時事ネタコラムのページ [利酒日記別室]

2014年11月


2014年11月19日
 自分のことしか考えない人たち


 安倍晋三首相が、21日に衆議院を解散することを表明した。

 景気が思わしくないから、来年10月に予定されている消費税増税を1年半先送り する。税制は国の根幹をなす大事なことであり、当初の予定を変更するのだから、 国民に信を問う。そう首相は説明する。

 だが、景気動向いかんによって増税時期を判断できるというのは、 当初から決まっていたこと。単に、経済指標が悪いから、まだ増税はできない、 延期すると決めればいいだけのことなのに、なぜ今解散するのか。 理由は明らかである。

 内閣支持率がじりじりと低下する中で、今ならまだ野党がバラバラで 対抗勢力になっていないから、今選挙をすれば勝てる。 そうすれば、任期残り2年があと2年伸びることになる。 これからの2年は、どんどん分が悪くなるのだから、解散のタイミングは今しかない。 しかも「増税延期」というニンジンを目の前にぶら下げれば、国民を騙すことなど簡単。 そう考えるのは、ごく自然のことといえる。

 結局、自分のことしか考えていないのだ。景気が悪いと言っているのに、 今、数百億もの国費を使って選挙をやるべき時なのか。 いや、選挙はどうせ2年のうちにやらなくてはならないのだから、 重大な判断をした今こそそのタイミングだと、首相は説明していたが、 今が一番いいタイミングと考えているのは、首相をはじめとする絶対に当選する与党議員だけであろう。

 今選挙をすれば、間違いなく与党が勝つ。しかし、間違いなく議席は減る。 仲間の一部を切り捨ててでも、自分の政権を護りたい。これ以上の独りよがりがあるだろうか。

 増税延期が国民の信を問うべき事柄というのならば、特定秘密保護法や集団的自衛権 については、そうではなかったというのだろうか。いや、首相は自分の真にやりたいことは、 誰にも何も言わせずに、ゴリ押しする。

 こういうちっぽけな男を、私は虫酸が走るほど大嫌いである。 最近のニュースは、本当にはらわたが煮えくりかえることばかり。

 そうそう。他に、手前勝手な奴らといえば、経団連など財界の連中である。

 消費増税は予定どおりに実行すべし、などと意見表明しておきながら、 「今望まれる経済対策は?」との質問に対し、「法人減税」などと平気で言う。 つまり、「金は一般庶民から取れ。自分たちの税金は負けろ。」ということである。 堅気じゃない人の恫喝と一緒である。 どういう神経があったら、そういうことが言えるのか。 開いた口がふさがらない。厚顔無恥とは、ああいう連中のためにある言葉だ。

 現在の自公政権になってから、こういう自分の利益だけを主張して憚らない、 恥知らずが大手を振って跋扈するようになった。世も末である。

 年末のどさくさに紛れて選挙をやれば、低投票率で与党は安泰だと、首相は思っているに違いない。 ギャフンと言わせるためには、皆で投票に行くしかない。

2014年11月21日
 争点はたくさんある


 衆議院が解散した。慣例とはいえ、自分たちの失職を、「万歳」で歓迎するのは奇妙な光景だ。

 まあ、そんなことはどうでもいい。 首相はこの解散を、自らの経済政策の是非、今後も継続して良いかどうか を争点にすると言っているが、相変わらず自分の都合の良いことしか言わない人である。

 このタイミングで、公明党との間で、次の増税時に軽減税率導入を「検討する」 と合意したと発表し、国民を騙そうと必死である。 あくまでも「検討する」のであって、決定ではないから、 検討した結果、導入しないという選択肢もちゃんと残している。そういう、 狡猾でけちくさいのが、実にこの男らしいところである。

 争点にすべきは、景気に配慮して増税延期とか、軽減税率うんぬんといった話ではない。

 重要な国家機密を扱う公務員からの情報漏洩を防ぐのであれば、 現行の国家公務員法や、もちろん刑法などでも十分対応可能であるのに、 あえて一般国民も処罰の対象とすることができるように定められた「特定秘密保護法」。

 悲願の憲法改正が容易でないと知ると、改正要件緩和などという憲法破壊行為に出ようとし、 それを激しく批判されると、今度は閣議決定での解釈改憲。立憲主義など糞食らえ。 国会で、嘘っぱちのパネル(有事の海外から米艦で避難する国民というあり得ない想定) まで持ち出して、国民の命を守るために必要だと強弁した「集団的自衛権」の行使容認。

 自らが招いた円安のせいもあって原油輸入費が高騰してるのに、 それを盾にとって、安全性の確認も端からやる気がないまま、 利権を護りたい本音を隠して、無責任に容認した「原発再稼働」。

 沖縄県知事選で基地移設反対を唱える候補が当選したのに、 この問題は既に解決済みといい、これっぽっちも聞く耳を持たずに強行しようとしている 普天間基地の「辺野古移設」。

 多様な働き方を認めて就労機会を増やすとの名目の下、 実のところ財界の要求どおり、非正規雇用を事実上無制限で続けられるように制度化する 「労働者派遣法」の改正。

 女性が輝く社会などという美辞麗句を並べ、本音では、女は子供を産み育てるのが本分、 だけど景気が悪いから男と同じように働け、ただ給料は男以下、というのが実相の「女性の活用」。

 言い立てればきりがないが、これが安倍晋三という男のやりたいこと。 国の根幹を破壊するような暴挙ばかりである。

 このやりたい放題に対する審判を下すのが、今回の選挙なのである。 消費税というワンイシューに論点を矮小化してはならない。

2014年11月30日
 馬の脚


 [その1]

 自民党が在京のテレビ各局に対し、衆院選の報道にあたって「公平中立、公正の確保」を求める文書を 送っていたことが、先日の新聞で報じられた。

 (1)出演者の発言回数や時間などは公平を期す、(2)ゲスト出演者などの選定についても公平中立、公正を期す、 (3)テーマについて特定政党出演者への意見の集中などがないようにする、 (4)街頭インタビュー、資料映像などでも一方的な意見に偏らない、などを「お願い」する内容だという。

 お願いという言葉を使いながら、これは明らかに「恫喝」の類ではないか。 政権に不利な報道を優先したら、黙ってはいないぞ、という。

 安倍政権の安倍政権による安倍政権のための選挙。それをつつがなく乗り切るため、 そして選挙後に自分たちの望む政策を遂行するため、ひたすら言論統制、思想誘導に余念がない。 自分たち以外の主張を報道することは「公平に反する」と言わんばかりの勝手さ。

 今に始まったことではないが、現政権の本性が如実に表れた、ゆゆしき事件である。

 そういえば、ある政府高官が、「新聞はもう読売だけ読んでいればいい」と発言した そうだが、自分たちの意見だけを正しいものとして扱ってくれる新聞のことを、 彼らは「公正」というらしい。今や読売新聞は、海外の一部から「日本の人民日報」と呼ばれているというのに。

 こんな連中に、これ以上権力を与え続けてはならないだろう。


 [その2]

 テレビ朝日が金曜深夜から土曜未明にかけて放送している「朝まで生テレビ」で、 当初出演予定だった評論家の荻上チキ氏と、タレントで元アナウンサーの小島慶子氏が、 局の方針で、急遽出演取りやめになったらしい。

 番組のテーマは「衆院選」。政治家を中心に議論を戦わせる内容だが、 政治家以外の第三者の論評などは交えない方がいいと判断した、というのが、局の説明である。

 出演取りやめとなった荻上氏は、「質問によっては公平性を担保できない 場面が起こるかもしれない」というふうに、テレビ朝日から説明を受けたと、別のラジオ番組で 明かしたという。

 「公平性の確保」を政権与党から要請され、メディアがそれに「配慮」する。 これを、「言論統制」と言わずして、なんと言おう。

 権力の監視という本分を忘れたメディアは、もはやジャーナリズムと呼ぶのに値しない。 


 [その3]

 選挙を前に、各党の党首がインターネットの討論番組に出演し、議論を戦わせた中で、 安倍首相は集団的自衛権の行使容認の閣議決定について、次のように説明したという。

 「国の存立が危うくなり、自由や民主主義、生存権が根底から覆される明白な恐れがあるとき、 日本が持っている権利を行使しないのは怠慢だ」。

 この人は、ウソにウソを重ね、今では自分の言っていることの意味すらわからなくなったらしい。

 集団的自衛権とは、自国が攻撃されていないのに、友好関係にある他国が攻撃を受けたときに 参戦する権利である。つまり、他国で行われる戦闘行為に、わざわざ助っ人として参戦することである。

 もし、自国の存立が危うくなるような状況であれば、 個別的自衛権(現行憲法も禁じていないと従来から解されている)で対応することになるから、 安倍氏が言っているような状況と、集団的自衛権の問題とは、 まったく関係がない。つまり、件の発言は、まったく意味の通じない発言なのだ。

 いや、そうではなく、どうせ多くの国民は、集団的自衛権が何なのかわかっていないから、 適当なことを言っておけ、というのが本音だとしたら、これ以上国民を愚弄した発言もないだろう。



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