利酒日記 kikizakenikki

2005年1月


HOME  利酒日記のメニューページへ  産地別索引へ  前月へ  翌月へ

2005年1月1日  SPARKLING 
TAILLEVENT GRANDE SELECTION BRUT (DEUTZ) / CHAMPAGNE
タイユヴァン グランド・セレクシォン ブリュット(生産者:デューツ)/ シャンパーニュ
CHAMPAGNE地方、AC:CHAMPAGNE

Taillevent Brut  あけましておめでとうございます。

 新年早々こんな所へ訪問してくださった皆さま、本当にありがとうございます。
 私は今年も、安酒と平和を愛する気持ちをもって、世にはびこる軍国主義・帝国主義的ジジイ政治家を斬りまくる所存です。

 さて、新年1本目は、やはり泡でしょう、ということで、シャンパーニュを。
 これは、昨年から続く11本17,850円セットの6本目。
 泡立ちはきめ細かいが、あまり持続しない。温度のせいかと思い、少し時間を置いて温度が上がっても、やはりあまり持続はしなかった。
 緑臭いといえるほどのハーブ香。味わいはシャープで、グレープフルーツ的苦味が。 その柑橘香が、最後まで貫く。反面、深みは今ひとつ。
 単体での通常価格は\5,250(本体価格5,000円+消費税250円)。
 コンディションが万全ではなかったのかな?と思うが、劣化していたというほどでもないので、 いちおう評価をしよう。
<評定:D>

2005年1月2日  ROUGE 
CHATEAU RAUZAN-GASSIES 1997 GRAND CRU CLASSE / MARGAUX
シャトー・ローザン・ガシー (グラン・クリュ・クラッセ / 第2級)/ マルゴー
BORDEAUX地方、HAUT-MEDOC地区、MARGAUX村、AC:MARGAUX

Ch. Rauzan-Gassies 97  新年2本目は、メドックのちょっと良さげなワインを。

 色は青みが強く、深い紫。香りは最初、田舎臭い厩のような匂いが。 グラスを回すと温泉玉子みたいな硫黄臭が出てくる。酸化防止剤では?と思い、 もっとスワリングすると、さらに強く、持続するので、やはりワイン自身の持つ香りなのだろう。
 アタックはやわらかいが、意外と体格は細身。 甘味は弱く、シャープな味わい。まだ開いてないのかな。
 きのこのような土の香りもあって、底力も感じさせる。スロースターターかもしれないので、 もう少しおいた方が良いのかもしれない。
 ハーフボトルで入手価格は\1,698(本体価格1,618円+消費税80円)。成城石井阪急三番街店にて。
 マルゴーにしてはかなり線が細く、意外だったが、高貴な味わいはさすが。
 これで2級なの?って感じもなくはないのだが(私ごときが偉そうにスミマセン。でも格付なんて、品質の保証ではないのだからね)、 フルボトル換算で3,400円程度という値段を考えると、ありがたく頂くしかない。お買得でした。
 変化を見たいので、ちょっと取っておいて、明日残りを飲んでみよう。
<評定:A−>

■翌日記■
 酸がツンと立って、醤油っぽさが増した。黒い果実の感じも出て来た。だが、ふくらみは相変わらずなく、細身のまま。 やっぱりこれが個性なんだろうか。ちょっと期待はずれ。


2005年1月3日  BLANC 
CHATEAU LUMIERE 1997 白(青山学院130周年記念ボトル)
シャトー・ルミエール
日本、山梨県東八代郡一宮町南野呂624

シャトー・ルミエール 青学130周年記念ボトル・白  新年3本目は、国産白。
 昨年クリスマス・イヴに赤を開けたが、今日は同じシャトー・ルミエールの白。 私の母校・青山学院の130周年記念ボトル。
 淡い麦わら色。柑橘と芝生の匂い。酸も甘味も弱く、口の中で広がらないが、 このひっそり感が、日本のワインらしいとも言える。
 アフターに若干の苦味を残すが、嫌みがないので、料理の邪魔をしない。 また、何を食べてもなんとなく合う。
 入手価格は、赤白2本セットで\5,775、1本あたり\2,887(本体価格2,750円+消費税137円)。
 特筆すべき部分はぜんぜんないが、それが持ち味と言うべきなのかもしれない。でも、もうちょっと特徴が欲しい。
<評定:D>

2005年1月4日  ROUGE 
LE BAHANS DU CHATEAU HAUT-BRION 1997 / PESSAC-LEOGNAN
ル・バアン・デュ・シャトー・オー・ブリオン / ペサック・レオニャン
BORDEAUX地方、GRAVE地区、PESSAC村、AC:PESSAC-LEOGNAN

Ch.Bahans Haut-Brion  新年4本目は、オー・ブリオンのセカンド。但し、ハーフボトル。
 色は深いがやや青みがある。香りはタバコあるいはエスプレッソの焦げ臭がある。
 浮ついたところがなく、威風堂々とした導入部だが、まだ重みが感じられず、すいすい入ってゆく。
 多少青臭い感じを除けば、さすがの存在感。ただ、もっと期待していただけに、こんなものかとの思いも残る。
 入手価格ハーフで\2,489(本体価格2,371円+消費税118円)。成城石井阪急三番街店にて。
 フルボトル換算で5,000円ということを考えると、決して絶賛はできない。
<評定:C−>

2005年1月5日  ROUGE 
LES ROSEAUX 2001 / SAINT-EMILION
レ・ロゾー / サンテミリオン
BORDEAUX地方、ST-EMILION地区、AC:ST-EMILION

Les Roseasux 00  なんと新年5日連続でワインを開けることになる。
 Wine Shop Enotecaから購入した11本17,850円セットの7本目。昨年、00ヴィンテージが登場しているサンテミリオンのLES ROSEAUX。
 色は黒と言っていいほど濃い。黒い果実や醤油のような香りがあり、深い。 アタックはサンテミリオンらしくやさしいが、味わいに凝縮感がある。タンニンはやわらかめ。
 口中で塩っぱさと甘さが広がる。とても飲み応えがあって、スケールが大きい。
 単体での通常価格は\2,625(本体価格2,500円+消費税125円)。
 本流とは呼べない、むしろ異端的ワインだが、面白い存在ではある。
 裏ラベルに、This cuvee specially selected for Enoteca by Christian Moueix, is produced from the finest vineyards of Saint-Emilion. とある。Moueixがエノテカのためにプロデュースしている製品らしい。
<評定:C>

2005年1月7日  ROUGE 
CHATEAU L'HOSTE-BLANC 2000 / BORDEAUX SUPERIEUR
シャトー・ロスト・ブラン / ボルドー・スペリュール
BORDEAUX地方、AC:BORDEAUX SUPERIEUR

Ch.L'Hoste-Blanc  今年になって、当日記に昨年のような時事ネタを書いていない。
 べつに方針転換したわけではない。単にその暇がないのだ。
 これまで相当忙しいときでも書いてきたが、今は1分が惜しい状況。なので、しばし休止。

 11本17,850円セットの8本目。シャトー名に"blanc"(白)とついているけれど、中身は白ではない。赤だ。紛らわしい。
 色はボルドーらしい深いガーネット色で、期待感を誘う。黒い果実+土っぽい香りに、コショウのようなスパイシーさも。
 タンニンはシルキーで、酸が効いており、甘味がないのでとてもシャープな飲み応え。 すいすい喉に入ってゆく。凝縮感は今ひとつだが、このクラスにそれを求めるのは酷だろう。
 単体での通常価格は\2,520(本体価格2,400円+消費税120円)。
 ことさら派手さとか、わかりやすさを強調するのではなく、こんなふうにおとなしいけれど美しく端正にまとまった味造り、 個人的にはかなり好きだ。
<評定:C+>

2005年1月8日  BLANC 
MACON-LA ROCHE-VINEUSE 2001 / DOMAINE ARCELIN
マコン・ラ・ロッシュ・ヴィヌーズ / アルスラン
BOURGOGNE地方、MACONNAIS地区、AC:MACON-LA ROCHE-VINEUSE

Arcelin Macon-la Roche-Vineuse 01 rouge  首相の発言に対して、ひとこと、ふたこと。

 災害援助で国際貢献したいから自衛隊法を改正して、海外活動を「本来任務」に格上げしたいという。
 災害という、誰からも文句が出ないような、いわばどさくさに紛れて、さらなる米国追随・軍国化への道筋をつけようとするなんて、 汚いぞ、姑息だぞ。こんな火事場泥棒みたいなやり方(意味はちょっと違うが)、私は絶対に認めない。
 一方、自民党・中川国対委員長が憲法改正問題に関して、政局を避けるために超党派の組織を作りたいと発言した。
 タイミングを狙った薄汚いやり方にはもちろん腹が立つが、「政局を避けるため」だと?
 つまり解散・総選挙などの事態を招かないようにということは、自分たちが職を失わないように、 地位を危うくしないようにって意味じゃないか。 庶民にばかり痛みを押しつけておいて、勝手なことをほざくな。
 自衛隊派遣もそうだし、国を愛せとかなんとかくだらない押しつけもそうだが、 法律が出来てしまえば、「自衛隊は海外活動ができると書いてあるじゃないか。国を愛せと書いてあるじゃないか。 タテをつくな。言うことを聞け」と言い出すに決まっている。その時になって、話が違うと泣いても遅い。
 賢明な国民の皆さん! くれぐれも、こんな小ずるいやり方にだまされてはいけませんぞ。 彼らは、多くの国民が思考停止に陥っている(それも政府が巧妙に招いていることだが)今が、たたみかけるチャンスだと 、汚い計算をしているのだ。
 2005年が、新たな戦前の始まりにならないことを、私は祈る。いや、祈るだけでなく、大いに発言してゆく。 ともすると私のような発言が異端と言われてしまうような、きな臭い世の中だからこそ。
 私のことを取り越し苦労とか、現実を見ていないとか、世界情勢をわきまえてないとか思う人こそ、 マインドコントロールされてしまっているんだ。目を覚ませ!

 11本17,850円セットの9本目。以前に00ヴィンテージを飲んでいるマコン。
 色は淡いイエロー。乳酸のミルキーな香りだが、スワリングすると火薬のようなフリンティな感じと、ココナッツみたいに妖艶で甘やかな香りが立ってくる。
 口の中では、意外にも収斂性のあるレモン的な酸が幅をきかせるが、飲み込んだ後に、ほんのりとした甘さ、 カスタード的こってり感が残る。でも、不必要な甘さはない。
 単体での通常価格は\1,575(本体価格1,500円+消費税75円)。
 ボーヌの本流とは格が違うのは明らかだけど、マコンってつくづくお買得だなあ、と実感させてくれるワイン。
 この値段で、この複雑さなら、もう言うことなしでしょ。
<評定:A>

2005年1月10日  ROSE 
LES COMPLICES DE PUECH-HAUT 2001 / COTEAUX DU LANGUEDOC
レ・コンプリス・ド・ピューシュ・オー / コトー・デュ・ラングドック
LANGUEDOC-RUSSION地方、AC:COTEAUX DU LANGUEDOC

Les Complices de Puech-Haut Rose 01  今日はまた前置きなしです。

 11本17,850円セットの10本目は、ラングドックのロゼ。
 夕食がブイヤベースだったので、今日しかないだろうと思い、これを開けた。ロゼって、開けるタイミングが本当に難しいのだ。
 色はオレンジ系が強く、濃いめの桜色といった感じか。 香りに派手さはなく、ドライトマトのように閉じた&乾いた感じ。
 甘味もほどほどで、花の蜜を吸ったようなさりげなさ。食事の邪魔をせず、そっと寄り添ってくれる印象だ。
 単体での通常価格は\1,995(本体価格1,900円+消費税95円)。
 使い勝手がよいという点で評価できるが、同じロゼでもタヴェルのようなしっかり感はないし、 アンジュのようなスイートさもない。ソツがないけど、卓抜したところもなければ、 可愛いげもない、老成した新入社員みたいなワインだ。これが1,000円なら、十分納得なんだけど・・。
 安ワイン道場師範も書かれていたけれど、 やっぱりロゼって、どうにも中途半端な存在だと思えてしまう。
<評定:C−>

2005年1月11日  BLANC 
CHATEAU MERCIAN J-FINE 2002 BLANC / メルシャン勝沼ワイナリー
シャトー・メルシャン ジェイ・フィーヌ シャルドネ&甲州
福島県産・長野県産シャルドネ、山梨県産甲州種

シャトー・メルシャン J-Fine 白  うっかりでは、済まされない。

 南野(のうの)法務大臣が、島根県議主催の新年会の挨拶で、ハンセン病について、 過去に使われていた差別的な病名を繰り返し使ったらしい。元患者らは、「大臣の意識が低い」として、 正式な抗議も検討しているという。
 ハンセン病に関しては、過去、誤った国策が原因で、患者は長い間いわれなき差別を受け、 そして今も、完全に悪い過去が断ち切られたとは言えない状況にある。
 元々感染力が弱い病気であるのに、隔離政策が取られ、 虐げられた人々の人権が完全に無視され、それにより国民の間に不当な差別感情が醸成された。
 正しい事実認識があれば、決して過去に使われていた蔑称を口走るようなことはないはずである。 一般人ならともかく、よりによって、人権を擁護すべき司法の最高責任者である法相が発言したとは、 言語道断である。決して「うっかり」で済まされるような問題ではない。
 そもそもこの国では、大臣の決め方に、問題がある。
 もうそろそろ大臣をやらせてもいいというメンバーが先にあり、その後で、誰をどこに配置するという決め方。 小泉内閣になってから、決め方が変わったとはいうものの、とても適材適所とは思えない人事が目立つ。 南野氏など、最初から法相の適性はなかったと言ってよい。
 例えば民間企業で、一度も営業をやったことのない人間が、営業部長に選ばれることなど考えられないが、 一国の国務大臣では、そういうことがまかり通っている。法務大臣が就任後、「法律を勉強中です」なんて堂々と言うに至っては、 国民も随分なめられたものだと思わざるを得ない。
 大臣だけではなく、政治家たる者、自分の発言の重さ、影響力の大きさに対する自覚を持つべきなのは、 言うまでもないことだろう。

 ところで、ハンセン病に関して認識のない方には、医学博士である故・神谷美恵子氏(ハンセン病隔離施設に生涯を捧げた医師) の著作をお薦めする。 私がこれまで出会った言葉の中で、間違いなく最も重く、美しい言葉が、氏の著作の中にある。
なぜ私たちでなくあなたが? あなたは代わって下さったのだ  代わって人としてあらゆるものを奪われ 地獄の責苦を悩みぬいて下さったのだ」 (神谷美恵子著作集2『人間をみつめて』みすず書房、1980年12月、133ページ)
 南野法相に、ぜひ読んで頂きたい一冊である。

 さて、今日のワインは、純国産。
 各方面から良い評価が聞こえていたのに、これまで入手できなかった1本。雑誌などでは、コンビニでも売っていると書かれているのに、 我が家の近所では、これまで見かけなかった。が、やっと入手。
 色は淡いイエローで、見た感じは何の変哲もない白。だが、香りを嗅いだ瞬間、打ちのめされる。
 栗、くるみなどのナッティーでオイリーな感じに、クリームビスケットのような甘やかな香りもある。 若干青臭い感じもあるので、シャルドネというよりは、ボルドーの上質なソーヴィニヨンみたいな感じだ。
 口に含めば、酸が優勢でクリスピーな飲み口だが、その後でタマゴのようなほっこりした甘味があって、妖艶。
 夕食に、若竹煮、金目鯛の開き、焼タラコと合わせていった時、ふとひらめいて、冷蔵庫からイカの塩辛を急遽出してきたら、 これがなんと恐ろしく合うではないか!
 純和食と純国産ワインの素晴らしきマリアージュ。ダイコンの味噌汁にも、焼海苔にもぴったり。 国産ワインにこれだけ感動したのは、久しぶりだ。
 裏ラベルに、「シャルドネらしい柑橘系の香りにバニラの風味がほどよく、しっかりした酸味が引き締める、繊細で洗練された スタイルをお楽しみください」とあるが、今回、柑橘系の香りは、あまり感じられなかった。
 もしかするとこれは、流通過程で高めの温度に晒され、奇跡的にちょうどいい塩梅に熟成して、頂点を迎えたのではないか? と私は勝手に推測する。元々長命ではないだろうけど、02ヴィンテージでここまで大人の風格を持っているのは不思議だからだ。
 ハーフボトルで、入手価格は\798(本体価格760円+消費税38円)。フルボトル換算で約1,500円也。ダイエー吹田店にて入手。
 私は、倍の値段でもいいと思うよ。メルシャンさん、いい仕事してますねえ。
 P/S:ハーフボトルとはいえ、コルクが恐ろしく短い。34mmしかなかった。最短記録ではないか。
<評定:AA>

2005年1月12日  BLANC 
CLOWDY BAY SAUVIGNON BLANC 2003
クラウディ・ベイ ソーヴィニヨン・ブラン
ニュージーランド、MARLBOROUGH

CLOWDY BAY SAUVIGNON 03  この国は、民主主義国家ではなくなったのか。

 政党のビラを配るためにマンションに侵入したとして、東京地検は、共産党支持者の男性を起訴した。
 地検の言い分は、「男性が各戸の玄関前まで立ち入ったことや、反省がないことなどを考慮し、違法性があると判断した」 とのこと。
 マンションには、「チラシなどの投函は固く禁じます」と張り紙がしてあったという。
 もちろん、住民が迷惑するようなチラシをむやみに投函することは、してはならない。だが、 これまでにも、営業用のチラシなどは数限りなく投函されているはず。それで、いったいどれだけの人が、 罪に問われたというのだろう。
 地検は、「ビラの内容は、身柄拘束や起訴には関係がない」としている。侵入したこと、反省がないことを理由にするなら、 消火器とか換気扇フィルターとかを売りつけにくる詐欺まがいの人間を早く取り締まって欲しい。
 事件当日、ビラを配った男性は、住民に取り押さえられたという。確かに住民から見て、目に余るところがあったのだろう。 だが、住民に「やめてくれ」と言われた際、男性は、「どこの部屋ですか? 配布は遠慮します」と応じていたという。 にもかかわらず、逮捕された。
 思想弾圧も、ついにここまで来たか、と思わざるを得ない。こういう公権力の横暴を放っておいてはならない、と思う。
 近年、思想の自由、言論の自由が、明らかに侵され始めている。
 NHKが、従軍慰安婦問題を扱った特集番組を01年に企画した際、 自民党の安倍晋三氏、中川昭一氏がNHK幹部を呼びつけ、「偏った内容だ」として、「放送をするな」と圧力を掛けていたことが、 明るみになった。「中立的な立場で報道せよ」との主旨だというが、どうもこの代議士たちは、「中立」を決めるのが自分たちだという、 恐ろしい考えを持っているらしい。
 自分たちの考えに合わない意見を、偏向的として糾弾する。これは、戦時中の思想弾圧そのものである。
 どんな見解も認め、自由に議論し合うのが民主主義の根幹であり、何者も排除しない姿勢こそが「中立」というものである。 そんなこともおわかりにならない政治家には、お辞め頂くしかないだろう。

 さて、気を取り直して、今日のワイン。
 最近、成長著しいニュージーランド。その中でも、ソーヴィニヨンは、素晴らしいものが多い。私は個人的に、一番注目している。これは、 その中でも最高峰と言っていいポジションかもしれない。
 液色は本当に淡く、この品種に典型的。まるで草むらの中にいるみたいに、むせかえるような緑の香りと、 グレープフルーツ的柑橘香。
 切れ込むような酸と、それに寄り添う苦味は、まさにグレープフルーツをかじったような味わいだ。 飲み込んだ後には、収斂性のある酸が、長く口中に残る。清冽で、ほどほどに艶やか。
 入手価格は\2,989(本体価格2,847円+消費税142円)。成城石井阪急三番街店にて。
 店のPOPによれば、「世界最高のソーヴィニヨンと絶賛された」ワインだとのこと。 世界最高というのは、クオリティが、ということではないんだな。 品種の特徴がストレートに出ているという意味で言えば、こんなにわかりやすく、素直なワインは貴重だと思う。 もちろん素晴らしく美味しいことは言うまでもないけれど、ボルドーの一流どころに勝ったか?と考えると・・・。
 まさに、ソーヴィニヨン以外に間違えようのない味。試験対策用に使えそうだ(私は、ソムリエ試験は受けたことないが)。 ここまで真っ向勝負なワインは、とっても気持ちがいい。その点は、大いに賞賛されていいだろう。ただ、値段がちょっとね・・・。
<評定:C+>

2005年1月14日  ROUGE 
CHATEAU MERCIAN J-FINE 2000 ROUGE / メルシャン勝沼ワイナリー
シャトー・メルシャン ジェイ・フィーヌ メルロー&マスカット・ベリーA
長野県産メルロー、山梨県産マスカット・ベリーA

シャトー・メルシャン J-Fine 赤  8億円は高いですか? 安いですか?

 青色発光ダイオードの技術に関する特許をめぐり、発明者の中村修二氏と、元勤務先の日亜化学工業との間で、 先日、約8億4000万円で和解が成立したと報じられた。
 12日に中村氏の記者会見が開かれ、その「怒りの会見」の様子がTVでも放送されていた。 これを見て私は、とっても不思議だった。
「日本の司法は腐ってますよ」と怒る中村氏の気持ちはわからないではない。だが、和解というのは、 互いに譲歩をして将来にわたって争いをやめることを約束し合う行為である。

 ※民法695条 和解ハ当事者カ互ニ譲歩ヲ為シテ其間ニ存スル争ヲ止ムルコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス

 文句があるなら和解せずに、行く所まで行くべきである。和解しておいて納得できないというのはルール違反である。 いくら裁判所に和解勧告をされ、弁護士にもそうしろと言われたからといって、和解する義務などない。
 会見の中で、「日本社会は文系が牛耳っていて、理系は冷遇されている。優秀な研究者は皆、アメリカに来るべきだ」 と述べていた。中村氏に限らず、多くの技術者が実感していることなのだろう。
 だが、「アメリカでは能力のある人は天井知らずの厚遇を受ける。もちろん能力のない人はダメですよ」とまくし立てる中村氏の姿には、 昨今の政治家を初めとする「実力主義」論者の浅ましさがそのまま現れていた。
 どんなに卓越した能力を持つ人であっても、周りのサポートがなければ、成功などできない。 現在の地位や達成した成果を、すべて自分の実力で勝ち得たかのごとく語る人を、私は好きになれない。
 そもそも日本の企業はこれまで、社員に発明対価をまともに支払ってこなかったのだから、 自分が本当に実力があると自覚する人は、会社を辞めてから、すべてのリスクを背負って、独力で発明を行うべきだ。そうすれば、いかに1人でやることが 難しいかがわかるはずだ。

 私は幸い組織人ではないから、自分がたった1人でどの程度のことができるか、思い知らされている。 私程度の人間でも、独立するために並大抵ではない苦労をしてきたと自覚しているけれど、 だからといって、今の自分があるのはすべて自分の実力だなどとは思っていない。
 実力主義を声高に叫ぶ人たちというのは、自分は成功者で、その成功はすべて自分の実力だなどと、 無邪気に信じていることが多い。だから、頑張らないヤツは報われなくて当然だなどと、平然と言う。 頑張りたくても頑張るチャンスすら与えられない人もたくさんいるという事実には、思いが至らないようだ。
「頑張った人が報われる社会」と、小泉首相などもよく言っているが、そういう発言をする人は、 頑張れる土俵が与えられている幸運に気づいていない。その鈍感さが、私は嫌いなのだ。
 こういう論調で書くと、オマエは日亜化学の肩を持つのか?などという○カがいるから言っておくが、 そもそも2万円しか報奨金を払わなかった会社の姿勢は、論ずる以前の問題だと思っている。 じゃあ、オマエはいったいどっちの味方なんだ?という○カもいるだろうけど、 そういう○カは、もう放っておくしかない。

 ところで、今回の発明をめぐる報道の姿勢に対しても、私は以前から大きな違和感を抱いていた。 それは、ノーベル賞級と言われる発明の技術的な内容そのものについても、 一審の東京地裁での約600億円という発明対価の認定についても、その当否について的確な判断を下す能力のない外野(メディアも、視聴者も)を相手に、 あれこれ知ったかぶりで語らせようとしていることに対してである。
 無論、私にも、技術的な知識があるわけではない。一審で特許権の額について、原告側から2通の、被告側から1通の鑑定が出て、 原告側の評価額が1500から概ね3000億円弱、被告側の評価額がなんとマイナス14億円で、それらを受けた判決額は約1200億円。 中村氏の貢献度が50%とされて約600億円が算出された、ということは、調べたから知っている。 私にその判決を批評するだけの能力はないからこれ以上言及しないが、今回の和解額だって、実に曖昧な中で決められたようだ。 中村氏が憤慨するのも当然だ。だからこそ最後まで戦って欲しかった。これ以上取れる見込がないからここで手を打ったというなら、 それこそ浅ましい。
 ニュース番組などで、「8億は高いと思いますか?」などという質問を街頭インタビューしていた。 そんなくだらない質問は止めて欲しい。答えられるわけないし、そうやって一般人の感想をとりまとめようとする危険性にも気づいて欲しい。

 さて、恐ろしく長い前置きに続いて、短い本編に行こう。
 先日、を絶賛したシャトー・メルシャン J-FINEの赤。メルローと、日本固有の品種であるマスカット・ベリーAで作られている。
 まずグラスに注いだ色は、ルビーというよりも少し褐色がかっている。香りは、ツンと立った酸の脇に皮革のニュアンスがあって、 まるでピノみたいだ。
 口に含むと、やはり酸が強く、クランベリーのような果実味。タンニンは程よく、スレンダーな酒質。 でも、決してスカスカというわけではない。
 どうしてメルローとマスカット・ベリーAを混ぜたらこんな味が生まれたのか、不思議だ。 それがアッサンブラージュの技術だ、と言ってしまえば簡単だが、純国産ぶどうだけでここまで素晴らしいものを造り上げる技術、 そして何よりも、それを日常価格帯で造ってしまったことに、驚かざるを得ない。
 ハーフボトルで、入手価格はと同じ\798(本体価格760円+消費税38円)。フルボトル換算で約1,500円也。ダイエー吹田店にて入手。
 このシリーズ、ここまでとは思っていなかっただけに、すっかり魅せられてしまった。 私の中に、しょせん国産という気持ちがあったとすれば、改めなければいけない。というより、これをこの値段で出しているメーカーの姿勢に、 改めて敬意を表したいと思う。
<評定:AA>

2005年1月15日  BLANC 
COTES DU RHONE 2003 / CELLIER DES CHARTREUX
コート・デュ・ローヌ / セリエ・デ・シャルトルー
COTES DU RHONE地方、AC:COTES DU RHONE

Cellier des Chartreux Cotes du Rhone 03  NHKの問題? 政治家の問題?

 12日の当日記に書いたNHKの番組に対する政治介入疑惑問題をめぐって、色々と騒がしくなってきた。
 渦中の安倍晋三氏がテレ朝系・報道ステーションに生出演して、「放送以前にNHKと接触したことはないし、 そもそも呼びつけたりしていない」と、強烈に反論していた。
 小泉首相も安倍氏らを擁護し、番組への介入などではなく、これはNHK内部の問題であると発言。またNHKも、 最初に(政治介入によって番組内容が改変されたと)報じた朝日新聞に対し、「事実を歪曲している」と抗議した。
 ただその一方で、NHK職員の労組(日本放送労働組合)は、NHK幹部の責任を追求する行動に出た。
 そもそもこの問題は、旧日本軍の慰安婦制度を裁いた民衆法廷「女性国際戦犯法廷」を取り上げたNHKの特集番組 「問われる戦時性暴力」(「戦争をどう裁くか」シリーズ第2回)の放送内容に関し、被写体となった市民団体 『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク(同法廷の主催団体)が、「放送内容に改ざんがあった」として、 NHKと制作会社を相手に損害賠償請求訴訟を起こしたところに端を発している。
 東京地裁は、「放送は被取材者の期待を裏切った」として、番組制作会社に損害賠償を命じた。被告側は控訴し、 現在東京高裁で係争中だ。
 そして今回、原告である同団体は、安倍・中川両議員とNHK幹部らを裁判所に証人申請したという。
 先日内部告発の会見をした現役NHK職員は、しきりに現在の海老沢体制を批判していた。これはたいへん勇気のある行動だと思うが、 こんなふうにNHKの内部で、自己崩壊が始まっているようにも見える。
 それぞれがそれぞれの立場で、思惑を持って発言しているから、慎重に見てゆかなくてはいけない。 その意味で、先日の私の書き方は、新聞報道を鵜呑みにした意見であり、暴走気味であったと反省している。
 これが政治介入でなく、NHK側が右翼団体の抗議に反応し、また政治(予算配分)に対し過度に萎縮した結果の行動だとしたら、 やはりNHK内部の体質が大きな問題だと言える。しかし、日本国と昭和天皇の戦争責任を問うという放送内容に関して こころよく思わない政治家は多いだろう。
 個人としてなら、どんな意見を持つことも良い。 私の嫌いな石原都知事とか民主党西村議員などは、常にそういう発言を繰り返している。だが、 政府与党として、国の過去を批判する意見を封殺するような行動は、絶対にあってはならないことである。
 この問題の事実解明がなされるまで、これからも厳しく見てゆこうと思う。

 さて、本題。
 11本17,850円セットの最後は、ローヌの白。
 色は黄色みが強い。柔らかな花の香りは、ヴィオニエか。ACローヌにしては華やいだ印象がある。
 口の中に丸い酸と、蜂蜜のような甘さが広がる。でもぼやけた感じではなく、最後は酸でキュッと締まる。
 単体での通常価格は\1,680(本体価格1,600円+消費税80円)。
 外見的にはパッと目を引くような存在ではないけれど、噛めば噛むほど味が出るような、実力派俳優的ワイン。
<評定:C>

2005年1月16日  ROUGE 
CHATEAU SAINTE-COLOMBE 2001 / COTES DE CASTILLON
シャトー・サント・コロンブ / コート・ド・カスティヨン
BORDEAUX地方、COTES DE CASTILLON地区、AC:COTES DE CASTILLON

Ch.Sainte-Colombe 01  真の実力主義を願うなら。

 14日の当日記で、青色LEDの発明者・中村氏と元勤務先との間で和解が成立した件を取り上げた。 その際私は、中村氏の言動に対して、否定的な書き方をした。これに関して、もう少し補足をしておきたい。
 発明に限らず、素晴らしい成果を上げた者に対して、相応の報酬が支払われるべきことは、当然である。 会社員だからといって、会社に対して滅私奉公をする義務などはない。 社員の貢献によって売上が伸びれば、それ相応の見返りがその社員に支払われなければならない。
 だが、成功報酬を受け取るためには、リスクを負わなくてはいけない。 リスクはすべて会社が負い、成功したときの報酬はすべて社員が受け取るというわけにはいかない。
 中村氏に関して、「中小企業の劣悪な環境の中で、ほとんど独力で発明を為した」と説明されることがある。 確かに、研究環境としてはお粗末だったのだろう。彼の存在と、強い意志がなければ、 地方の一中小企業が世界的な成功を収めることなどなかっただろう。
 しかし、たとえ中小企業であっても、 社員を雇って製造や研究開発を行っている以上、失敗した場合のリスクは、すべて会社が負っている。
 もし、本当の実力主義を願うのなら、失敗した場合のリスクもすべて自分1人で背負わなければならない。 たとえ失敗しても、それによって生じた巨額の負債を負わなくてもよい立場にいるのであれば、 成功した時に「独力で成功した」などとは、とても言えないはずである。それが、真の実力主義である。
 成功報酬というのは、独創性や技術や努力に支払われるのではなくて、リスクを取ったことに対して支払われるものなのだ。
 日本は「組織」重視の国で、アメリカは「個人」の能力を重視する国だなどと単純化して言われることが多いが、 それはアメリカが真っ当な国だということではなく、どれだけ個人にリスクを負わせ、個人の責任を追及するかの違いに過ぎない。
 現状のアメリカも、そのアメリカに必至に追随している日本にとっても、一番大きな問題点は、 真の実力主義を完徹できるだけの「機会の均等」を実現できていないということだ。
 そんな状況で、「能力のない人は報われなくて当然」などと言い放つのは、幸運に恵まれた強者の横暴に過ぎない。 それを実力主義とは決して言わない。

 さて、本日のワインはコート・ド・カスティヨン。場所としてはサンテミリオンの奥にあたるため、 同じようにしなやかなスタイルが予想される。
 100%ぶどうジュースのように、濃い青紫。香りはまだ閉じている感じ。 黒い果実のほか、紅茶の茶葉みたいな香ばしさがかすかに。グラスを回すと、少し鉛筆の黒鉛みたいな香りが出てくる。
 酸も甘味もやわらかい。タンニンは少し引っかかる。やはり若さか。
 入手価格\2,289(本体価格2,180円+消費税109円)。成城石井阪急三番街店にて。
 そんなに底力があるようには思わないけれど、もう少しだけ熟成させてから飲んだ方がよかったのかな。
<評定:C>

2005年1月19日  ROUGE 
CHATEAU CARONNE SAINTE GEMME 1997 (CRU BOURGEOIS SUPERIEUR) / HAUT-MEDOC
シャトー・カロンヌ・サント・ジェム(クリュ・ブルジョワ・スペリュール)/ オー・メドック
BORDEAUX地方、HAUT-MEDOC地区、AC:HAUT-MEDOC

Ch.Caronne Sainte Gemme 97  耳障りの良い言葉を用いた姑息なやり口には、断固反対。

 日本経団連が、憲法改正や国の安保体制に関する報告書を発表した。
 経済同友会、日本商工会議所も既に同様の報告書をまとめているが、 なぜ今経済人がこのような動きをするのかについては、彼らの真意、思惑を冷徹に見据える必要がある。
 今回の経団連の報告書では、改憲に関して、憲法全体を一度に見直すことは難しいとして、9条2項(戦力の不保持、交戦権の否認)と、 96条(改憲手続)に絞るべきだと主張した。
 こういう点を捉えて、「時代は確実に変わっており、日本が"普通の国"になるための下地が整いつつある」などと言いたい連中が多いだろうと 思うから、私は釘を刺しておきたい。
 右肩上がり経済が終焉を迎え、拡大再生産がもう望めない成熟した国となった今では、これまで需要があるにもかかわらず 法律の壁に阻まれてきた分野を法改正によって解放し、新たな拡大を画策するくらいしか、希望は残されていない。 その最たるものが、武器輸出の分野である。
 経済団体にとっては、「武器輸出3原則」はジャマ者と映る。ならば、その根底にある「平和主義」に手を加えるしかない。 だから憲法9条を改正して欲しい。
 折しも改憲論議が起こっており、政権党である自民党がそれを推進している。そこに賛意を示すことは、経済人として 二重にも三重にも得な話だ。そう考えるのは当然かもしれない。
 こういう動きに対して、私ははっきりと言っておきたい。

 カネのために平和を売り渡すような、倒錯したことはやめなさい。自分たちの主張の薄汚さに気づきなさい。 恥を知りなさい。

 報告書では、国はこれまでどおり「民主」「自由」「平和」を堅持するものとし、 国際社会から信頼・尊敬され、経済社会の繁栄と精神の豊かさを実現し、公正・公平で、安心・安全な国家 を、目指すべき国家像としている。
 このようにどこからも批判が出ないような美辞麗句が並んでいたら、実は要注意なのである。 誰も面と向かって、戦争のできる国にしたいなんて、言うわけがないからである。
 特に「国際社会から信頼・尊敬」される国という表現は、首相などもよく口走る言葉だが、必ず「人的支援を含めた国際貢献」 とセットで語られることに注意したい。
 自衛隊を「本来任務」として海外に派遣して、世界に冠たる国としての自尊心を満たし、同時に武器も堂々と輸出して経済界も潤う。 集団的自衛権も認めれば、その機会はなお増える。
 こういう下心で政界と財界が通じている。そんなにまでして自分たちの存在感をアピールしなければ不安を払拭できないほど、 この国のイイ歳した男たちはガキっぽくなってしまっているのか。見にくいぞ。汚いぞ。
 耳障りの良い言葉を用いた姑息なやり口に、私は断固反対する。

 本日登場は、メドックのブルジョワ級。ハーフボトル。
 色は濃く、足は長く、なかなか良さそうな外観。ピリッとスパイシーな香り。土のようなニュアンスもある。
 口の中で意外にも甘味がふんわりと広がる。タンニンはやわらかく、こなれているが、 少し酸に尖りがあるので、まだ旬の年齢には届いていないのか。
 入手価格は\934(本体価格890円+消費税44円)。成城石井阪急三番街店にて。
 セール品で、本来は1,200円程度らしいので、フルボトル換算では2,400円以上か。 それでもこの内容なら文句ない。
<評定:C>

2005年1月20日  BLANC 
THUNGERSHEIMER JOHANNISBERG (Q.b.A.) 2003 SILVANER TROCKEN / JAKOB GERHARDT
テュンガースハイマー・ヨハニスベルク ジルヴァナー・トロッケン / ヤコブ・ゲアハルト
ドイツ、FRANKEN地方

J.Gerhardt Thungersheimer Johannisberg 03 「ゆとり」のまやかしを、今こそ改めよ。

 中山文部科学相が先日、子供の学力低下問題に関連して、新学習指導要領の象徴である「総合的な学習の時間」 の削減を含めた教育課程の見直しが必要との見解を示した。
 中山大臣は、国語・算数・理科・社会の授業数を増やすべきことを強調し、「ゆとり教育」が学力低下の原因の一つであるとの 考えを明らかにした。
 これまで文科省は、子供の学力低下という事実自体を認めてこなかった。それは、「ゆとり教育」が失敗であったことを認めたくなかったからだ。 だからこそ今回の中山大臣の発言には大きな意味があるし、評価すべきだと思う。
 そもそも私は「ゆとり教育」なるものに、反対である。過去、受験戦争が激化し、詰め込み教育が横行したから、 子供の考える力が弱くなったとの主張が主力だが、私はそうは思わない。
 私は基本的に、子供に勉強を強要することは良くないと思っているが、だからといって、子供の自主性に任せれば、 自ら考える力がつくなどという、お気楽な考えに与することもできない。
 私自身、子を持つ親として、教育面で我が子にどう対峙してゆくかということは、大きな問題であるのだが、 一番大切なことは、親自らが常に学ぶ姿勢を見せるということに尽きると思っている。 学ぶことはこんなに楽しくて、学ぶことによってこれだけ世界が開けるのだということを、具体的に示す努力をしているつもりだ。 自分が日々勉強もしないで、子供にだけ強制するなんて、ちゃんちゃらおかしいではないか。
 だが、そのような方針の一方で、ある程度強制的にレールを敷くことも必要だと考えてきた。 だから、幼児の頃から英会話を「強制的に」習わせている。
 もちろん親の一存で勉強を強制したとしても、本人が辞めたいという意思を明確に表示したならば、その意思を尊重する。 親に方針変更を要求するのなら、その必要性を理路整然と説明しなさい、という態度を私は取っている。辞めたい理由をちゃんと説明できるなら、 いつでも辞めさせてあげる、という逃げ道を与えた上で、強制をしているのだ。英会話だけでなく、サッカークラブも。
 現在小2の息子の学校の教科書は、恐ろしく薄い。量をやればいいというものではないが、こんなに教科書が薄く、授業も少ないと、 そもそも考えるということをしなくなるだろうなあ、と思う。
 詰め込み教育や受験戦争が悪いのではなくて、人間として自分の未来に夢が描けなくなっている社会の風潮が最も問題なのだと、 私は思っている。だから、「ゆとり教育」などというくだらない方針はさっさと捨て、学ぶ習慣を身につけさせるとともに、 その先に続く明るいビジョンを子供に示すことのできる人間に、大人自身がならなくてはいけないと思う。 そう、問題は、大人の側にあるのだ。

 さて、本日のワインは、当日記ではめずらしいドイツ。
 どれくらいめずらしいかというと、当サイト開設から今日までの約4年半の間に、これを入れて7本。単純計算で、1年に1.5本ということになる。
 ドイツが嫌いなのか?と問われれば、決して嫌いなわけではない。自宅外では、たとえばEisweinを飲んで、おいしいなあ、と思うことはある。 だが、日本に流通するドイツは、食事に合わせにくいものが多い。それで、買う機会も必然的に少なくなる。
 今日のワインも購入したものではなく、いただきもの。もちろん遠慮なく評価するのは、言うまでもない。
 色は清々しい感じの漂うイエローグリーン。オレンジのような若干丸い柑橘香に、白い花やベビーパウダー、生クリームの香り。
 若々しく、ふくよかな酸には嫌みがなく、可憐な印象。フランケンにしてはかなり果実味を感じるタイプで、 食事には少し合わせにくいが、フルーツとならぴったりくる感じ。
 値段がわからないから本当は評価できないのだが、2,000円台くらいかな?と考え、下記評定。
<評定:C−>

2005年1月21日  ROUGE 
CHATEAU TOUR DES TERMES 1996 (CRU BOURGEOIS) / SAINT-ESTEPHE
シャトー・トゥール・デ・テルム(クリュ・ブルジョワ)/ サン・テステフ
BORDEAUX地方、HAUT-MEDOC地区、AC:ST-ESTEPHE

Ch.Tour des Termes 96 「自由」のために人を殺す矛盾。

 ワシントンで、ブッシュ大統領の第2期就任式が行われた。
 そこでやたらと連発していたのが、自由(freedom)という言葉。圧制政治を封殺し、世界に自由をもたらさなくてはいけない。 それを実現するのがアメリカだ。そういう無邪気ともいえる強い確信が大統領にはあり、そこに疑いの気持ちを差し挟む余地など、皆無であるようだ。
 まあ、「子供」の発言と思って、軽く笑って受け流すのが大人の対応というものだが、その「子供」に世界最強の権力が与えられてしまっているのだから、始末が悪い。 さらに悪いのは、「自由」という言葉には、単純な人間ほど魅了してしまう魔力が備わっているということ。
 ブッシュ氏や日本の多くの政治家みたいに、物事を二項対立でしか考えられない連中にとっては、「悪」をやっつけ、「誤り」を正して、「自由」を実現することが、 絶対的命題であるようだが、その傲慢の陰に多くの犠牲が発生していることには気づかないか、気づいても「必要な痛み」などと平然と言ってのける。
 はっきり言おう。この世に100%正しいことなど、ただの一つも存在しない。100%の善意で行った行為が、 他者を傷つけることはよくある。しかも心を傷つけるだけではなく、命まで損なう状況を招いているのが、「正義」の現実だ。
 自分のやっていることに、一点の疑問も持たないことほど、危険なことはないのだ。 良いことをしているという自覚があるときほど、違う視点から考えてみる必要がある。
 マザコン・ブッシュの姿を見て、せめて我々は、その程度のことを学ぼう。

 閑話休題。
 最近、私が頻繁に利用しているのは、成城石井阪急三番街店(大阪梅田)である。その理由のひとつが、手頃なハーフボトルが充実していること。 今日のワインも、同店で購入したハーフである。
 色は黒っぽく、濁りがある。エスプレッソのような焦げ臭と、チョコレートの甘い香り。 だが、まだ開ききっていない感じがする。
 タンニンも力強いというよりは、ぶっきらぼうで、こなれていない。舌の上に、ふんわりした甘味が転がるが、 つぼみのように硬い印象。
 入手価格は\1,564(本体価格1,490円+消費税74円)。フルボトル換算で、約3,000円。
 焦げた感じのワインが私は好きだという点を差し引いても、これは十分スケール感を感じることができ、なかなかだと思う。
 元々地味めの性格ながら、一生懸命社会を学び始め、その実力と魅力を開花しつつあるOL一年生みたいなワイン。
<評定:C+>

2005年1月23日  BLANC 
CHATEAU DE CHANTEGRIVE 2001 / GRAVES
シャトー・ド・シャントグリーヴ / グラーヴ
BORDEAUX地方、GRAVES地区、AC:GRAVES

Ch. de Chantegrive 01  嘘つきは、誰だ。

 NHKの番組改編問題で、朝日新聞がNHKに対して、法的措置を前提に、訂正と謝罪を求める通告書を発送した。
 以前に詳しく書いたから事の経緯については繰り返さないが、話がだんだん本筋からそれてゆくことを、私は恐れる。
 そもそもNHKに対して政治家の圧力があったか否かが問題なのであって、朝日がこんなことを書いたとか、 NHKがこんなに一方的な放送をしたとか、そういう卑小な次元に、問題をすり替えてはならない。
 私が最も問題だと感じたのは、今回の改変問題に限らず、 「NHKは国家予算をもらっているから政治家に気を遣うのは当然」というような論調があることだ。 それこそが、公正中立を旨とする報道機関にあってはならないことである(私は、この公正中立という言い草自体も、 とてもうさんくさいと思っているのだが)。
 とにかく誰が嘘を言っているのか、すべてが白日の下に晒されることを、強く望む。

 本日のワインは、この時期にはそれほどふさわしいとは思えないグラーヴの白。
 色はほのかに黄色い程度。これは当然だろう。香りは、初夏の草原で風船を持って遊んでいるような感じ(?)。 つまり、緑の匂いが強く、それにゴムかビニールみたいな感じがプラスされる。まあこれも正統派のソーヴィニヨンならでは。
 レモンのようにキリッとした酸。甘味はなく、後味もしゃっきり。飲み込んだ後にも豊かなハーブ香が。
 入手価格は\1,879(本体価格1,790円+消費税89円)。成城石井阪急三番街店にて。
 やっぱりソーヴィニヨンはグラーヴ!と思わせてくれる本格派。もちろんこのクラスだからパワーなど望むべくもないが、 ヘタにスケール感とかを追ってない点が、好印象。等身大の魅力っていうか。
<評定:C+>

2005年1月24日  ROUGE 
CHATEAU COS LABORY 1997 GRAND CRU CLASSE / SAINT ESTEPHE
シャトー・コス・ラボリィ(グラン・クリュ・クラッセ / 第5級)/ サン・テステフ
BORDEAUX地方、HAUT-MEDOC地区、AC:ST-ESTEPHE

Ch. Cos Labory 97  書きたいことは色々あれど、その時間がない。よって、今日は前置きなしに、本題へ。

 またまたちょっと良さげなハーフボトル。この程度なら、懐が痛まずにちょっとリッチな気分が楽しめる。
 このクラスだと、97ヴィンテージでももう飲み頃になっているかもしれないな、と思いながら開ける。
 グラスの縁にほんの少しオレンジ色が入り始めてるかな?という程度で、いわば大人になりかけ。 スパイシーで甘苦い香り。グラスを回すと、チョコレートのような甘い香り+動物臭が。
 タンニンがまだギスギスしていて、少し落ち着きがない。しかし、深みのある甘さはさすがで、 もっと熟成させれば奥行きが出るだろうな、と思う。
 入手価格は\1,789(本体価格1,704円+消費税85円)。成城石井阪急三番街店にて。
 フルボトル換算では3,500円程度だが、過不足ない内容。
<評定:C>

2005年1月28日  ROUGE 
CHATEAU SIRAN 1997(CRU BOURGEOIS EXCEPTIONNEL)/ MARGAUX
シャトー・シラン(クリュ・ブルジョワ・エクセプショネル)/ マルゴー
BORDEAUX地方、HAUT-MEDOC地区、MARGAUX村、AC:MARGAUX

Ch. Siran 97  本日は2題。

 その1

 東京都の職員で在日韓国人2世の女性が管理職試験の受験を拒否されたため、都を提訴し、 当該受験拒否が法の下の平等に違反するか否かが争われていた裁判で、最高裁は、 二審の地裁判決(違憲と判断)を破棄し、拒否は合憲と判断した。
 公権力を行使する幹部職員に、外国人が就任することはそもそも想定されていない、というのが 理由の一つのようだ。しかし、そういうもっともらしい言い草の裏に、大きな問題が隠れていることを見逃してはならない。
 そもそも在日韓国・朝鮮人を、単純に「外国人」という枠で考えることの妥当性は?
 日本で生まれ育った2世の人たちは、この国の文化の中で成長し、義務を果たし、社会に貢献してきた。 ただ日本国籍でないという理由で、選挙権も被選挙権も与えられていない一方で、納税義務だけは課せられている。 権利が与えられず義務だけ負わされるという状況は、いわば彼らに対しては、いまだに植民地支配が続いているようなものだ。
 国の活力を真剣に考えるのであれば、国籍や性別や年齢などにかかわりなく、個人の能力に従って適性に人員配置を行うべきことは、 言うまでもないことだろう。民間企業では、そんなこと既に当たり前の常識だ。
 在日韓国・朝鮮人の方たちの多い関西の自治体では、管理職登用に国籍制限を撤廃している所も多い。 それに比べて、なんと時代錯誤な東京都・・。さらにそれを合憲とした不見識な最高裁判事たち・・。
 原告の鄭さんは、会見で、「哀れな国ですね」と言った。まったく同感である。

 その2 

 NHKの海老沢元会長が、辞任した直後に顧問に就任したと思ったら、世間の猛反発にあって結局、辞退した。
 当然の結末である。
 確かに新執行部からすれば、独裁者だった海老沢氏に残ってもらった方が、色々都合もいいのだろう。 記者から「反発があることくらい予想がつかなかったのか」と問われ、 「予想はしていたが、これほどまでとは予想していなかった」と新会長。
 それって、バレなきゃいいか、バレても大ごとにならなきゃいいか、ってほどのケチ臭い発想だな。
 首相も郵政民営化にばかり血道を上げる前に、NHKの民営化を考えるべきじゃないですかね。

 本日の登場もハーフボトル。
 色はやや暗めのルビー。ボルドーにしては透過性が高い感じ。 香りは梅酒と皮革。重みはなく、酸が中心。
 甘酸っぱさが口中に広がり、同時に、まだ荒く収斂性のあるタンニンが唇の裏側にひっかかる。 喉ごしはやわらかい。
 入手価格は\1,789(本体価格1,704円+消費税85円)。成城石井阪急三番街店にて。
 フルボトル換算で3,500円程度だが、ちょっともの足りない。ボルドーらしからぬ味わいで、 面白いんだけどね。
 エチケットにGRAND CRU EXCEPTIONNELと書いてある。そんな格付があったのか?と思ったが、 CRU BOURGEOIS EXCEPTIONNELのようである。どうやらその昔、CRU BOURGEOISができた当時の表記らしい。
<評定:C−>

2005年1月30日  BLANC 
JACOB'S CREEK CHARDONNAY 2003
ジェイコブズ・クリーク シャルドネ
オーストラリア

Jacob's Creek Chardonnay  風邪をひいても、いつもどおり。

 風邪をひいた。喉をやられて、声が出なくなった。熱が出て、悪寒がする。
 でも仕事は忙しい。日中は、客先など外へ出る。夜は、土日でも深夜までPCに向かう。
 一番ひどかったのが週中頃。外を歩いていても、ふわふわと雲の上を歩いているような感じ。 でも、ようやく収まってきた。
 そんな状況下でも、いつもどおり酒を飲み、仕事のペースも緩めず、ほぼ休日もなく、決して寝込んだりしない。
 やけくそになっているわけではない。これはこれで楽しいな、と他人事みたいに思っている。
 忙しさを自慢するようなけちくさい人間にはなりたくないけど、あえて忙しいと言うことによって、 自分の中でバランスを取っているのかもしれない。決して辛いわけではないけれど。
 wineは逃避ではなく、やっぱり私の人生のアクセントになっている。
 それにつけても幸いだったのは、喉の風邪なので鼻は利き、味はわかるという点である。

 さて本日は久々のオーストラリア。
 ただ、オーストラリアのシャルドネというと、正直あまり期待できない。そう思いつつ購入した。
 グラスに注ぐと、イエローグリーンの液体は、美しく輝いている。鼻を近づけると、 オレンジのような華やかな柑橘香を強く感じると同時に、ヨーグルトの香りが。 グラスを回すと、さらにナッツの香りも出て来て、良くできたシャルドネだなあと思う。
 それ相応に厚みのあるボディを想像したが、口に含んでまた驚かされる。 レモンのように収斂性のある酸。思わず「酸っぱい」と叫びたくなるほど。 でもその下に蜂蜜的な甘さがある。安っぽい表現をすれば、つまり、はちみつレモンの味だ。 酸と甘味が、やや分裂気味に共存している。
 何口飲んでも酸のインパクトに慣らされることはなく、その都度、新鮮な感動がある。 酸っぱいのに、口中で転がしているとじんわり甘味が感じられる。
 入手価格は\1,144(本体価格1,090円+消費税54円)。成城石井阪急三番街店にて。
 いやあ、お見それしました。国名とか、値段の先入観で侮ってはいけないということを、 改めて思い知らされた1本。余韻が短いのは否めないけれど、1,000円ワインに、そこまで望むのは酷だ。
<評定:A+>


HOME  利酒日記のメニューページへ  産地別索引へ  前月へ  翌月へ  このページのトップへ