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2017年10月


2017年10月6日
 それぞれの誤算


 政治状況が混沌としてきた。

 ニュースの街頭インタビューなどを見ていると、 「よくわからない」と答えている人が少なくないが、よくわからないのではなく、 わかろうとしていないのではないか。ニュースをちゃんと聞き、新聞(できれば複数紙)をちゃんと読んでいれば、 政治家の動きと、その背後にある思惑は、ある程度透けて見えてくるはずだ。


 野党がゴタゴタしているうち、新党が整わないうちに選挙をすれば勝てる。 しかも、最も掘り返されたくないダブル学園問題の追及からも逃げることができるとの算段で断行した衆院解散だが、 与党の側も、野党の側も、予期せぬわなに迷い込んでいる。

 今しかないというタイミングで解散に打って出た首相は、負けるにしても大敗はしないだろうと計算していたに違いない。 ところが、希望の党の突然の結党で、その目論見は崩れた。 まさか小池都知事がこんなに早く仕掛けてくるとは、思いもよらなかったことだろう。

 もう民進党の看板では戦えないと判断した前原代表は、 小池都知事を焚きつけ、新党に丸呑みしてもらう交渉を何とか成立させたと思いきや、 全員は受け入れないと言われてしまった。 一時はしてやったりと思った前原氏は、一転、間抜けな姿を晒すことになり、 党内の大きな反発と、冷たい世論を呼び起こすことに。

 丸ごとではないにせよ、民進党を飲み込めば、自分たちに足りない金と組織を引っ張り込むことができ、 足元を強化できると考えた小池氏だが、 「民進党の看板を掛け替えただけ」との批判を恐れるあまり、独自色を打ち出しすぎた。 安保法と改憲を踏み絵にしたことで、民進党リベラル派を激怒させ、立憲民主党を誕生させてしまった。 これにより、現政権に批判的な層と無党派層の票が割れることが予想され、希望の党の予定どおりには行かなくなってしまった。

 ではこのゴタゴタが、現与党に有利に働くかといえば、そう簡単でもないだろう。 小選挙区では確かに漁夫の利で自民・公明が議席を取るケースは多いだろうが、 比例はまったく読めない。

 希望の党が打ち出した政策は、一見すると現与党とは大きく違う部分もあるが、 その本質においてあまり違いはない。そもそも、小池氏が本気で原発ゼロに取り組むなどはおよそ信じられないし、 消費税を凍結するといっても、財源の捻出は至難の業である。 選挙後、自民と希望のどちらが多くの議席を取るかによって、どちらが主導するかの違いはあれ、 何らかの連携をするであろうから、有権者にとっては既に結果が見えているとも言える。

 どの党の議員も、結局自分の議席が確保できるかどうかだけが関心事であって、まったく国民の方を向いていないことが、 こんなにも明らかになってしまった。政治不信の払拭など、夢のまた夢であろう。 その中では、立憲民主党の主張は筋が通っているからと、支持が少し広がっているのもわかる気がする。

 結局、昔からずっとぶれていないのは、 共産党の政治理念と、公明党の何が何でも与党にしがみつく姿勢くらいのものであろう。

 「もり」「かけ」問題を発端に、今なら首相「おろし」ができると考えた人が、野党だけではなく、 与党の中にも相当数いたらしい。だから、このタイミングでの解散を、首相以外の多くの与党議員も歓迎しただろう。 野党の追及が「ざる」だと揶揄されもしたが、そもそも政治家の世界なんて、 「きつね」と「たぬき」の化かし合いみたいなものだ。



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