時事ネタコラムのページ [利酒日記別室]

2008年12月


2008年12月25日
 車中の光景


 電車に乗ると、ヒューマンウオッチングをするのもひとつの楽しみ。 人のプライバシーに詮索するのはあまり良い趣味ではないかもしれないが、 様々な人間ドラマがあるので面白く、つい他人を観察してしまう。

 今日、出掛けた帰りの地下鉄車内で見た光景。

 20代半ばの女性と、その職場の先輩と思われる少し年上の男性が二人で 仕事関係の話をしている。12月25日夜7時頃のことであるが、二人とも家路につく途中らしい。
 会社の誰それが電撃結婚した、といった話になり、 女性がひと言、「アタシまだ、結婚なんて、まったく考えたことないですけど・・」。 ニコッと、彼女は笑う。男性は黙っている。
 傍から見れば、恋人未満の二人のようにも見える。
 二人はひとしきり、結婚した同僚の話で盛り上がっていたが、 女性の降りる駅が近づいてきた。
 クリスマスの夜に、このまま普通に「お疲れさま」と別れてゆくのか。
 電車が駅に止まり、彼女はコクリ、コクリと、2回首をかしげるように動かし、 「じゃ、失礼します」と、はにかんだような笑顔を見せ、電車を降りていった。

 私の勝手な妄想混じりで描写したが、もしかすると男性のほうは妻帯者で、 二人とも私が妄想したような心模様ではなかったのかもしれない。 でも、あのちょっとぎこちない会話の様子から、特に彼女のほうが、 悪からぬ感情を男性に抱いていることが感じられた。

 少し残念な気持ちを抱えて、もうあんなときめきからは縁遠くなってしまったオジサンであるこの私も、 電車を降り、一人家路についたのであった。

2008年12月30日
 激動の1年でした


 今月12日に京都清水寺で発表された今年の漢字は「変」。色々なものが変わった1年だった ということだろう。

 何よりここまで急激に景気が悪化するとは、皆の予想を超えていた。まさに経済状況の激変である。

 この年の瀬に、多くの企業で派遣社員等の一斉解雇が行われると、TVなどで大々的に報道されている。 表立った報道では、それを憂える論調一色なのだが、ネット上などでは、 「この厳しい情勢では企業が雇用調整するのは当たり前」「1ヶ月以上の予告期間を設けて解雇するのは 適法なのだから、騒ぎたてるべきではない」といった意見も散見される。

 一方の側(この場合は解雇される側)からの意見だけを採り上げることは、 報道姿勢としてはあってはならないこと。だから、解雇する企業側の言い分も、本当は取り上げたうえで、 議論を提起すべきだとは、私も思う。

 以上の基本姿勢を踏まえたうえで、あえて私は今年の最後にひとこと言いたい。

 近年、アメリカから輸入された株主資本主義を背景に、企業は従業員を大事にしなくなった。 いや、お金を第一にして、人を大事にしなくなったと言ったほうがいいだろう。 企業の優先順位は、1.株主への配当、2.経営者及び役員報酬、3.内部留保。そしてやっとその次に、社員の給与と いった感じだ。だから、「雇用調整をするのは当たり前」といった意見が、平気で跋扈する。

 一番腹が立つのは、そういった意見をしたり顔で言う連中が、概して自分は成功者だと自覚していて、 その自分の地位はすべて自分の努力で勝ち取ったと思っているところだ。

 自分の稼いだカネで、六本木ヒルズのような所に住み、高級外車を乗り回すのは自由である。 それをとやかく言うつもりなど毛頭ない。いやむしろそうやって消費をして、 景気拡大に積極的に貢献すべきであろう。だが、彼らがその今の自分の居場所を、 自分の力だけで勝ち取ったと思っているとしたら、 単なる恥知らずである。 「頑張った人間は報われるべき。頑張らないヤツは報われなくて当然」などという傲慢な意見は、 大抵そういう連中から発せられる。 だからワークシェアリングなんて発想も、彼らにはないのだ。

 生まれたときから金銭的に恵まれず、家族の愛にも恵まれず、 学校に行きたくとも行けず、その結果、実力をつけるチャンスすら与えられない。 そういう人たちがこの国にはたくさんいるという事実に思いが至らないとしたら、 あまりにも世間知らずである。知っているのに見ないふりをして、平気で彼らを踏みにじる発言を しているとしたら、人の顔をした鬼畜である。

 言論の自由は保障されるべきだから、「フリーターは甘ったれ」と全部をひとまとめにして、 言ってのけるのも自由である。 だが、少なくとも私は、そんな単細胞な連中とは、絶対に友だちにはならない。

 好きなことを仕事にすることができて、曲がりなりにも人並みに生活させていただき、 このような趣味にうつつを抜かすことのできる 今の私の境遇は、本当にありがたいと思っている。周りの人の支えや、様々な巡り合わせ がなければ、私も路頭に迷っていたかもしれない。 いや、これからだっていつ路頭に迷うかもしれない。確かに私も少なからず努力はしてきたが、 首尾良く事を運ぶことが出来たのは、単に運が良かっただけだと思っている。

 努力をしなければ決して結果は出ないが、努力をしたからといって、目標を達せられるとは限らない。 むしろ頑張っても報われないのが、この世の中である。

 だからこそ、感謝の気持ちを忘れない人間でありたい。人の痛みに対して想像力を持てる人間でありたい と思う。

(たぶん、このような意見を言う私のような人間を、彼らは偽善者と言うんだろうな。 べつになんと言われようとかまわない。ここに書いていることはすべて本気でそう思っているし、 この社会を私は変えたいと思っている)
 来年こそ、この国がもっと人を大事にする社会に変わりますように。包容力のある社会に変わりますように。

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 これで、今年の当ページのコラムは最後です。
 あまり更新できなかったけれど、1年間ありがとうございました。
 新年が貴方にとってより一層意義深き年となりますように。


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