時事ネタコラムのページ [利酒日記別室]

2007年11月


2007年11月4日
 日本の民主主義そのものが、問われている


 ここ数日で、政治状況が急展開した。

 福田首相が民主党小沢代表との会談で大連立を持ちかけた(らしい)。 小沢氏はこれを一旦党に持ち帰ったところ、党役員たちに「そんなことはありえない」 と明確に拒否された。

 自民党側は、拒否の回答があまりにも早すぎて残念だとの反応。 民主党側は、小沢代表がその場で即座に拒絶せず、検討の余地を見せたことに 党内部で不信感が生まれた。

 小沢氏は、この党内の混乱の責任を取り代表の職を辞すると、本日4日、緊急会見を開いて発表した。

 この一連の対応を見ていると、民主党が一枚岩でないということがよくわかる。 もしかすると福田首相は、連立を組んだ上で、次の選挙後の情勢によっては、小沢氏を次期首相に、という提案を 向けたのかもしれない。 ところが、民主党執行部にとっては、そんな形を望むはずもなく、 連立を組むなら今すぐ小沢首相を実現し、民主党主導の政治に転換するか、 そうでないなら次の選挙で衆議院でも自分たちが過半数をとって政権奪取と行きたいところ。

 結局、自民党側の中途半端な誘惑に、心揺らしてしまった小沢代表に対する党内での不信感が増長する結果となったの ではないか。

 「ねじれ国会」とか、その影響で重要法案が止まってしまうといった指摘が絶えないが、 私は現在の状況を、とても好ましいと思っている。衆参で優劣が逆転していることを「ねじれ」 と称する人が多いようだが、こうやって二大政党が拮抗していることが、 民意をうまく吸い上げることに貢献していると、私は思う。

 はっきり申し上げておくが、「大連立」と称する平成の大政翼賛会など、 絶対に阻止しなければならない。大連立を支持する政治評論家がいるということ自体、 とても信じられない。民主主義の何たるかを、まったく理解していない、 狂気の沙汰である(まあ、彼らは民主主義を否定したい人たちなのだと思うが)。

 法案を通すためというが、ほぼオール与党の体制下で決定される政策など、 密室談合以外の何ものでもない。 そんな危険な政治状況に、絶対にしてはいけない。 もしそうなったら、国民の意見などまったく無視され、どんな横暴もまかり通ってしまう。

 小沢氏の代表辞任で、民主党が分裂しないことを願うばかりである。 これもすべて自民党の手練手管なのかもしれない。相手を切り崩して、仲間に取り込もうという。 だが、そんな策略に易々と乗せられてしまったら、参院選で民主党に投票した多くの国民を、 裏切ることになる。その点だけは、民主党幹部の面々には、重々ご理解いただきたいと思う。

 大連立の話が出てきたとき、「もしそんなことになったら、日本の政治そのものが、終わってしまいます」 とTVでコメントしていた識者がいたが、私もまったく同感である。 この国の健全な民主主義を護るため、戦前に戻るような愚行を絶対に許してはならない。

2007年11月12日
 密室政治は、許されない


 大連立構想を持ちかけたのは、読売新聞社主筆・渡辺恒雄氏だったと報道されている。 同紙が早くから社説で大連立を呼びかけていたことを考えると、どうやら本当のようである。

 報道機関の使命は、世の中の出来事を正確に伝えることだと思うのだが、 読売に限らず、自分たちが世論をつくっているなどと勘違いしているメディアが少なくないのは、 困ったものである。

 もちろん、「事実」というのは、見る人によって見え方も解釈の仕方も違うから、 報道とは、伝え手のフィルターを通した伝達であるということを忘れてはならない。 様々な伝え手が、それぞれのスタンスで報道するということが大切だから、 読売のスタンス、産経のスタンス、朝日のスタンス、地方紙のスタンスなど、 多くの見解が同居する社会が健全な社会なのである。

 だが、自らの「伝えるスタンス」を超えて、 自分たちが世の中を動かそうなどと一新聞社が考え始めるのは、 明らかに役割を逸脱している。大いなる勘違いをしているとしか思えない。

 大連立を支持する人たちは、現在のねじれ国会では法案がストップしてしまうから、 国民生活に必要な法案が通る政治体制にすべきだと言う。 しかし私は、そのような意見にはまったく賛同できない。

 本当に国民のためになる法案ならば、与党と野党が協調して通すべきものである。 何でもかんでも反対するのが野党の役目などではないし、立場の違う政党が、 しのぎを削って一つにまとめ上げてこそ、よりよいルールが出来上がるはずである。

 参院選前の安倍政権が、数にものを言わせて悪法を勝手にどんどん成立させていったことを思えば、 現在の状況はとても好ましいものだと、私は思う。 与党が衆参で絶対的多数を保っていることほど、国民にとって危ない状況はないのである。

 成立してしまった最悪の法律の一つに、いわゆる障害者自立支援法がある。 同法は、言うなれば「社会的弱者見殺し法」だと私は思うのだが、 福田首相は同法の見直しを口にしたものの、その後進展はない。 一日も早く再改正してほしいが、衆参勢力が逆転している状況でこそ、 好ましい方向に進んでくれると思う。

 民主党小沢代表の不可解な行動に対して、批判の声が多いのは当然であるが、 与党に対する強大な批判勢力はやはり絶対に必要である。

 大多数の国会議員が我々の見えないところで話し合って政策を決めるような密室政治を、 断じて許してはなるまい。国会の場で正々堂々と論戦をして、 国民に見える形で政治を進めて欲しい。 知らないうちに法律が成立していたなんて状況は、もうこりごりである。


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