意識を隠そうともしない 横暴な政治家である。この件を人権問題と捉えるべきではないなどと発言した、自民党の鶴保議員などももちろん同罪だ。

 こういう政治家が増えれば増えるほど、この国は、弱い者、異端と認定された人間を虐げ、 口汚く罵っても責められないばかりか、そういう権力者を平気で支持する人間も増えることになる。 昨今の風潮、ネット上のヘイト記事などを見ていて、実感する。

 こんな権力者の暴走を、決して許してはならないのである。



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