時事ネタコラムのページ [利酒日記別室]

2020年11月


2020年11月2日
 1票でも上回れば、勝ちか?


 「大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票」いわゆる大阪都構想の住民投票が11月1日に行われ、 賛成675,829票、反対692,996票で否決された。

 2015年に行われた投票で一度否決されているのにもかかわらず、 その後の府知事選、大阪市長選で大阪維新の会が勝利したことから再度の住民投票となったものであり、 二度にわたりわずか1万票台という僅差での否決となった。

 一度否決され、もう諦めると言っていたものを蒸し返して二度も多額の税金を使って投票を行ったことの是非は、 今さら問わない。しかし、二度の投票で市民の間に分断を生んでしまったことは、大きな禍根となった。

 主導した大阪維新の会がよく言っていることに、選挙で勝てば、それが民意であり、 政治に関して何か主張をしたければ、選挙に出て勝って多数派となればいいという考え方がある。 それが民主主義だともいう。だが、私はその考え方は非常に危険であると思っている。

 多数決の原理は民主主義の根幹だが、勝てば横暴が許され、負けた側の意見は無視していいということではない。 多数派は少数派との間に妥協点を見つけ、その意見を組み入れなければならない。 むしろそのプロセスこそが民主主義そのものであると、私は考える。

 今回の得票率は反対50.63%、賛成49.37%。この結果をもって、反対派の完全勝利とはとても言えない。 「反対」が民意なのだから、もう都構想のことはきれいさっぱり忘れ去っていいということではないと思う。 大阪市を残した上で、より良い将来への政策について、今回の賛成派も含めて話し合っていく必要がある。

 投票した市民一人一人は、大阪の将来を真剣に考えて意思決定したと思うが、 結果判明後のネット上の反応などを見ていると、直接関係はないと思われる人たちからの無責任な発言も散見される。 いわく、大阪は主に既得権を守りたい人たちによって、未来が奪われた。もうこれで大阪は過去に逆戻り。 大阪は没落していく。あとで後悔しても自業自得。ざまあみろ、等々。

 大阪の未来を真剣に考えている人なら、決してそんな発言はしないはずである。 おそらく、"維新的"なものを支持し、それに反対する人たちを敵と見なし、罵詈雑言を浴びせているだけであろう。 大阪の未来を考えているのではないそういった発言は無視すればいいとはいえ、 こういう所を見ても、今回の投票はイデオロギー的対立を激化させてしまったようである。

 私は大阪市民ではないが、隣接市の住民である。隣接市であるから、投票権はないけれども、完全に無縁ではない。 5年前の投票の時も、今回も、都構想の内容には賛同できず、反対の意見を当サイトでも表明してきた。

 東京都の特別区制度は、戦中戦後の混乱期に東京市の権限を弱めるために、東京市という自治体を 自治体以下の存在である複数の特別区(地方自治法上、地方公共団体とはみなされていない)にしたもので、 現在も続く特別区に与えられた権限と財源は非常に中途半端なものとなっている。 それゆえ、千代田区などは千代田市構想を掲げ、独立したがっている。 つまり、現在の制度では千代田区民は割を食っていると感じているのだ。 固定資産税などの税収が一旦都に召し上げられ、その後に配分されるので、独立した自治体としては機能していない。

 東京が発展しているのは、ひとえに政治経済の中心地であるからであって、決して特別区制度のためではない。 特別区になれば豊かになるわけではない。

 国会における与野党対立を見ていてもそうだが、政治的に対立し、 与党の政策を野党が批判すると必ず出てくるのが、「野党は批判ばかりしている」「対案を出せ」という声である。 これも、民主主義の何たるかを履き違えた暴言の一種であるが、まずは提案された内容を精査し、 容認できなければ批判するのは当然のことである。また、野党には情報も予算も与えられていないから、 対案を示すことも容易ではない。それを知った上での、あえての暴言のように私は感じる。

 都構想にずっと反対してきた私が考えているのは、 大阪市は解体するのではなく、特別自治市を目指すべきであるということ。そうすればいわゆる二重行政は完全になくなる (堺市など他の市町村はどうなのかという問題は残る)。 これは5年前からの持論であり、都構想へのよりベターな対案である。 そして、二重行政が問題と言うなら、他の大都市(横浜市、名古屋市、福岡市・・) も大阪のように今後のあり方を考える必要がある。

 そもそも大阪市を含む大都市のいくつかは、都道府県から独立した「特別自治市」を目指した歴史がある。 それを都道府県は絶対に認めず、妥協案として今の「政令指定都市」制度ができた。 だから、都道府県の権限の一部は委譲されているが、都道府県と対等の立場にはなっていない。

 この中途半端な政令市のさらなる発展を考えれば、もう一度「特別自治市」の構想があってもいい。 私はそう考える。

 もちろんこの案にも欠点はあって、大都市と周辺との格差が拡大するおそれがある。 だが、それを言うなら、既に首都圏と他の地方との間には、絶望的な格差がある。 地方分権を真剣に進めたいなら、各地域が広域行政などで自立できる方策を立てなければ仕方がない。

 大阪のより良い未来を考えるなら、思想的対立はもうやめて、皆で話し合える環境をつくっていかなければならない。

 僅差でも勝ったのだから、負けた側の意見など聞かなくていいと考えるのは、民主主義の否定である。 市民の約半分が都構想に賛成したのだから、その人たちも納得できる別の道を模索しなくてはならない。 ある案に賛成であれ反対であれ、街の将来を真剣に考える人たちは、皆仲間なのだから。


2020年11月8日
 なんとなく過ぎていく、6,000日


 2004年6月6日から続いている当サイトの連続無欠勤更新記録が、本日で6,000日を迎えました。

 ここまでくると、もう何の感慨もなく、めでたくもないけれど、改めて過去を振り返っておきます。

 2004年といえば、平成16年。平成時代のほぼ真ん中でした。 元号をまたぐという経験は、そうあることではないけれど、 長く生きていれば必然的に経験することでもあります。 昭和に生まれ、平成の三十余年を通り越してきた私ですが、 平成の間にいくつかの転換点を経験してきました。

 新卒で勤めた会社を辞め、人生をかけたチャレンジに突入。 受験浪人の末、数年を経て目標を達成。現在の職業の下積み時代に結婚し、 息子が生まれ、そして独立開業。それと前後して、当サイトを2000年に立ち上げます。

 サイト開設5年目にあたる2004年から、21年目となる今年まで休まず運営を続けてきたわけですが、 気づけば平成が終わっていました。

 年齢的に、こんな毎日をあと何年続けられるのかわかりません。 健康状態に依存するわけですが、幸いなことに、これまで大病をしたことがありません。 ところが今年は、誰も予想だにしなかった感染症の流行で、健康に対する不安だけでなく、 仕事が減り収入減にも直面しています。 ただ、ありがたいことに、当サイトを運営するためのお酒を購入する程度の余裕はまだあります。 継続には、健康面、経済面の維持が前提となります。

 来春には、離れて暮らす息子が最後の学校(大学院)を出て、社会人になることが決まっているため、 経済的な負担が大きく減ることになります。いわば私自身の第2の人生が、いや、これまでの経緯を考えれば、 第3の人生が始まると言ってもいいかもしれません。

 7,000日を目指して、明日も明後日も、同じことを続けてまいります。



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