葡萄酒狂徒の日常茶飯事(ちゃめしごと)
No.11〜20


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2001年7月14日
No.11 お茶といったら・・・

  ペットボトル入りの緑茶が流行である。品質の良さもさることながら、各社しのぎを削ったCM合戦も効を奏しているようだ。
  コンビニで、なにげなく「お〜い お茶 新茶(期間限定・緑茶)/伊藤園」をみつけ、すぐさま購入した。
  グラスに注ぐと、今までの緑茶飲料とは明らかに違う淡い色。 まさに新緑をイメージする色で、この色を出したことだけでも実はかなりのこだわりと技術が隠されているのではないかと想像する。 味わいもさわやかで、まったり感や深みや旨みを売りにする他の緑茶飲料とは一線を画している。この無垢な清涼感は他に類を見ない。 まるで緑のそよ風を飲んでいるようだ。 「緑茶飲料ここに極まれり」の感がある。英国式紅茶の対極にあり、また、中国のプーアールやウーロンなどとも違う軸にある。 まさに日本的味覚の素晴らしさ。
  やはり緑茶といえば、伊藤園だ(※注1)。このキャッチフレーズに間違いはない。CMで、松嶋菜々子サンや内山理名チャン(※注2) がにっこり微笑んで飲んでいるお茶は確かに美味しそうだが、あえて派手な宣伝をしない伊藤園には、むしろ王者の風格さえ感じる。 期間限定品だからといって特別視するつもりはないが、 新茶であるからして期間限定なのは致し方ない。今のうちに十分楽しんでおこう。

※注1:伊藤園は、コーヒーや紅茶飲料も、まったく宣伝はしていないが、かなりの実力である。 最近、小さなペットボトル入りの「アイスコーヒー」と「アイスティー(アールグレイ)」が発売されている。 いずれも素晴らしい出来ばえだ。

※注2:この緑茶CMの女王、2人とも私は大好きだ。以前、確かKIRINから出ていたNATURALSという緑茶飲料のCMには、 当初My Little LoverのボーカルAkkoが出ていて、後に森高千里に代わった。なぜ、緑茶飲料のCMには、 うれしいことに、私の好みのタイプばかりが出てくれるんだろう。あ、GREENSの竹内結子?は、好きでも嫌いでもないぞ。

2001年7月25日
No.12 恋の予感!?

 その衝撃は突然やってきた。
 いや、今のこの平凡な毎日に何一つ不満などはない。ただ、毎日毎日同じ顔に向き合っていると、初めの頃に感じた魅力が だんだん薄らいで行くことも偽りようのない事実。
 今のこのパートナーにあんなに惚れ込んで、時を共有するようになり、それが自分の誇りでもあった。 この気持ちが変わることなどないと自分でも信じて疑わなかった。少なくともあの美しい容姿を目にするまでは・・・。
 どうしても手に入れたい。この気持ちは・・・。
 憧れの君の名は、「SHARP MEBIUS MURAMASA」。いや、今でも私は自他共に認める「バイオラー」。 バイオノートの新機種が発表されるたび、次はあれにしようと考えて、にやにやしてきた。なのに。
 12.1inch・XGA表示のTFT液晶登載、いわゆるB5サブノートパソコン(現愛機のVAIO NOTE 505と同じ)でありながら、薄さ1.66cm、重量約1.3kg。 バッテリー駆動時間も長く、モバイル性は抜群。
 本当のパソコンマニアに言わせると、多分バイオもメビウスも「おもちゃ」と言われるだろう。それはわかっている。 小さな箱の中に部品を詰め込んでいるのだから、基本性能を重視しているとはお世辞にも言えないことは百も承知。 でもこの気持ちはどうしようもない。
 ああ、しばらくは眠れぬ夜を過ごしそうだ。今はただ、WINDOWS XPが標準装備になるまでは我慢しようと、 自制するだけで精一杯。
 バイオラー失格の私を、全世界のバイオラーの皆さん及びソニー関係者の皆さん、どうか大目に見てやってください。 この熱はすぐ冷めるかもしれませんから。

2001年9月4日
No.13 嗚呼、成城石井

 その名前を聞くと、ある時代を思い出す。
 20年程前、学生だった私は、小田急線「成城学園前」駅北口近くの珈琲店でアルバイトをしていた。その店のすぐ近くにあったのが、 「スーパー石井」だった。今でこそ、「成城石井」という名は、少なくとも東京ではかなり知られるようになったが、その当時は、そこにただ1店舗しかない地元密着のローカルな お店だった。場所柄、輸入高級食材を豊富に取り揃えた、ちょっとリッチなスーパーマーケットであったが、あまり目立つような存在でもなかった。
 同じ駅前商店街の"ご近所さん"だった我々は、サンドイッチに使う卵がなくなったり、アイスティに添えるレモンがなくなったりすると、 店の制服姿のまま「石井さん」に買い物に行ったものだ。
 あれから月日が流れ、紆余曲折があって、関西に本拠を置くようになった私。
 きのう、いつも利用している阪急電鉄「梅田」駅2Fの改札脇に何か新しいお店ができているのを発見した。 一瞬、コンビニのように見えたその店の入り口横のガラス壁に書かれた文字を確認した時、体に電撃が走った。「スーパーマーケット成城石井」。 決して大阪で見ることなどないと思われた店名が、そこにはあった。
 人は、歳を重ねるたびに、過去を振り返ることが多くなるという。進んでノスタルジーに浸りたいと思うほど老成はしていないと自覚する私でも、 その文字は、強引に私を記憶の中に連れて行った。
 「成城学園前」の駅の反対側(成城1,2丁目側)に、深夜スーパーのはしりとも言える「丸正」があったこと。駅建物の中には「スーパー小田急OX」があって、街の雰囲気からはちょっと浮いていたこと。 朝からバイトの日には、出勤前によく「森永ラブ」でハンバーガーをほおばったこと。 どうせ予定などない12月24日の夜に、しぶしぶという振りでバイトに入った時には、閉店後皆で居酒屋「村さ来」に行って、なぜか異様に盛り上がったこと・・・。
 そういえば、働いていた店には有名人が結構来てくれたなあ。常連客の1人だったベテラン歌手のFさん。近くにお住まいで、たまにご主人と一緒にいらした大女優のYさん。 昔々私もファンだった成城大学出身の歌手Iさんは、実際にお会いしたらびっくりするくらいきれいだった。そんな有名人だけでなく、毎日のように来てくださる常連の方々の中には、 「キミは実にこういう仕事に向いている」と言ってくださった方もあった。
 コーヒー豆の種類や焙煎について実に楽しそうに教えてくれた店長のKさん。初めてトレンチを持った私に、背の高いジュースグラスの運び方とか、 オーダーの通し方を丁寧に教えてくれた頼れる先輩女性のOさん。お互いに理屈っぽくて、よくくだらない議論を戦わせたNくん。 しっかりもののお姉様として、皆から信頼を集めていたIさん。ひょうひょうとした自由人のHさん。「私って不良主婦なんです」と言いながら、バイトがひけた後よく食事とかに付き合ってくれたSさん・・・。 すべてが昨日のことのように覚えている。
 こんな数々の記憶を呼び起こしてくれた「成城石井」という文字。実はまだ、梅田駅のそのお店に足を踏み入れてはいない。もう少し記憶の世界で遊んでから、 あの入り口をくぐってみよう。

2002年4月11日
No.14 私のペイオフ対策

 日中、電話をとる。

電話の声 「あのぉー、わたくしぃ、田中と申しますがぁ、社長さんいらっしゃいますかぁ?」

(ほらきた。いつもの金とか商品取引とかの売り込みTELだ)

私    「わたしですが、何か?」

(注:私は法人の代表ではないから、正確には社長ではないが、面倒なのでYESという。 それにしても、この返答は"2ちゃんねる"風だな)

電話の声 「以前にもぅ、お電話したんですがぁ、覚えていらっしゃいますかぁ?」

(いっぱいかかってくるのに、いちいち覚えているかって。まあ相手は若そうな女の子だし、適当に相手しておこう)

私    「ああ、投資の話、ですよね?」

電話の声 「いえ、違うんですぅ。きょうはぁ、ペイオフの対策ぅ、社長さんのところではぁ、 どうされてるんですか、ってお話なんですがぁ。」

(これもよくある切り口だ)

私    「でも結局、先物とか売りたいんでしょ?」

(こういう電話は、早いところ本題に入って、すぐに切るに限る)

電話の声 「いえ、きょうはぁ、ファンドのお話なんですぅ」

私    「ファンド? 興味ないし。」

電話の声 「明日とかぁ、お近くを通った時にぃ、ちょっと社長さんにお会いしちゃダメかなっ、と思って・・・。」

(「お会いできませんか」と言わずに、「と思って・・・。」とフェイドアウトするあたり、敵もあっぱれだ。 思わず、「ダメじゃないよ」と言いたくなるではないか。だがここは心を鬼にして)

私    「今日も明日も忙しいんで。ごめんなさいっ。」

このあと相手も執拗に食い下がるが、強引に、忙しいからと断る。

電話の声 「そうですかぁ。お忙しいんですね。わかりました。お仕事がんばってください!」

(お前に言われなくても頑張るよ)

 相手が若い女の子だと、つい話を聞いてしまうが、いつも出来る限りそっけなく返答するようにしている。
 が、最近ちょっと反省もしている。もう少し関西人らしく、笑いを取ったほうがいいかなあと。
 例えば、こんなふうに。

相手   「ペイオフ対策、どうされてますか?」

私    「ペイオフ? それなら4大グループに分けてるから。あ、4大グループて言うても、別に、 B'z、GLAY、モー娘。、DRAGON ASH、とかやないよ。ヒットチャートと違うからね。4つの銀行に、 1万、1万、1万、1万と分けて、はい終わり。それぞれまだ999万円ずつ余裕がある!」

 ああ、こんなしょうもないこと考えてるようでは、エセ関西人と言われても仕方ない。

 私のペイオフ対策は、もう少し気のきいた「返し」ができるように、ネタを考えておくことである。
 それとも、今度電話がかかってきたら、一言で切ってやろうか。やはり2ちゃんねる風に。

 「DQN営業マン、逝ってよし!」

2002年4月24日
No.15 免許証の更新と講習ビデオ

 運転免許証の更新に行ってきた。
 警察署で視力検査をしたあと、免許証の郵送希望者は、交通安全協会に行って手続きをして、30分間講習ビデオを見て帰ってくださいと。 そう、私はゴールド免許なのである。丸一日、みっちりしぼられるようなことはなく、簡単に手続きは終わる。
 講習ビデオは、最初の方こそ実際の事故の映像が出てきたりするものの、あとはいたって穏やかなもので、 「優良運転者の皆さんが、ぜひ模範となって、交通事故を防いでまいりましょう」といった内容だ。 ゆとりを持って安全運転するドライバーが、対向車にニッコリと微笑みながら、道を譲る。譲られた方もニッコリと微笑み返す。 更に画面には、美しい緑の風景。排気ガスを減らし、地球にやさしいドライバーであるために、出来る限り車を控えましょう、というコメントが。 そして、「ぜひ次の更新の時も、優良運転者講習をお受けください」というメッセージとともに、優良運転者表彰の案内も流れる。
 最初は、正直言って、たいくつだなあと思いながら見始めたビデオだったが、終わる頃には、とても穏やかな、やさしい気持ちになっている自分に気づく。 なかなかあっぱれなビデオである。これを見た帰りにスピード違反で捕まるような人はいないだろう、と思う。うれしいひと時であった。
 帰り際、私は、交通安全協会のオバチャンに「どうもありがとうございました」と、ガラにもなく笑顔で挨拶してしまった。
 そして帰り道、降り始めた雨の中、傘をさして徒歩で帰る、優良歩行者の私であった。そう、私はペーパードライバーなのだ。

 教則本をもらって帰って来た。これを見ていると、免許を取る時の勉強を思い出す。
 道路標識、皆さんは、ちゃんとわかるだろうか。

「この電車はどっちへ進むでしょう」 「このタイヤの構造って、どうなってるの?」
「時にはヤリも降ります」 「♪赤い靴〜はいてた〜女の子〜」
「せこいバーゲン」 「おいおい、値上げかい」
「このキャップは手で開けられます」 「棚からボタ餅」
「おとうさん、肝心のこいのぼりは?」

2002年8月9日
No.16 マクドナルドのゆくえ〜王者凋落の予兆〜

 ハンバーガー59円を多くの消費者が歓迎しているという。まったく当たり前の話だ。
 お金を出す人にとって、1円でも安いほうがうれしいに決まっている。 しかし、そんなところで勝負をしだしたら、どんどん泥沼にはまってゆくだけだ。
 平日半額を一旦やめたあとの「再度の方針転換」だと言われているが、事はそんなに生易しいものではない。 この選択は、絶対にやってはいけないことだったと、私は思う。
 「再度の方針転換」などではなく、これは最初から周到に仕組まれた作戦だ、と見る向きもある。 59円という金額を実現できる環境が整うのを以前から待っていて、満を持しての戦略なのだと。
 私は、その見方には賛成しない。今回の方針転換は、他に選択がなかった、いわば背水の陣ではないかと思う。
 例えばモスバーガーのように、かたくなに手作りや自然志向にこだわり、堂々と高い値段を維持することができるのは、 品質に自信があるという理由だけではない。そういう理念を実践できる組織ができているということだ。 マクドナルドのように巨大化してしまうと、日々必要とする経費が莫大になる。一般家庭で言えば、一人っ子の家と、 子供が15人いる家の違いのようなものだ。15人がお腹を空かせているという現実がある以上、 崇高な理想など語っている暇はない。
 もうデフレは終わりだ、と藤田会長が宣言して平日半額を終了した時、私は、「さすが」と思った。 なのに、こんなに早く方針転換してしまったのは、背に腹は代えられないからだろう。

 さて、それでは今後はどうすればいいか。

 どうしようもない。というのが、私の意見だ。つまり、悲しいけれど、 もう凋落の方向へ向かうしかないのではないか。今からモスのような方向に転換できるはずもない。 今の売上を維持するためには、身を削り続けるしかない。そのためにクオリティが犠牲になることもあるだろう。 するとますます値下げしなくてはならない。ずぶずぶと地獄の底まで沈んでゆくようなことになる。
 起死回生を図ろうとするなら、店舗数を思い切って半減して、社員も半減するくらいの荒療治が必要かもしれない。 でもそんなことをすれば、ますますブランド力は落ちる。結局、今の安値路線を続け、質を落としてコストダウンするしかないだろう。
 「マックトーキョー」を導入して、収益力アップをもくろんでいるが、残念ながら、この戦略はとても成功しそうには思えない。 消費者は、もうマクドナルドに質を求めてはいないからだ。
 一部店舗で行なっている、携帯に割引券を送信するとか、店内でネット接続ができるようにするとか、そういうサービスを強化すべきだろう。 つまり、従来の外食産業から脱皮することが、生き残りの道ではないだろうか。


 関西でも最近「マックトーキョー」メニューが増えてきたが、実際売上はどうなんだろう。 だいたい、関西人には受け入れ難い名前だ。
 「なんで大阪でマックトーキョーやねん。マクドおおさかにせえ!」という声が聞こえてきそうである。

2002年8月23日
No.17 ピンクの電話

 女性漫才コンビの話ではない。昔よく喫茶店などにあった10円玉専用電話機の話でもない。 ましてや、掛けるといかがわしい声が聞こえてくるような、○×ダイヤルでもない。
 ピンク色の携帯電話の話である。

 現在私が愛用している電話機は、折り畳み型で色はシルバー。おそらく最も普及しているタイプではないだろうか。 老若男女、誰が持っても違和感がない。これが、黒や紺となると、少し男性的な感じになるが、女性が持ってもおかしくはない。
 ところが、男性がピンク色の電話機を持っていると、少なからぬ違和感がある。 しかし、電車の中などで、時折ピンクの携帯を持つ男性に出くわすことがある。
 いや、別に悪いということはない。性別による固定観念など、もはや時代遅れだ。だが、それでも、彼らに聞いてみたい。 なぜ、ピンク色の携帯を選んだのか。
 考えられる答えとしては、

 1.昔からピンク色が好きだから。(それなら納得)
 2.彼女とお揃いの携帯を持たされている。(ちょっと気の毒だが微笑ましい)
 3.最新機種をいち早く欲しかったが、シルバーや白がなく、ピンクなら「即日渡し」できると言われ、 勢いで買ってしまった。(その気持ち、わからなくもない)
 4.昔から"ピンクの電話"ファンだから。
 5.上記から"の"を取ったやつ。

 ピンク色の携帯を持つサラリーマンにもし尋ねたら、こんな返事が返ってくるかもしれない。

 「ウチの会社のコーポレートカラーがピンクで、全員持たされてるんです。」

 お勤めご苦労さま。プリクラを貼ってるのかと思ったら、会社のロゴだったりして。


 DoCoMo愛用者を「ドコマー」といい、J-PHONE愛用者を「ジェイフォニスト」といい、 au愛用者を「エーユーザー」というらしい。(出典:かなり前の「ウィークリーまぐまぐ」)
 私はもう7年以上、ジェイフォニストだ。
 今でこそ、写メールの躍進でメジャーになったが、デジタルホンと言われていた頃は、肩身が狭かった。 最近、ドコモショップに「写メールつきの携帯ください」という客が絶えないらしい。 ロッテリアで「マックシェイクください」というようなものだ(正しくは、ロッテシェーキ)。 あるいは、エクセルシオールで「アイストールラテください」というようなものか(正しくは、アイスカフェラテのミディアム)。

2002年9月29日
No.18 岡山で出会ったイタリアン

Ristorante Stellina  9月29日の日曜日、家族でふらっと岡山まで行ってきた。初めての訪問。山陽新幹線の"ひかりレールスター"で新大阪から片道48分。日帰り小旅行だ。
 日本三公園のひとつ、後楽園でスワンボートに乗ったあと、お腹がすいたので、偶然みつけたイタリアンレストランに入る。
 STELLINAというお店。オーダーしたのはパスタランチで、一つは「ナスとベーコンのトマトソース」。 もう一つは「ホタテとキャベツのペペロンチーノ」だ。
 まずセットの最初に出てきたサラダとパンのクオリティの高さに驚いたのだが、 なんといってもパスタがいずれも素晴らしかった。麺の歯ごたえはもちろんのこと、ソースがいずれも濃厚で、 ギュッと詰まった感じ。厚みのある味わい、そして素材の持ち味を活かした、しっかりした食感に満足。
 午後2時近かったが、店内は満席だった。最近オープンしたらしいのだが、既に地元の人気店となっているようだ。 スタッフの接客態度も非常に好感が持てた。偶然とはいえ、素晴らしい出会いに、思わず感謝。
 場所は、岡山市石関町5−18。路面電車城下駅から東(岡山城方向)へすぐ。
 食後、あてもなく街を散策し、地図でみつけた公園でしばし子供を遊ばせる。まるで日常生活の延長のように、見知らぬ街で時を過ごした。
 そしてそのあと、偶然、素敵な珈琲屋さんを発見するのだが、その話は、珈琲主義のページへ。

2003年3月2日
No.19 Why?県民性

 今回は食の話題ではない。テーマは県民性である。

 私のメインサイトの中に、「県民性」は本当にあるのか というコラムがあるが、これは、その続編と言ってもよい。

 今回、面白い本をみつけた。

 『すべての日本人は出身県で終わる』(矢野新一、角川書店、2002年)という本なのだが、 多くの人が真剣に腹を立てるだろうなあ、という内容なのである。

 同書では、犯罪系、崩壊系、出世系、娯楽系、とカテゴリー分けをしたうえで、 各テーマごとに該当する都道府県を取り上げ、解説をしている。特に興味をそそられるのが「犯罪系」で、 このような犯罪を犯しやすいのは何々県と書かれている。無論、犯罪発生率などの客観データを提示した上でのことだが、 著者独自の理由づけが面白い。

 同書の序文(『はじめに』)で、まず、次のようなことが書かれている。

 『例えば、猥褻犯罪やストーカー、ひったくりなどの犯罪は、全国どこでも同じように発生しているわけではない。 誤解を恐れずに言えば、地域ごとの気質により、起こるべくして起こっているのである。』(同書11ページ)

 犯罪に地域差があるのは事実だが、起こるべくして起こっている、とは言い過ぎではないか。そこまで決めつけられる 理由は、何も提示されていない。

 すべて取り上げるとキリがないので、犯罪系第3位の大阪の記述をクローズアップしてみよう。タイトルは、 『ジコチューの大阪人』である。

 『大阪はガラの悪い人が多く、夜の盛り場ではケンカは当たり前、殺人でも 笑い飛ばすところだ。』(同書19ページ)

 『大阪は自己中心的な人が多いのだ。第一、遠慮することを知らない。飛行機に乗っても、新幹線に乗っても、 必ず背もたれを倒すし、ディズニーランドでも、ハワイでも、大声でしゃべるから大阪弁ばかりが目立つ。 人のことより自分が中心、というより、そもそも「他人」を区別する発想がない。そのため、大阪では「あなた」 を「自分」というのである。しかも言葉がきれいではないから、地域のイメージまで泥臭い。』(同書20ページ)

 『大阪はマナーが悪いというより、マナーのない地域だから、電車はもとよりバスでも整列乗車することもない (もっとも、大阪でもよそものが多いニュータウンでは整列乗車しているが)。』(同書同ページ)

 これ、ユーモアとして笑い飛ばせるだろうか。 夜の盛り場でケンカが多いかもしれないが、『殺人でも笑い飛ばす』わけはない。 飛行機や新幹線で必ず背もたれを倒す、というのは笑ってしまうが、そんな統計を取ったとでも言うのだろうか。 著者の個人的な経験、あるいは思いこみに過ぎないだろう。

 言葉がきれいではない、というのは、単に著者の美的感覚に合わないだけであろう。イメージが泥臭かろうが、大きなお世話だ。

 次のような文章に至っては、その発想力にある意味脱帽してしまう。

 『大阪の人はコストパフォーマンス意識が強いから、喫茶店で紅茶を頼むことはない。 「どっちみち、紅茶ゆうたらリプトンのティーバッグなんやから」という発想なのだ。』(同書20-21ページ)

 『また、大阪では、母親と子供全員が茶髪や金髪の一家をたまに見かけるが、これは母親が髪を染める時、 ヘアカラーが余ったから、ついでに子供も染めているためだ。』(同書21ページ)

 面白すぎる。こういうのを読むと、「そうや、ウチも家族全員同じ色に染めてる」などと喜んでボケる大阪人は多いが、 これこそ愛すべき大阪人のキャラクターである。

 同書の後書き(『おわりに』)には、次のような文章もある。

 『この本は、地域を非難するとか、差別するものではない。 県民性の長所、欠点は、その人の問題ではない。』(同書226ページ)

 これは、例えば、「あなたは事実としてブサイクだ。いや、決してあなたを差別する意図ではないが。」 と言うようなものである。「あなたはあなたの両親に似ているだけであって、決してあなたの責任ではない」 という感じか。

 『また、県民性は、血液型のように性格を決めつけるものではない。同じ地域で生まれ育ったからといって、 みんな同じ性格ではない。』(同書同ページ)

 そんなの当たり前である。しかし、血液型だって、性格を決めつけているわけではないと思うが、 こういう一方的な解釈こそ、自己中心的というのである。

 私はここで個人攻撃をしたいわけではなく、ただ同書の面白さを伝えたいだけなのだが、 ここまで人に不快感を与えそうなことをあえて書き、進んで悪者になっている著者の意図はなんだろう。 面白おかしい読み物として読めばよいのだろうが。

 それにしても、この種の本で決して書かれていないことがある。それは、そもそも出身とは何か、という定義である。 生まれた場所なのか、一番長く過ごした場所なのか、ある特定の年齢の時に過ごした場所なのか。

 もし一番長く過ごした場所で判断するというのなら、私は大阪人であるから、 ひとこと言っておきたい。「リプトンティーバッグのどこが悪い」と。

2003年5月31日
No.20 讃岐うどんと関西食文化 -はなまるうどんの行方-

 我が街・江坂に、「はなまるうどん」がやってきた。 本拠地香川から東京へ殴り込みを掛け、 首尾よく渋谷で脚光を浴びたセルフスタイルの讃岐うどん店である。早速、行ってきた。

 まず、かけうどん(小)100円というのが目を引く。今の時代にマッチしたやり方で、 薄利多売店かと思いきや、実はそうでもない。100円は、いわば客寄せで、 他のうどんメニューを見ると、小280円、中380円、大480円というのが多い。 しかも、天ぷらなどのトッピングを乗せれば、簡単に500円、600円は行ってしまう。 つまり、平均客単価で見れば、それほど安売り店というわけでもない。

 うどんのコシはさすがである。高くない値段で本場の味を楽しめるという点では、確かに面白い。

 だが、この関西で定着するだろうか? 私の予想は、「かなり厳しい」である。

 この商法は、うどんがファーストフードとして根付いている地元讃岐ではしっくりくるが、 関西で通用するかどうかには疑問がある。関西も確かにうどん文化圏ではあるが、 例えば中高生が学校帰りに小遣いでうどんを食べて帰るという文化はない(主食にはなっても、おやつにはならない)。 関西には、たこ焼きという、偉大なるファーストフードがある。 これに対等に戦うまでの文化になるのは難しいだろう。また、もしそれを画策するのならば、 徹底的に関西人の味覚に迎合しなくてはならない。

 客単価1,000円くらい狙える商売ならば、本場の味を売りにすればよい。しかし、その半分以下程度でそれをやると、 簡単に飽きられてしまう可能性がある。讃岐うどんのダシは、関西人には少々塩辛く感じる。 「きつね」がないのも、致命的である。

 社員食堂と見紛うばかりの店内の雰囲気も、実によろしくない。ガサガサと落ち着かない。 安いのだから仕方ない、と楽観はできない。東京ならそれで良いかもしれないが、 関西の一般消費者を見くびってはいけない。落ち着きを求めず、安さだけを求める客を集めれば良いと思われるだろうが、 何せマクドナルドでハンバーガーだけ3個買って、水を要求する土地柄である。100円のかけうどんだけ食べて帰る客が続出しかねない。

 大阪では心斎橋筋、天神橋筋に次いで3店舗目とのこと。直営店とフランチャイズ店があるらしいので、 どちらかはわからないが、都心部、下町の次に、リトル東京と言われる江坂に出店したのは巧妙だ。 この街は、ディープな大阪文化とは一線を画し、東京に近い商売ができる場所である。 実際今日も、チラシについていた100円うどん無料券を使う客は、私くらいのもので、他には見られなかった。 ついついトッピングをたくさん取るような客に来てもらえれば、利益は上がるだろう。

 おそらく3年が勝負だろう、と思う(平均客単価500円、一日平均来店数500人(江坂では厳しいかな?)として、売上25万円/日。750万円/月。 9,000万円/年。利益率15%として、年間純利1,350万円。もし初期投資が2,000万円であれば、およそ1.5年で回収だ)。

 1年以内に撤退すれば敗北。2年もてばドロー。3年で一応の目的クリアだろう。

 かなり辛口批評になってしまったが、このように話題の店が次々とやってきてくれる我が街を、 あらためてエキサイティングな所だと思うし、きてくれること自体は、大歓迎である。

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