利酒日記 kikizakenikki

2004年4月


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2004年4月5日  BLANC 
CHATEAU LACAUSSADE SAINT MARTIN "CROIS MOULINS" 2000 / PREMIERES COTES DE BLAYE BLANC
シャトー・ラコサード・サン・マルタン "クロワ・ムーラン" / プルミエール・コート・ド・ブライ・ブラン
BORDEAUX地方、BLAYE地区、AC:PREMIERES COTES DE BLAYE

Ch.Lacaussade st.martin 00  前置きが長いので、適当にとばしてお読みください。。

 3/30の当日記で、東京都教育委員会による都立高教職員の処分問題について書いた。 君が代斉唱時に起立しなかった教職員を戒告処分にしたことは、基本的人権の侵害ではないか、というのが私の主張だ。
 くしくも、翌日の朝日新聞には同趣旨の社説が掲載された。
 3/31朝日新聞・社説:「式を妨害したのならともかく、起立しないからといって処分する。 そうまでして国旗を掲げ国歌を歌わせようとするのは、いきすぎを通り越して、なんとも悲しい」
 すると、これに産経新聞が反応して、両紙で論争が始まった。
 4/1産経新聞・産経抄:「しかしそうまでして国旗・国歌を貶めようとする論調は、 なんとも悲しい」と書き、公教育の儀式に立つ教師は私人ではなくれっきとした公人で、自分勝手な甘ったれは許されない。 事前に出されていた通達に従わず起立しなかった176人は教師失格者であるとも書いている。
 4/2朝日新聞・社説:卒業式で日の丸を掲げるな、君が代を歌うな、などと言っているのではない。 処分という脅しをかけて強制するのは行き過ぎだと主張しているのだ。それがなぜ国旗・国歌を貶めることになるのだろうか と反論し、どうしても嫌だという人に無理強いするのは民主主義の国の姿として悲しすぎると言う。 憲法が保障する思想及び良心の自由を侵す疑いが強いとも書いている。 国旗・国歌法が成立した当時の首相は、強制的に行わない旨の発言をしていた点も指摘している。
 4/3産経新聞・社説:「本質をそらした朝日社説」のタイトルで、朝日はそもそも国旗・国歌法に反対していたはずなのに、「いつから認めるようになったのか。はっきりさせてほしい」という。 一般社会の私的な場なら許されるかもしれないが、子供に知識やマナーを身につけさせる公教育の場では、 それを怠る教師には処分を伴う強制力も必要であり、朝日の主張を推し進めると教育は成り立たなくなる。 日本の公教育を担う教員には当然、国旗・国歌の指導義務があり、卒業式に生徒の面前で起立しない行為は到底、許されるものではないと書いている。
 4/4朝日新聞・社説:掲げるな、歌うなとは最初から言っていない。掲げない自由、歌わない自由も認めるべきであり、処分をたてにした都教委は、 踏み絵を強いたようなものだ。式次第や国旗の位置、伴奏の方法まで12項目にわたって細かく指示した都教委のやり方は、 学校の自主性や個性を認めないもので、公教育にとってマイナスだと書く。
 4/5産経新聞・産経抄:「朝日の本心は国旗・国歌を貶めることにある」とし、強制するなと朝日は主張するが、 公教育の場の問題を一般社会の問題にすりかえてはならないと書く。 「"公人"である教育者が個人的な心情や権利を振りかざしていいものか。これでは子供たちにきちんとした 国家観が育つはずがない」という。
 以上が今日までのやりとりだが、朝日が、愛国心を強制することに反対し、処分までするのは行き過ぎだと主張するのに対し、 産経は、公人が個人的心情や権利を振りかざしてはならず、それに従わない者は処分が相当と主張する。
 ルールそのものがおかしいのではないかとする朝日に対して、とにかくルールには従えとする産経。 まったく平行線。
 私は、愛国心を強制するようなルールを作ったことが問題だと思うし、都教委のやり方自体に反対だから、 今回の産経の論調にはまったく賛成できない。このような主張が押し通されれば、異端を許さない恐ろしい国になってしまうと危惧する。 "朝日は国旗・国歌を貶めようとしている"という産経の主張は、まったく的はずれで、本質を理解しない単なるあげ足取りであり、 そうやってイデオロギー論争に持ち込もうとする狡猾さを感じる。
「きちんとした国家観」って何? 国旗・国歌を無条件に敬えってこと? それに従わないヤツには制裁を加えるってこと?  いい加減にせえ、といいたい。
 "自国を敬わない人間は、他国も同様に踏みにじる"との考えがあるようだが、それはまったく違う。 多様な価値観を認め合ってこそ、他者を敬う心が生まれる。偏った国家観など要らない。

 さて、ここからが今日の本題で、こちらのほうがかなりドライである。
 今回のワインは、初体験もの。PREMIERES COTES DE BLAYEの白(赤は飲んだことがある)。
 色は濃い麦わら。ハーブ香というか、かなりジメジメ感のある芝生のよう。
 酸のアタックは弱く、甘味は幾分だらっとした印象。香りはソーヴィニヨンらしいのに、 なんだか間のびした味わい。面白いと言えば面白い。
 とっても牧歌的。田舎の田んぼのような、あるいは牛が放牧された草原のような、のどかな光景がうかぶ。
 近所のDSで\1,980(本体価格1,886円+消費税94円)にて入手。初体験でもあり、エチケットが美しく、 ボトルもとても重たいので、結構期待して臨んだのだが・・・。飲み進むうちに、だんだんと薄ら甘さが鼻についてきた。
 ちなみに当日記でも、今月から価格表記は消費税込みの総額表示に変えることにした。 本当はこんな姑息な戦略に従いたくもないのだが、世間に合わせないとかえってわかりづらいかもしれないので。 せめてもの抵抗として、本体価格と税額を併せて明記し、価格がぼやけないようにする。
<評定:D>

2004年4月9日  BLANC 
TERRAZAS DE ROS ANDES ALTO CHARDONNAY 2002
テラサス・デ・ロス・アンデス アルト シャルドネ
アルゼンチン、MENDOZA

Terrazas de Ros Andes Chardonnay 02  恐れていたことが起こった。

 イラクにおける邦人の人質事件で、あらためて報道の無責任さを痛感した。 今日の朝刊では、5大紙すべてが社説で事件を取り上げている。

 読売新聞: 卑劣な脅しに屈してはならない
「テログループによる自衛隊の撤退要求などに屈するわけにはいかない」 「三人の行動はテロリストの本質を甘く見た軽率なものでなかったか」 「安定、復興の努力をくじくたくらみは断固、排除せねばならない」
 産経新聞: 今こそ国内が一致結束を
「福田康夫官房長官は(中略)『撤退する理由はない』と断言した。この姿勢を強く支持したい」 「犯人らの脅迫に屈することは決してできない」 「少なくとも昭和52年の日本赤軍によるダッカ・ハイジャック事件に際してとった日本政府の 対応の誤りは繰り返してはならない」
 毎日新聞: 卑劣な脅迫は許されない
「卑劣な脅迫は復興や治安回復のためにならないばかりか、国際社会も到底容認しないはずだ」 「日本政府はイラク戦争後の国民の窮状を救うために(中略)自衛隊を派遣した。これまでの現地での活動が住民の支持を得ていることも確かな事実だ」 「犯行グループは直ちに人質を解放すべきだ」
 日経新聞: 卑劣なテロ集団から人質の解放を
「犯人たちはただちに人質全員を解放すべきである。このような犯行によって、 日本人や国際社会の共感を得ることは到底できない」 「自衛隊は(中略)イラク人に非難されるようなことはしていない」 「米政府は日本に協力すると言明しており、日米当局が緊密に連携して対応してほしい」
 朝日新聞: 救出に全力をあげよ
「こんな行為は絶対に許されることではない。犯人グループは3人をただちに解放すべきである。 何はともあれ、政府はまず救出に全力をあげるしかない」 「ただ、少なくとも現在のイラクが、自衛隊にとって復興支援に専念できる状況でなくなりつつあることを、 政府はしっかりと認識してもらいたい」 「首相は厳しい現実を直視しなければならない」

 読売、産経は、脅しに屈するな、撤退するなと強く主張する。いかにも大局を見たような意見だが、 3人の命が犠牲になってもいいと言うのだろうか。国が送ったわけでもないし、自己責任だから捨て石になれとでも 言うのだろうか。まさか、殺されたら勲章でも与えて、靖国にでも奉るというのだろうか。 命を何だと思っているのか。こんな無責任な発言を、私は許せない。
 毎日、日経、朝日は、犯人に「人質を解放せよ」と訴える。しかし、今さらそんな当たり前のことを言ってどうする。 何も言ってないのと同じだ。日経が単に事実をなぞっただけの表現であるのは仕方ないとしても、 朝日ですらせいぜい政府と首相に「事態を認識せよ」というのに留まっている。歯切れが悪い。
 撤退する理由はない、というのはたやすい。街頭インタビューでも、ここでひるむな、なんて 言っている一般人がいる。そういう発言をする人には、「もし人質に取られたのが あなたの子供だったら同じことを言いますか?」と問うてみたい。

 こんな日にワインを飲んでいる私はいったい何者だろう、と思いつつ。
 色は淡いレモン色。トロピカルでヘビーな香りが強く、グラスを回すと火薬のようなフリンティな香りが強くなる。
 なめらかな飲み口。酸がぼやけているかと思ったが、口の中で転がしていると、オレンジ的な酸が広がってきて、 決して大味ではないことがわかる。想像より甘味が強くなく、スリムなフィニッシュ。
 豊満かと思ったら、引っ込むところはちゃんと引っ込んでいた。南米らしくて、南米らしくないワイン。
 入手価格\1,564(本体価格1,490円、消費税74円)。成城石井梅田店にて。
<評定:B>

2004年4月11日  ROUGE 
CHATEAU LAGRANGE 2001 (GRAND CRU CLASSE) / SAINT-JULIEN
シャトー・ラグランジュ / サン・ジュリアン(メドック地区特級・第3級)
BORDEAUX地方、HAUT-MEDOC地区、ST-JULIEN村、AC:ST-JULIEN

Ch. Lagrange 01  現在(4月11日深夜)、抜き差しならぬ状況なので書きにくいが。

 イラクで日本人3人が拘束された事件に際し、首相は「自衛隊の撤退はない」と語り、 野党民主党も基本的に同様の立場を表明した。
 これについて、昨日の産経新聞は、冷静な対応と評価したうえで、 「ところが共産党や社民党など、ある種の人びとは"いわぬこっちゃない"といわんばかりに、 テロリストをではなく、日本政府を批判する」「誤解を恐れずにいえば、"いわぬこっちゃない"とは、 本来、人質になった三人の日本人に対していわねばならぬ言葉だ」「同情の余地はあるが、 それでも無謀かつ軽率な行動といわざるをえない」「確かに、国家には国民の生命や財産を保護する責務はある。 しかしここでは『自己責任の原則』がとられるべきだ」(4月10日付・産経抄)などと書いた。

 自己責任というのは、その通りである。誰しも自分の行動には、最後まで責任をとらなければならない。 その点は私も同感である。
 だが、今このタイミングで言うべき言葉だろうか。しかも、3人に対して"いわぬこっちゃない"とは何事か。 家族の方が見たら、いったいどう思うだろうか。デリカシーがなさ過ぎる。人の命を何だと思っているのか。 強い憤りを感じる。
 自分たちの信じる"常識"と違う意見や、少数の意見を、"ある種の人びと"などと表現するのもこの新聞のお家芸だ。 異なる意見を排除しようとする姿勢は、決して許されることではない。
 自分の価値観と違う意見に対して、必ず「わかりませんねえ」と言う首相の姿勢と全く同じ。 そういう排他思想や、対立軸(白か黒か、善か悪か、などの二分法)でしか物事を見られない態度というのは、 幼稚極まりないと申し上げておく。
 とにかく無事救出することが最優先なのであって、それ以外の下らぬ論争をしている時ではない。

 さて、今日は、以前にセカンドが登場しているCh.Lagrangeの本家。 まだ若い2001年ビンテージ。ネットで、\3,654(本体価格3,480円、消費税174円)にて入手。輸入元希望小売価格は\6,720というから、 実に46%オフ。
 色は、これ以上はないというくらいに濃い。やや青みがかって、青黒い感じ。
 墨汁、煙、甘草、ハッカなどの混ざった控えめな香り。土や紅茶のような感じも。いずれにしても開いてはいない (若いのを承知で、しかも空気に良く触れさせずにそのままグラスに注いだのだから当然か)。
 酸が結構あって、甘味はほとんどなく、線が細い。樽香は強いが、粉っぽくて、タンニンもぜんぜんこなれていない。 もちろん若さのせいだ。
 スケールの大きさはかいま見える。私は、ワインの将来を見通すだけの舌を持ってはいないが、せめてあと数日残して、 空気に触れた後の変化を見てみよう。
<評定:C>

[2日後記]
2日経ってもあまり変わらない。香りは閉じていて、堅いまま。若干酸が強くなったかな、という程度。


[3日後記]
3日経った今日が一番いいかもしれない。発酵した藁(わら)のような匂いが少し出て来た。酸が丸くなった。 でも、やっぱり、重量感は出てこない。

2004年4月14日  BLANC 
LES GRANDS AUGUSTINS / VINS DE PAYS D'OC / TARDIEU LAURANT
レ・グラン・ゾーギュスタン / ヴァン・ド・ペイ・ドック / タルデュー・ローラン
V.d.P.

Les Grands Augustins  嫉妬心と劣等感の時代。

 イラクでの人質事件の被害者宅に、いやがらせの電話が相次いでいるという。「自業自得だ」などという内容が多いらしい。
 危険な地域に自ら出向くからには、自己責任が問われる。その点に、私も異論はない旨、先日書いた。 しかし、自己責任というのは、あくまでもその人が自ら責任を担うべきことであって、人から責められる類のことではない。 人間は誰しも、命の危険にさらされるような状況に、自らの意思で身を置くことができる。が、外野がそれをとやかく言う資格はない。
 最近、街中で、こんな声を聞いた。「あの3人は、目立とうとして、他人と違うことをした。いい気になりやがって。 早く焼き殺されればいいんだ」
 この言葉を聞いて、私は愕然としたが、次の瞬間、はたと気づいた。 実はいま、世の中のかなり多くの人が、本音ではこんなふうに思っているのかもしれない、と。 この発言はあきらかに愚かで、悲しい発言であるが。
 実力主義、競争社会が進行し、自分は明らかに競争に勝てずに置き去りにされているという自覚を、 いま人口の過半数が抱いているのではないか。だから、少しでも目立つ人間の足をひっぱりたい。 人の非を見つけたら、すぐさま非難して、自分もまだ捨てたものではない、と思いたがっている。そんな人が、増殖している。 それがいまの世論を作っている。人を引きずり下ろすことでしか、自己のアイデンティティを認識できない。実にさもしい根性。
 日の丸・君が代の強制問題にも、私は同じものを感じる。ルールや既成事実を積み上げ、有無を言わさずそれに従え、 なとどいう考えは、「規範」という形を借り、特定の価値観を押しつけようとする横暴である。 自分に自信がないから、国の誇りなどというくだらない概念を持ち出す。 そんなことでしか、自らの誇りを感じられない人びとが増えている。
 ルールとか、常識といった形式にすがらずに、たったひとりの裸の自分で世界と勝負できるかどうかに、その人の真価が現れる。 人の行動を非難するような行為は、まさしく負け犬の行動なのだよ。なんでそんなことに気づかないのかねえ。 気づかないからガキなんだけども。

 閑話休題。
 当日記で取り上げているVdPの中では、おそらく一番値段が高いであろうと思われる1本。 入手価格は\2,100(本体価格2,000円、消費税100円)。大阪梅田の阪神百貨店にて。
 香りはブルゴーニュのような、麦わら色。しかし、香りを嗅いで、ああやっぱりVdPなんだなあ、と思う。 セパージュが明記されていないが、おそらくヴィオニエ中心と思われるフラワリーで、華やかな香り。 桃やグァバなどのほか、オレンジのような柑橘香もあって、幾分か引き締まっている。
 味は酸が思いのほか強く、シャープ。甘ったるさはない。黄色い花や、なぜかジャスミン茶のようなフレーバーが口中に広がって、妖艶。
 とっても摩訶不思議な味わい。美味しくて感動というよりも、面白くて感動、という類のワイン。
 評価が難しいが、これだけ考えさせられたのだから、元は十分取れている。
<評定:C+>

2004年4月15日  ROUGE 
メルシャン"Wines around the World" COTES DU RHONE ROUGE / PAUL DU SAUZY
ワインズ・アラウンド・ザ・ワールド コート・デュ・ローヌ・ルージュ / パウル・デュ・ソージー
COTES DU RHONE地方、AC:COTES DU RHONE

メルシャン Wines around the World Cotes du Rhone Rouge  ひとまずホッとしたけれど。

 イラクで身柄を拘束されていた邦人3人が解放されたと、日本時間15日午後9時過ぎに報道された。何はともあれ、本当によかった。
 ニュースでは、政府関係者は一様に安堵の表情を見せたと伝えられたが、与党公明党の神崎代表のインタビューを見ていたら、 「自衛隊を撤退しなくて良かった。小泉首相のリーダーシップを評価する」との発言をしていた。
 お前らはヨイショのし合いか、と思った。傷のなめ合いと言ってもいい。
 自衛隊を撤退しなかったから人質が解放されたのでないことは、誰の目にも明らかだ(でも、撤退しなかったからうまくいった と書くんだろうな、明日のS新聞とかY新聞は・・)。彼ら3人が、日本国政府のように米国追随姿勢ではなく、 自ら進んでイラク人のために働いていたことが伝わったからに他ならない。警備会社社員のイタリア人が殺害されてしまったことを見ても、 それは明らかである。
 自分たちの明確な方針もなく、ただ米国の横暴に協力している間は、また同じことが起こりうる。と、思っていたら、 新たに2人の日本人が拘束されたらしいとの報道が伝わってきた。こちらも心配だ。
 これで自衛隊派遣の正当性が証明されたなどという寝言を、ゆめゆめ認めてはならない。対米追従の姿勢そのものが、非難を受けているのである。
 民間人も、いくら自己責任での渡航とはいえ、このようなことがあれば多くの人を巻き込むことになる。 ボランティアという大義があろうと、今は自粛すべき時だ。

 今日は、夜10時を回って帰宅後、夕食。こういうときは、もう立派なワインを開けることもためらわれるので、 スーパーで手軽なワインを買って帰ってきた。
 Wines around the Worldという、メルシャンのシリーズ。一応、現地の業者が瓶詰めしたものであり、AOCもローヌ。 だからメルシャンは単に輸入者ということになっている。
 普段こういうものをほとんど買わないのは、値段のわりに"相対的"にマシなものがあるとしても、"絶対的"な品質は低いに決まっているから。 でもこれは、懸念していたよりは、ずっといい。
 色はとっても薄いのだが、少しレンガっぽい。香りは、驚くなかれ、ちゃんとローヌらしく、シラー主体である模様。 豊かなアルコール感があって、火薬のようなはじける感じや革っぽさも。口当たりは軽く、ほんわかとした甘味が漂うが、 酸も効いていて、それなりに飲み応えがある。悪くないじゃん、って感じ。ノン・ヴィンテージだけれどね。
 250mlびんで、価格は\399(本体価格380円、消費税19円)。750ml換算で、本体価格1,140円となる。
 こういうミニチュアびん(当然スクリューキャップ)で、不味くないものを探すのは難しいので、その意味では貴重な存在。でも、\1,140って考えると、 決して安くはないけれど。
<評定:C−>

2004年4月18日  BLANC 
BOURGOGNE CHARDONNAY 2001 / LOUIS JADOT
ブルゴーニュ・シャルドネ / ルイ・ジャド
BOURGOGNE地方、AC:BOURGOGNE

Louis Jadot Bourgogne Chardonnay 01  自己責任とは。

 無事解放された日本人人質3人に対して、非難の声が高まっているという。
 退避勧告が出ていたのにもかかわらず、自らの意思で危険な地に行ったのに、救出に多額の国費を投入させられ、 なおかつまだ活動を続けたいとの意思を示していることに対してである。救出に際し、政府の政策にまで言及した家族の 態度も批判の対象となっている。
 3人の行動が、無謀な行動であったことは間違いない。それに自分で責任を負わねばならないというのもその通りである。 だが、彼らを批判する世論やメディアの報道には、とても賛同できないものがある。
 登山禁止の冬山に無謀に入山して遭難し、その救出のために甚大な迷惑がかかったようなものだ、という論調があるが、 それはまったく違う。
 冬山は自然現象だが、戦争(と言ってまずいのならテロ)は人間の仕業だ。このような事態を招いた責任の一端は、 米国の行為に無批判的に賛同した"戦争当事国"日本政府にも当然ある。その事実に一切触れないで、 あの3人の無謀な行為のために国民が迷惑した、などと発言するのはおかしい。
 自己責任論を全面に押し出す新聞や世論は、犯行グループが「友人である日本人を傷つけたくないから、自衛隊はイラクから撤退すべきである」 と語っていることを、完全に黙殺している。きっと、犯人の意見など聞くべきではないと言うのだろう。 人道支援という日本政府の意図が伝わっていないためだと言うのだろう。しかし、米国の行動が批判の対象になっているのであり、 それを支持した日本も同じように見られているのである。
 自分たちの行動は正しいとか、正義であるという主張をする人間ほど、平気で他者を踏みにじるのである。 平気で侵略するのである。今、日本はそういう国に成り下がってしまって いることを、はっきりと自覚すべきだ。このままでは、もっと酷いことになる。

 今日のワインは、迷ったとき、失敗したくないときに、つい頼ってしまうジャドのACブルゴーニュ。
 色はイエローグリーンというか、もう少し黄色みが強い。 青リンゴやレモンの香りの奥に、ナッツの香ばしさもある。いかにも繊細なブルゴーニュです、という香り。
 口に含むと酸がキュートで、きりっ!きゅっ!という味。でも、その後からオイリーでなめらかな味わいが続いて、 適度な奥行きと妖艶さがある。
 基本がしっかりしていて、適度にストイックな味とでも言おうか。
 スリムで気品があって、知性あふれる才女のようなワイン。いやらしくない程度の色香がとてもイイ。
 大阪・阪神百貨店にて\1,732(本体価格1,650円、消費税82円)にて入手。
<評定:A−>

2004年4月19日  ROUGE 
GEVREY-CHAMBERTIN "CLOS PRIEUR" 2002 / FREDERIC ESMONIN
ジュヴレイ・シャンベルタン "クロ・プリウール" / フレデリック・エモナン
BOURGOGNE地方、COTE DE NUITS地区、GEVREY-CHAMBERTIN村、AC:GEVREY-CHAMBERTIN

F.Esmonin Gevrey-Chambertin 02  少し、怒り疲れた・・。

 短絡思考が嫌い。善か悪かという二分法が嫌い。全会一致ムードが嫌い。 自分と違う価値観を受け入れない了見の狭さが嫌い。何かというとすぐ規律などという言葉を持ち出す頭の悪い発言が大嫌い。
 そんな私であるから、最近は怒ってばかりいる。 なぜ、多様な価値観を認めあい、許し合おうとしない人が増えているのだろう。社会全体がこんなに視野狭窄状態に陥っているのは、 私が生まれてから初めての経験だ。これは何とかしなければ、と毎日思っている。このままでは、言論の自由なんて言葉自体も殺されてしまうぞ。
 疲れたので、今日はもう多くを語るまい。

 ネットでe-shopping wineから購入したもの。 以前にACブルゴーニュが登場しているが、今日はジュヴレイ・シャンベルタン。
 ややピンクにも見えるほど若々しいルビーレッド。赤いベリー香がもわっとするほど立ち上り、その後ろにゴムとかイオウの感じが。
 アタックが極めて鋭く、若い酸がぴちぴち踊っているよう。タンニンは繊細。 鉄っぽい味わいがある。口に含んでいると、そこはかとない甘味(いちごのような)が漂ってくる。 後味は、陳腐な言い方をすれば、ひたすら酸っぱい。でも、じんわりした余韻がとっても高貴。
 どこからどう見ても、誰がなんと言おうとブルゴーニュだよなあ、という味わい。さすがにACブルゴーニュよりは繊細で、 品格を感じる。
 入手価格は、\2,919(本体価格2,780円、消費税139円)。
 まだ本当の魅力を開花させていないが、2年後の妖艶さが容易に想像できる乙女のようなワインとでも言おうか。
<評定:B>

2004年4月25日  ROUGE 
CHATEAU BAHANS HAUT-BRION 1999 / PESSAC-LEOGNAN
シャトー・バアン・オー・ブリオン / ペサック・レオニャン
BORDEAUX地方、GRAVE地区、PESSAC村、AC:PESSAC-LEOGNAN

Ch.Bahans Haut-Brion  したり顔で自己責任論を振りかざす方々に、お尋ねしたいことがあります。

 もしあなたが、日頃の不摂生がたたって心筋梗塞にでもなって、 たった1人で家にいる時に発作を起こしても、救急車を呼ぶなどという他人に迷惑のかかることを、 ゆめゆめ考えたりはしませんよね。
 それでももし、命からがら電話をし、救急車で搬送されることを選択したならば、 救急隊の出動に要した費用は、当然、自己責任の原則によって負担し、救急車によって進路を妨害された車の不利益を補償し、 サイレンの音にびっくりした人びとにも迷惑料を支払い、後日公衆の面前で自己の非について謝罪しますよね。
 病気は望んでなったものじゃない、というなら、これはどうでしょう。
 釣り好きのあなたが高潮の日に警報が出ているのを承知で船を出し、沖へ向かいました。 その結果、遭難したとしても、SOSを発することは他人に迷惑をかけることになるから、慎むでしょうし、 海上保安庁が国費で救出にあたってくれることも拒否しますよね。 もし、意に反して救出を受けたとしたら、自己責任の原則に従ってその費用は後日全額弁償し、 記者会見を開いて国民の前で謝罪しますよね。

 自己の身を自ら守るべきことは当然ですが、判断ミスによって危難に遭遇する人があれば、 その時にこそ助け合う。私は、私の払った税金を、そういうためにこそ使って頂きたいと思う人間です。 "同盟国"の横暴につきあい、本当に望まれているかどうかもわからない形で戦闘服を着た人びとを"人道支援"と言って 戦地に送り込むようなことに使って欲しくないと思う人間です。
 お前の判断でやったんだから、お前がすべて責任を取れ。そんなことを言う国民や、それを煽るメディアが偉そうにしている国を、 どうして誇りに思うことができるでしょうか。しかも一国の首相が率先してそれを言い、その首相を支持する人が多いような国など、 世界平和に貢献できるはずがありません。お国のため? 国は国民のためにあるのであって、 国民が国のためにあるのではありません。
 あなた方が吹聴しているのは、自己責任という名を借りた、 やっかみ、嫉妬、善意の切り捨て、自由思想の排除に過ぎない。 そうすることによって、負け犬が溜飲を下げているに過ぎないと、申し上げておきます。

 さて、気を取り直して、今日のワインへ。
 明日が私のbirthdayだったりするので、当日記としてはちょっとだけ良さげなものを開けてみた。 ご承知のとおり、Ch.オー・ブリオンのセカンド。そのハーフボトル。
 とっても深い色だが、まだ縁までほぼ均一なのが、若々しい。 落ち着いた土の香りがあるが、同時にメロンのような香りも感じる。がっしりと閉じていて、まだ眠っている感じ。
 だが、口に含むと、とっても柔らかく、深淵。ほろっとソフトな口当たりなのに、果実味がほとばしり、ずーんと押してくる。 タンニンはまだとげとげしいが、決して味わいを邪魔するものではない。少し明日まで取っておこうと思いながら、やっぱりおいしいから飲んじゃった。
 これ、もう何ヶ月も前に購入して、レシートも残していなかったので、正確にいくらだったかわからない。 でも確か、ハーフで3000円台だったと記憶している。少なくともフルボトルで6000円以上。それを前提に評価すると下記のようになるが、 当日記の日常レベルを遙かに超えていることは確か。
<評定:C+>

2004年4月27日  ROUGE 
BEAUJOLAIS 2003 / GEORGES DUBOEUF
ボージョレ / ジョルジュ・デュブッフ
BORDEAUX地方、BEAUJOLAIS地区、AC:BEAUJOLAIS

G.Duboeuf Beaujolais 03  あなたに何の権限があるのですか?

 自由民主党のある参院議員が、イラクでの人質事件の被害者について、こう述べたという。
「人質の中には自衛隊のイラク派遣に公然と反対していた人もいるらしい。 そんな反政府、反日的分子のために血税を用いることは強烈な違和感、不快感を持たざるを得ない」
 反日的うんぬんについては、そういう表現を好んで使う人は世間にもいるので、ああまたか、という感じ なのだが、一番問題にしたいのは、国民の税金の使い道をコントロールする権限が、 自分たちのもとにあるとでも言いたげな、この議員の大馬鹿ぶりである。
 国民の納めた税金は、文字通り国民のものなのであって、議員とは、その国民の代表であるに過ぎない。 使い道の決定権限はあくまでも国民にあるのであって、議員たちにあるのではない。 この議員は、その辺を大きく勘違いしている。
 あんたが自分のポケットマネーを使うのならば、「オレの気にくわないヤツのためになど、ビタ一文も払わない」 とすごんでくれても一向に構わない。それこそあんたの自由だからだ。でも、「国民の血税」は、あんたのカネじゃない。 そこにあんたの個人的な思想信条を持ち出すとは、バカも休み休み言え。
 個人としてならどんな思想を持とうが自由だ。何に対して違和感や不快感を持とうがまったく自由だ。 だが、それを政治の場で言うのは、政治家としては失格だ。
 特権意識をふりかざして「オレたちにタテをつくとは何事か」などという人間に、議員の資格はない。

 閑話休題。
 スーパーのwine売場でなにやら目立った陳列を発見。見ると、「春のボジョレー 日本到着!!」とある。 で、とりあえず買ってみた。
 100年に一度という、いささか大げさな宣伝だった昨年のヌーヴォーだが、それを新酒としてではなく、 約半年後の今、ACボージョレとして売り出したものだ。その間、熟成(?)させていたのか何なのかよくわからない。
 色は、新酒よりはやや深い感じだが、昨年の新酒の濃さからすると、あんまり変わらないのかもしれない。 香りは、絵の具のような感じと、甘いフルーツ香。新酒から少しもわっとくる感じを取り去ったような匂い。 でも、十分若々しい。
 甘味が最初にくるが、酸も立っていて、華やかさは健在。もちろんタンニン分は弱く、とっても軽やかなので、 すいすい行ける。
 社会に揉まれて、当初のぴちぴち感はなくなったけど、まだ十分かわいいよ、って感じのOL2年生みたいなワイン。
 入手価格は\1,280(本体価格1,219円、消費税61円)。まあこんなものでしょう。 ヌーヴォーならばこんなに安いことはないので、考えてみればお得か。でも、ヌーヴォーは航空便なので、高くて当然なんだけれど。
 ちなみに、当日記ではBeaujolaisを、原音に近い"ボージョレ"と書くことにしているのだが、 「春のボジョレー」というのは、輸入者(サントリー)がそう宣伝しているので、それに従ったまで。
<評定:C>

2004年4月29日  BLANC 
CHABLIS PREMIER CRU LA FOURCHAUME 2001 / JEAN-CLAUDE BESSIN
シャブリ・プルミエ・クリュ ラ・フルショーム / ジャン・クロード・ベッサン
BOURGOGNE地方、CHABLIS地区、AC:CHABLIS 1er CRU

J.C.Bessin Chablis Fourchaume  詳しく書くのもバカバカしいが。

 年金未納、未加入期間があった閣僚が、新たに4人追加となった。3閣僚に対し「未納三兄弟」などと息巻いていた民主党の菅代表自身も。
 それにしても、「閣僚すら間違えるんだから」と、わかりにくい制度そのものが悪いなんて、相変わらずとぼけたことを言う首相の無責任さには、 呆れるを通り越して、笑ってしまう。払ってることがバカらしいと思った国民は多いだろう。
 でも、私自身は年金を払い続けるつもり。平均寿命まで生きると仮定すれば、得なしくみであることは間違いない。 将来もらえなくなるかもしれない、との意見もあろうが、それを言い出したら、株だって債券だって不動産だって、銀行預金ですら、明日のことはわからない。 まったくドライに考えれば、現行制度を前提として将来設計するのが最も合理的である。だから私は、毎月夫婦で26,600円の国民年金を払っている。
 いや、正確に言えば、実は自分が将来もらうことは、ほとんど期待していない。現在受給している、今の繁栄を築いてこられた年配者を支える義務が、 我々現役世代にはあると、私は思う。つまり、税金みたいなものだと考えている。それでいいと思っている。

 さて、今日のwineは、シャブリの1級。
 色は濃いめのイエローグリーン。石油やセルロイドの印象がまずあって、りんごのような果実香も。 グラスを回すと、ナッツや火薬の感じが出てくる。これらの香りが積み重なって、かなりの厚みがある。
 アタックは柔らかく、味にも適度なボリューム感がある。酸も弱くはない。りんご的な甘味が広がる。 フィニッシュは、酸と苦味が引き締める。
 ネットでe-shopping wineより\2,394(本体価格2,280円+消費税114円)にて購入。 損も得もない感じかな。
 それにしても、エチケットがそっけなさ過ぎるように思う。
<評定:C>

2004年4月30日  ROUGEC 
CHATEAU TOUR DE MIRAMBEAU "CUVEE PASSION" 2001 / BORDEAUX SUPERIEUR
シャトー・トゥール・ド・ミランボー "キュヴェ・パッション" / ボルドー・スペリュール
BORDEAUX地方、AC:BORDEAUX SUPERIEUR

Ch.Tour de Mirambeau 01  民度が問われているのです。

 イラクでの人質事件被害者のうち2人が記者会見を行った。
 拘束中の様子を、実に冷静に、客観的に説明していた。あらためてこの人たちの明確な意志が伝わってきて、 頼もしく思った。
 無鉄砲と言ってしまえば、そうなのかもしれない。でも、私たちのうちのほとんどが、彼らのような使命感に駆られることもなく、 他人を思いやる余裕すらなく、安全なところでぬくぬくと毎日を過ごしている。その自分をこそ恥じるべきである。 にもかかわらず、彼らの行動がまるで迷惑であるかのように言う人たちがいる。なんと民度の低い国であろうか。
 今日の会見を受けて、ますます彼らは生意気だとか、好き勝手なことをしやがって、なんていう反応が増えるんだろうな。 英雄気取りもいい加減にしろ、なんて意見も出てくるんだろうな。明日の5大紙の反応も見ものだな。
 他人のことを思いやろうともしない人間に、彼らを責める資格など断じてない。自己責任論を振りかざせば振りかざすほど、 あなた自身の未熟さ、アイデンティティの欠落、劣等感を披瀝しているだけだと、申し上げておきたい。

 さて、今日登場するのは、ちょうど1か月前に白を取り上げ、なかなかコストパフォーマンスの高かったもの。
 色はとっても深く、青黒い。クリスピーな樽香と黒いベリー香は、いずれも外向き。陽気なところは、CUVEE PASSIONの名前にぴったり。
 果実的甘味を感じ、威風堂々とした味わい。若いので、タンニンが引っかかるが、それが活きの良さを感じさせる。 熟成させても重厚にはならないかもしれない。だから、この荒削りの若々しさを楽しむべきかもしれない。
 入手価格\2,100(本体価格2,000円+消費税100円)。大阪梅田の阪神百貨店にて。
 2,000円というと、安ワインとは言い難いし、さりとて高級な部類でもない。非常に中途半端だが、 この金額を払う価値は十分にあるワインと言える。
<評定:B>


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