時事ネタコラムのページ [利酒日記別室]

2011年11月


2011年11月8日
 政治に出自は関係ない


 先月のこのコーナーでも書いているが、大阪府知事を辞任し、大阪市長選に出馬する橋下徹氏の 掲げている様々な政策について、私は否定的な見解を持っている。彼の独善的な手法には、 世間でも賛同の声と、批判の声が入り乱れている状況だ。

 彼が大阪市長への転身を示唆した頃から、いくつかの週刊誌に、 彼の出自や親族に関する記事が掲載された。その詳細は控えるが、 個人攻撃とも思える内容のものもあったようである。

 私は橋下氏の掲げる政策や、その政治手法にはまったく賛同できないし、 あの暴走を止めなければならないと感じている一人だが、 だからといって、政治とは関係ない所で個人攻撃をするような手法にも賛成できない。

 政治に個人の家庭環境とか出自などはまったく関係ないし、そんなことで差別されるようなことが あってはならない。暴走政治家を引きずり下ろしたいという感情はわからないでもないが、 あくまでも政策論争で戦うべきであって、それとは関係ない部分で評判を落とそうと画策するなど、最低のやり方だ。

 以前、(こちらも私の大嫌いな政治家の代表格だが)小泉純一郎氏が首相になった頃、 彼に離婚歴がある点を指摘し、「自分の家庭も治められない人間が、国を治められるわけがない」 などといった中傷が聞かれた。これなども、同様のひどい言いがかりである。 家庭生活と政治とは、まったく関係がない。そんなところで政治家としての評価がなされるなど、 あってはならないことである。

 手段を選ばない誹謗中傷は、暴力である。 政治家の評価は、あくまでも掲げている政策の内容と、その姿勢、遂行能力、遂行方法などによって下されるべきである。

 私は、人間を国籍、出身地、性別、職業、経歴等で差別することには絶対反対であるし、 そのようなことを言う人を軽蔑する。政治思想、信条等に賛同できず、 その点を批判、対立することはもちろんあるが、それをもって人格を否定するようなことは絶対にしてはならない と思う。

 もちろん、こう書いたからといって、橋下氏支持に転じたわけではもちろんない。 あの暴走を止めなければと、思っている。


2011年11月18日
 強大な権力の恐ろしさ


 権力者に刃向かったら、問答無用で斬り捨てる。

 プロ野球読売巨人軍が、先日独断で会見を開き、幹部を批判した清武代表を解任した。 TVでは、ご丁寧に、終身名誉監督の長嶋氏もこれに賛同しているというおまけ付きで報道された。 実に用意周到なことである。

 この強硬姿勢、恐怖政治は、ナベツネ氏の体質・思想そのものである。読売巨人軍、ひいては、 読売新聞社の本質そのものを、見事に表している。

 もちろん、どんなに上司が理不尽だとしても、それを独断で世間にリークする行動は、 サラリーマンとしては、褒められた行動ではない。というか、サラリーマン社会では、 掟破りの行動だ。その意味で、この処分は当たり前と受け取る世のサラリーマン諸氏は多いだろう。 清武の乱が許されるなら、オレも同じことをしたい! でもそんなことできるわけないだろうと。

 しかし清武氏は一般社員ではなく、歴とした役員(経営者側)である。 内紛ではあるが、会社の恥部をさらして世にその是非を問う英雄的行動とも言える。

 私は、清武氏の行動を支持したい。 と当時に、改めて読売グループとは、やはりこの程度の会社だったのだと再認識した。


2011年11月28日
 大阪の未来は・・


 大阪市長、大阪府知事のダブル選挙が昨日終わった。

 私は大阪府民なので、知事選には投票した。

 多数決で結果が出た以上、住民としてはそれを受け入れるべきなのだろうが、 私の感想としては、最悪の結果となった。

 このページで何度か書いてきているが、大阪維新の会の掲げる政策にはほとんど賛同できる部分がない。 教育に政治が介入し、競争原理を持ち込もうとする教育基本条例案など、最悪である。

 大阪都になれば、生活が良くなるかのような幻想をうたっているが、「無駄」と称して必要な公共事業まで切り、 稼ぐことが第一だという価値観が押しつけられる。多少資金が捻出できたとしても、 それが弱者、困窮者などに回されることはないだろう。

 見ているがいい。

 今後彼らの政策が推し進められれば、 公立学校は進学率だけで優劣がつけられ、生徒のことなど顧みられず、競争に負けたヤツは自分が悪いと切り捨てられる。 競争がすべてを改善するがごとき詭弁を弄し、福祉は無駄の最たるものとされ、 弱者は無視される。

 君が代斉唱時に起立しなかった教職員は、その一点だけで評価が最低となり、 教育者としての能力などまったく関係なく、辞職に追い込まれる。 そんな先生方を、生徒が慕うことすらためらわれ、 教育現場では自由にものが言えなくなる。 維新の会の思想に反対する者は、大阪を追われることになる (大げさと思うかもしれないが、橋下氏が当選直後に、大阪市職員に対し、「この民意を無視する職員は、市役所を去れ」 と宣言したことに、彼の思想が端的に表れている)。

 その時になって、「こんなはずじゃなかった」と泣いても、 投票したあなた方が悪いのだ。それを承認する義務がある。 

 まあ、それでいいと思っている人が多いから、こういう結果になったのかもしれない。

 しかし私は、これからも、維新の会の政策を監視し、世に問うて行く。

 私は私の持ち場で、戦って行く。


2011年11月29日
 大阪の教育を守れ


 大阪維新の会が進める「教育基本条例」案に対し、 大阪府教育委員の各氏は、これまで、条例案が可決されれば辞職するとの意向を示していた。

 27日の府知事選で当選した松井新知事(維新の会)は、 現在の委員が辞職することを前提に、「新しい教育委員と(維新の会提出の条例案の)対案をつくる」 と述べた。

(自身が知事に就いたことを踏まえ、形の上で、既に維新の会が出した案を下地に、 新たな案を知事主導でつくりあげるという意味。事実上追認するだけであろうことは、明らか)

 新知事の発言は、現職の教育委員に対し、条例案が可決される前に辞職せよと突き放したものであり、 明らかに、「邪魔者はとっとといなくなれ」という宣言である。邪魔者がいなくなれば、 自分たちの意向に沿うイエスマンだけを集めて新しい委員会を組織し、願い通りの暴走をしようという算段である。

 この非礼極まりない発言(いや、これが維新の会の本性なのだが)に、現教育委員は一歩も引かず、 現職に留まって条例案に反対し続ける意向を示した。

 新聞のインタビューを受け、委員各氏は、次のように発言している。

 「選挙後はこういう風に強引な手法で進むだろうなとは思っていた」「条例案の公表からわずか数ヶ月しかたっていない。 有権者がどれだけ中身を理解し、投票できたのか疑問」 「条例案は、生徒も教師も学校も競争で学力向上を進めることを求めている。 競争ばかりでやる気を持続できるのは学力トップ層だけ。府民に大きく影響するのだから、 数年間掛けて議論すべきだ」(小河委員=元中学校教諭、大学非常勤講師)。

 「選挙結果を受けて辞めれば、まさにこの条例案の問題と同じで、 教育行政が政治に影響されることになってしまう」(陰山委員=小学校副校長、百ます計算で知られる)

 「失礼な話だ」「教育評価や校長の公募制など、問題点について議論が尽くされたとは思わない。 このまま条例案が通れば学校現場は混乱する」(中尾委員=私立学校理事、元松下電産四国支店長)

 また、府庁出身の中西教育長は、自身の立場を気にしながら、 「学校や先生、教委など今の教育制度に対する不満、これらの変革を願う府民の気持ちの表れだと受け止めている」 としつつも、「教育基本条例案について、細かい部分まで支持されたということではないのではないか」 と述べた。

 条例案を提出した維新の会(橋下代表)の理屈立ては、こうだ。 「大阪で児童・生徒の学力が向上しないのは、教育現場の荒廃によるものであり、 それは"民意を反映しない、くそ教育委員会"のせいだ。民意を反映させるために、民意を受けた政治のトップが方針を決める」

 わかりやすいスケープゴートをつくり出し、徹底的にたたくことで大衆のカタルシスを引き出し、 熱狂を自分に向ける。これは、独裁者の常套手段だ。 民衆を酔わせれば、もう、主張の内容などとは関係なく、票を集めることができる。

 この暴挙に立ち向かっている教育委員の皆さんは、立派である。 私は、積極的に応援したい。何かできることはないかと、いても立ってもいられない気分だ。

 上から競争を押しつけることで、子供たちが幸せになれるのなら、そんなに簡単なことはない。 教育のなんたるかを知らず、子育てにもほとんど参加したこともない連中に、教育行政を任せるわけにはいかないのだ。

 私も、父親として、また、(非常勤ではあるが)教壇に立つ人間の1人として、 現場を知らぬ者の戯言を許すわけにはいかない。できる戦いをして行こう。



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