時事ネタコラムのページ [利酒日記別室]

2013年9月


2013年9月13日
 人気のある首相ならどんなウソをついても許されるのか


 東京電力福島第1原発のタンクから高濃度の汚染水が漏れた事故で、 海近くの排水溝で放射性ストロンチウムなどの濃度が11日に一時的に高まっていたことがわかった。 東電はこの日まで、排水溝の上流で除染作業をしていたといい、「汚染水の一部が海に出ている可能性は 否定できない」という。

 同社の山下和彦フェローは13日、「今の状態はコントロールできていないと我々は考えている」と述べ、 先日のIOC総会での安倍首相による「状況はコントロールされている」との発言とは異なる見解を示した。

 また、「首相発言のいきさつは存じ上げない」とした上で、 「予想されるリスクについてはコントロールされている。ただ、想定を超えてしまうことが起きているのは事実。 そこは申し訳ないと思っている」とも述べた。

 東京電力は、同日の午後、この幹部の発言について、すぐさま次のようなコメントを出した。

 同氏の発言は「原発周辺の港の中に汚染水が漏れている問題や、 タンクから汚染水が漏洩した問題などについて言及したもので、 外洋の放射性物質の数値に上昇は見られず、安倍首相の発言と認識は変わらない」との釈明である。

 一連のいきさつを見ると、幹部の不用意な発言に対して、何らかの "力" がかかったか、 東電側からの自主的な "配慮" が働いたとしか思えない。

 今も海に漏れ出している可能性が高いのに、外洋の放射性物質の数値に上昇が見られないという 事実(これも事実かどうか疑わしいが)をもって、完全にコントロールされているなどと、 決して言えないはずである。だから、釈明が釈明にすらなっていないのだが、 ともかく一幹部の発言に慌てふためいて、首相にケンカを売るつもりはないんですよ、 という東電の取り繕いに過ぎない。

 私は、くだんのIOC総会での首相の発言を聞いた時、よくこんな嘘っぱちを堂々と世界に向けて 発言できるな・・と大いに呆れ、これで首相は赤っ恥をかくことになると確信した。 五輪招致のためならば、何を言っても許されるのか?と、大きな憤りを感じもした。

 ところが招致に成功するや、各マスコミは、「首相の発言が福島に対する不安を払拭した」 などと褒めたたえた。非常に厚顔無恥な態度ではないか。

 人気のある首相ならば、どんなウソをついても許されるのか。 そのウソを否定するような人の発言に対しては、すぐさま無言の圧力(あるいは実際の働きかけか?) がかかり、訂正せざるを得なくなるのか。

 この国ではどんどん、国民の口を真綿でふさぐような恐怖政治が進行しているようだ。暗澹たる思いである。


2013年9月21日
 教師にとって大切なこと


 全国にはあまり報じられていないニュースかもしれないが、 大阪市の橋下市長が導入した民間からの公募校長制度で、 今年4月に着任した11名の校長のうち、実に6名がセクハラ、パワハラ、不適切言動などの不祥事を起こしているという。 関西ではかなり大々的に報じられている。

 教育の場に民間の風を入れるということで、鳴り物入りで導入された制度だが、 やっぱりこういう結果になったか、というのが正直な感想だ。 当初からうまくいかないだろうなと、私は思っていたからだ。

 そもそも一般企業に勤めるビジネスマンなど、教師の経験がない人間が、 校長など勤まるはずがない。

 いわゆる「橋下改革」は、本来公共セクターのやるべき仕事を、 現状に問題があるからといって、どんどん民営化すれば解決するかのごとき単純な発想に基づいている。

 私がいちばん許せないのは、教育の場にまで「市場原理」を入れようとする、 そして入れさえすれば、教育が向上するという発想そのもの。 弱肉強食の競争原理など、教育の場には絶対に入れてはならないものだからだ。

 と、こういうことを言うと、「悪平等こそが教育をダメにした」という反論がくる。

 もちろん、一時期行われていた、運動会で順位をつけないとか、 演劇で皆に主役をやらせるなんていう愚行は、私も言語道断だと思う。 だが、だからといって、市場原理で競争させることがいいという結論に至ってはならないと思うのだ。

 私自身の経験から、思うことを話そう。

 私はもちろん、民間で仕事をしている人間(自営業者)だが、 本職でないながら、教壇におよそ20年立たせてもらっている。

 その立場から、教育にいちばん大事なものは何かと、考えてみた。

 本業とは別に講師(教員)なんかやっていると、どうせ小銭稼ぎだろうと思われるかもしれないし、 べつに思われてもいいが、時給で考えたらその時間別の仕事をしていたほうがよほど効率がいい。 もちろん、給料なんて実際のところ、どうでもいいことであるが。

 学生・生徒に接する心構え、姿勢として、最も大切なのは、自ら「学ぶ姿勢」を見せることではないかと、 私は考えている。

 今自分のできうる限りのことを提供する。その姿勢を示すことで、 学ぶとはどういうことか、それを学生が自分のこととして考えてくれるようになれば、 それ以上の喜びはない。いや、他にも見返りがあるとすれば、 わからないことがわかったと言ってもらえること、また、 自分の子供たちのような年代の若者に、慕ってもらえるというこの上ないご褒美をいただけること。

 そこに経済原理など存在しない。教員は好かれることよりも嫌われることのほうが 圧倒的に多いから、嫌われて陰口を言われることに耐えられない人は向いていない。 どんなに良かれと思って行うことでも、全員に認められることなんて、まずないからだ。 いやむしろ、全員に拍手喝采されたら「やばい」と思うべきだ。 それは「洗脳」であって「教育」ではないから。

 ビジネスにおける成功者が、同じ論理で教育をしようという、その 発想自体が既にして間違っている。

 教える立場になって得られる最も大きなことは、 自分はまだ未熟であり、上から話すことがいかに傲慢であるか、 人生は一生勉強であるということを、むしろ教えてもらえることである。 教え子が育って、優秀な姿を見せてくれると、「まずい。もっと勉強しなければ」 と危機感が与えられる。それがどれほどありがたいことか。

 べつに公募校長の過去の経歴が問題なのではない。 だが、少なくとも金儲けの論理を教育現場に入れようとする発想だけは、断じて間違っている。



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