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2009年4月


2009年4月25日
 最低の制度。


 有名タレントが公然わいせつの容疑で逮捕された事件について、 鳩山総務相が「最低の人間としか思えない」と一時は発言したが、 後にこれを撤回した。

 鳩山氏の発言は、よりによって同省が進めている地デジ(地上デジタル放送)のメインキャラクターが とんでもない事件を起こしたことに対する怒りの感情からと思われ、 まあ気持ちはわからないでもないが、「最低の人間」とは明らかに言い過ぎである。

 鳩山氏の発言に対し、総務省や同氏の事務所に多数の苦情が寄せられたことから、 発言の撤回となったようだが、その苦情の数々が、良いセンスをしている。

 「最低などと言える立場か」「今の政治のほうが最低だ」といった苦情だったそうで、 苦情主に、座布団一枚あげたいくらいである。

 最低といえば、そもそも最低なのは、地デジである。

 我が家も昨年、古いTVが壊れたときに、仕方なくというか、必然的に地デジ対応の薄型TVを購入した。 多くの人はあまり気づいていないかもしれないが、テレビ受信機に必ず入っているB-CASカード (これが入っていないと視聴できないしくみ)は、一企業であるB-CAS社の独占事業となっている。
 このB-CAS社((株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ) については、良からぬ利権の温床になっているのではないかと、各方面から指摘されている。

 視聴者の利益など実は何も考えていないという良い例が、区域外再送信拒否の問題である。

 そもそもテレビ放送は「県域免許」といって、基本的に都道府県単位で放送区域が決められている (関東広域圏、関西広域圏などは例外)のだが、民放の局数が少ない県などを中心に、 従来は、隣接県などの放送を受信して、CATV事業者がケーブルで加入者に送信するしくみが、 全国各地で認められてきた。これを「区域外再送信」という。 ところが、地デジ化を契機に、区域外再送信を認めない方向へと動いているというのだ。

 具体例としては、三重県西部の伊賀地方は歴史的に関西地区との結びつきが強く、 現在でも名張市などを中心に、大阪のベッドタウンとなっていて、 TVのアナログ放送は、区域外再送信で関西広域圏の放送(関西準キー局各社)が視聴されている。 ところが、三重県はもともと中京広域圏にくくられることから、地デジ化を契機に、 関西準キー局の放送の再送信を認めないように、圧力がかかっているらしい(ただ、誤解のないように付け加えれば、 総務省がそういう方針なのではなく、視聴率が落ちると思われるほうのテレビ局からの圧力である)。

 伊賀地方の住民の方々は、従来から「伊賀は関西」というキャッチフレーズを掲げて、 三重県というだけでお上が強引に中京圏にカテゴライズしようとすることに、抵抗してきた。 名張市や伊賀市などに住み、大阪方面に通っている方々からすれば、 日常生活に何の関係もない名古屋方面の天気予報やニュースだけを見せられても、 迷惑なだけであろう。

 どのTVを見るかは、消費者である視聴者が決めることではないのか。 それを、地デジ化をきっかけに、弱小放送局を守るためだけに「県域放送」を堅守しようとするなど、 消費者無視の最低の制度である。

 またこのような問題は、道州制の議論とも関係してくる。

 先日、仕事で山口県を訪ねたとき、同地の方もお上の横暴に対して、 懸念を表明されていた。
 県内でも特に下関市などは、歴史的、経済的に北九州との結びつきが強く、もし今のまま 道州制という名の都道府県合併が推進されると、下関市は広島を州都とする中国州に編入されてしまう。 そうなる前に、北九州市に編入してもらいたい、とおっしゃる方もいた。
 地方分権を旗印に道州制を進めるのなら、今の都道府県の区域は一旦ご破算にして、 住民が自主的にどの州に入りたいかを決めるようなしくみにすべきだと思う。

 新たな制度を導入するのに、市民を無視して行うなんてことが、 許されるはずはないのである。


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