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2019年07月


2019年7月12日
 開いた口がふさがらない


 選挙妨害まがいのあまりにもひどい記事を見かけたので、 怒りに震えてこれを書いている。

 フジサンケイグループの FNN PRIMEオンライン「平井文夫の還暦人生デザイン」という連載コーナーに、12日夕方、 同氏(フジテレビ解説委員)による次のような記事が掲載された。

 「幼保無償化」で娘の保育料15万円が無料に 消費税ゼロという無責任を許すな

 安倍首相が10月に消費税を上げるのか、実は個人的に関心があった。
 ウチの娘は認可保育園の年長組なので、10月に予定通り消費税が上がると、「幼保無償化」政策により保育料が無料になる。

 という文章から始まるそれは、明らかに野党を批判し、与党を擁護する内容だ。

 だから一時解散風が吹いた時はダメかなとドキドキした。ダブル選挙なら消費増税は凍結せざるを得ない。

 と続くのだが、これは、次のような仮定の上に立っている。即ち、 衆院解散・ダブル選挙という選択を首相がしたならば、 その時は必ず消費増税延期を伴う。そうなると、幼保無償化も延期されるはずだという仮定である。

 ・・予定どおり消費税が上がってくれれば幼保無償化政策が実行されるのに、 無責任な一部の野党は「消費税をゼロに」などといって、それを邪魔している。 具体的な財政カット策もなしに消費税を下げろとかゼロにしろとか、あまりに無責任な主張はたとえ選挙の前とはいえ、 いいかげんにしてもらいたい。 法人税や金融所得課税を上げる、あるいは所得税の累進制をさらに進めて、消費税は上げない、という主張は一見つじつまが合っているようだが、 残念ながらそんなことをやってうまくいっている国は世界に一つもない・・ と氏は述べるのだが、 それこそこんな無根拠で無責任な主張を、選挙前の今に垂れ流すのは、いいかげんにしてもらいたい。

 まず、幼保無償化は、子ども・子育て支援法の改正により、既に実施されることが決まっていることで、 たとえ消費増税が延期されたからといって、基本的に今から中止できるものではない。 財源をどこかから探してでも実行しなくてはならないのだ。

 首相が自分たちの票のために解散権を行使し、増税を延期するということ自体、無責任極まりない利己的行為であるのに、 解散をするなら即ちそれは増税延期だという前提に立ち、 さらに増税延期されれば幼保無償化も延期されるのが当然だという展開に話を持って行っている。

 確かに、今回の幼保無償化は、2%の増税分の一部(15%弱程度)を充てて実現するという説明であり、 もし消費増税ができなければその財源に困るのは当然なのだが、 仮に首相の気まぐれで衆院解散&増税延期となったとしても、幼保無償化を止めるためには、 もう一度法律改正をしなくてはならない。それが困難だから、 この法律を通した時点で、自民党は消費増税から逃れられなくなったと受け止められていたわけだ。 だから、平井氏の述べるような短絡的な結果にはならない。

 さらに、間接税制度が根本的に違う諸外国と比べ、 消費税を上げずに他の税金を上げてもうまく行っている国は世界にひとつもないなどと断言するのは、 とんでもない暴論である。

 すべては、消費増税を決めた与党を後押しするためであり、 増税凍結を訴える野党を無責任と罵倒せんがための記事と言わざるを得ない。

 この記事は、最後に、次のような文章で結ばれている。

 自分たちの票欲しさに、日本が、我々の先達が、 これまで作り上げてきた素晴らしい社会保障や福祉のシステムを壊すようなことはやめてほしいのだ。

 自分たちの票欲しさに、既に過去増税を延期し、福祉のことなどまったく考えていないのはいったいどの党なのかと聞きたい。

 昨今、芸能人などでも、与党を批判する発言をすると一斉に袋叩きにあうのに、 このような露骨な政権擁護記事を、しかも選挙期間中に掲載する大メディアがあるとは、 実におそろしいことである。 法律や政策に詳しくない人なら、すぐに感化されてしまうだろうし、むしろそれを狙っているのであろう。

 ここまでひどい記事を見たのは、久々である。



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